第41話 枠に囚われない生き方
『ニックさんは何の職業なんですか?』
ニックさんという人を知れば知るほど、
この人の職業が気になってくる。
なかなか自分から話してくれないので、
とうとう僕から質問した。
『なんだと思う?』
『そうですねぇ…商人ですか?』
『ハズレでーす』
『んー…戦闘職ではないですよね?』
『戦闘職には見えないかい?』
ニックさんは、とても楽しげに笑いながらそう言った。
『そうですね。戦闘職としては武器を持っていませんし、もし武闘家系であればもう少し動きやすい格好になるかなと思ったので』
『なるほどなるほど。ボクの職業はね…』
ニックさんの視線が僕から外れた。
視線の先を追ってみると、あの4人組パーティーがいた。
食事を終え出口に向かって歩いているようだ。
ニックさんを見ると、すでにもう僕の方を見て微笑んでいた。
そして…
『【遊び人】なんだよ』
『えっ!?』
【遊び人】てなんて言うかもっとこう…チャランポランな外見の人が多いと思っていた。
目の前にいるニックさんは、少し砕けた感じはあるが、チャランポランには見えない。
これも職業に対する偏見だったと、僕は心の中で反省した。
『あはは。【遊び人】で驚いたかい?ボクにとって【遊び人】はぴったりな職業だと思っているけどね』
『はい。イメージしていた【遊び人】とニックさんはかけ離れていたので驚きました』
『ボクは【遊び人】という職業をとても気に入っている。ボクが【遊び人】をやってちゃダメだと思うかい?』
『いえ、やりたいと思える職業なら、寧ろ羨ましいです』
『うんうん。カリスくん、君が【勇者】だってことももっと楽しんだ方がいーよ』
『楽しむ…ですか?』
『そう。ボクは【遊び人】という枠に囚われない、ボクらしい生き方を常に模索しているんだ。ボクは可能性は無限大だと思っているし、毎日のように新しい発見があり、そんな毎日がとても楽しいんだ』
『枠に囚われない…』
『うん。カリスくんがカリスくんらしく生きられる生き方を見つけたら、是非ともボクにも教えてね』
『はい』
【勇者】の枠に囚われない生き方か。
それはどうすれば良いのだろうか…
きっとその答えは自分自身にしか出せなくて、ニックさんに質問することではないのだろう。
『カリスくん、そろそろボク行かないといけない。少し余分にゴールドを置いておくから、カリスくんはゆっくりしていってね』
『あ、えっと…ありがとうございます』
『うん。じゃあまたね』
『はい。ではまた』
ニックさんは笑顔で手を振り、出口に向かって歩いて行った。
そして、こちらに振り返ることなく店を出て行った。
【遊び人】てことは戦闘職だ。
ということは、ニックさんもどこかのパーティーに所属しているのだろうか?
今度どこかでまた会ったら聞いてみようかな。
そして僕はこの日、さらにワインを3杯呑んで店を後にした。
が…どうやら呑み過ぎてしまったようだった。
歩きはかなり千鳥足で、頭もとても痛く、吐き気もあったが、なんとか宿屋に辿り着くことができたのだった。
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