第33話 平等
『僕は…この冒険で答えをみつけたい』
『答え?』
『うん。僕にとってこの世界はわからないこと、納得がいかない事が多すぎるんだ。まず1番に思うのは…どうして神託で人生が決められるのだろうか?』
『世界のバランス、平等を図るためじゃないか?全ての人々が神託に従い生きている。誰かが神託を無視して好きなように生きる事が許されていたら、みんな好きに生きようとするだろ?』
『世界中の人々が好きなように生きられるようになったら問題が起こるということ?』
『そうだな。オレはそう思う。誰もが好きなように職業を選べたとする。その場合、誰もがやりたがらない仕事は誰が担うんだ?報酬を上げるか?そうなれば、貧しい家の者の中には、やりたくないがその仕事を選ぶ者は出てくるだろう。そして貴族や裕福な商家は必然的に免れることができるということだろう?それは結局不平等に繋がるのではないだろうか?』
『…その考えもわかるよ。だけど、もしみんなが好きな職業を選べたら、なりたいものになる為だけじゃなく、やりたくないことを選ばなくて良いように努力したりするマインドになっていかないかな?それは全ての職業で起こる結果を向上させる事に繋がると思うんだ。今はさ、この職業に選んでもらえて良かった、ガムシャラに頑張るって人は少数派で、自分の職業を決められたからやってる、なんとなく生きている人が多いように思うんだ』
『どちらの言い分もわかるわね〜。カリスの答えはきっと…冒険してこそ見えてくるんじゃないかしら?少なくとも、村に引きこもっていては、何も見えてこないと思うわ〜』
『そうだね。世界で色んな人に会って、色んな意見を聞きたい、見たい。多くを知って自分の答えをみつけたいと思う』
『うん。そうね〜。それが良いと思うわ〜』
スケリドの言っていることは至極真っ当な意見に思えた。
でも、本当にそれでいいのかな?
確かに誰もがやりたがらない仕事は存在する。すごく能力が高い人が、その能力を活かせる職業に就けない可能性があるという側面を持つ、今の仕組みはどうなんだろう?
それがその人の望んだ結果なら良いと僕は思う。
でも…もしそーじゃないなら、その人が住む村や国規模で損なことなんじゃないだろうか?
神託は気にせず、みんな好きな仕事をやろうってなったら、競争が生まれて皆が皆切磋琢磨していく世の中になるんじゃないかな?
そうすることにより起こってくるだろうと予測される問題は多々あるんだろうなとは思う。
すごく他人事みたいだけど、
実際今日スケリドの話を聞くまで、自由にすることで不平等が生まれるなんて考えもしなかった。考えたらわかりそうなことなのに…
僕はもっと考えなきゃいけないと思った。
もっともっともっと考えて、悩んで、色んな人の意見を聞きながら、自分の中での答えをみつけたい。そう思えた。
そこからは4人で他愛もない話をして時間は進み…
『そろそろ出ましょうか〜?宿もとらないといけないしね〜』
『そうだな。これからはいつでもこうやって話す機会はあるし、今日はお開きとしよう』
会計でスケリドが払うと言い、エマが自分の分は自分で払うと少し揉めたが…
この日はキッチリ4等分で会計を分けることにした。
そして店を出て、すぐに宿屋へ向かい4人で別々の部屋をとった。
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