学園編
実力テスト開始
ガズム帝国。というのが、オレのいる国の名前になる。
その王都にあるゲッテンハイム学園。入学自体は決定しているのだが、入学前のテストというのがある。
校門にやってくると看板が立てられており、その「入学前能力判定テスト」というものの案内が書かれていた。
人の流れに沿って、歩いていく。ろくに道がわからないが、看板と上級生の声掛けのおかげか周りの歩みに迷いはなかった。おかげで迷わずに済む。
人によっては従者を引き連れているものもいた。特に女性が多い。従者の連れ込みは認められているが最大2人だったはずだ。それ以上引き連れているのは、貴族同士知り合いで取り巻きになっている、などだろう。
一応学園で身分差は度外視される。表向きは、でしかないらしいが。
王族も通うことになる学園で、身分差を考えないというのは難しい話になるのだろう。
しばらくして広い建物の中に入り、受付に案内される。
「こんにちは!」
「どうも」
にこやかに生徒のひとりが出迎える。受付の生徒は冒険者の受付よりも圧倒的多い。生徒数、対応する人数が段違い、かつ日常業務ではないので当たり前だろう。態度は柔らかだ。
「あちらのテーブルで必要事項を記入して、あっちの提出場所に出してください。こちら、ナンバープレートです。胸ポケットにつけてくださいね」
そう言われ、ペンと紙とナンバープレートが渡される。44と数字の書かれたプレートだった。
学園の制服は事前に作成され、本人に届けられる。そのため、すでにオレを含め新入生は全員制服だ。黒に金の装飾が施された制服になる。
派手すぎず良い趣味のデザインだ。
言われたテーブルのところへ向かい、紙を置く。ペンは魔力をインクとして使用できるスペルライティングというペンのようだった。
それで必要事項を書き込む。
名前、得意なもの、希望の学部。
授業自体は授業の多くは選択性になるらしいが、ある程度は職に直結しないと困るからか、学部というのに3年目から所属する。学園には4年いることになり、前半の2年でやりたいこと、得意なものを見つけ、後半の2年で仕上げるといった感じだ。
兵士学部、魔法学部、経済学部と大きく分けて3つある。
オレは希望学部は魔法学部だ。
必要事項を書き終えたため、次の受付に向かう。
「ペンと紙を提出お願いします」
言われた通りに従う。
「リオ・メイザース……メイザース家の! 期待の新人ですね。次は能力テストになります。紙はお返しします。それを持ってあちらの列に並んでください」
そう言われ、他の生徒が並んでいる列へ向かう。先頭に旗を掲げている教師らしき人物がいた。
「よし。そろそろいいな。では能力テストへ向かう。複数のテストで現在のお前たちの能力そして伸びしろを測るテストだ。お前たちの最初のテストは……射撃テスト、だ。ちなみに魔法でも弓矢でも投擲でも構わんから安心しろ」
ほう。ならスローマでいいか。
実力を総合的に判断するという話だろう。適当でいいか。
冒険者Aランクの実力をそのまま見せて偏見を持たれても困る。当のAランク冒険者とは実力が釣り合っていないしな。同じランクでもオレは下だろう。
「それじゃついてこい」
外に出る。
いくつも木の棒が並べられたスペースに連れてこられた。仕切りがあり、そして弓矢や木の棒など武器の入った箱がある。
「そこの木箱から好きなものを使ってもいい、持参するもの、魔法でも構わない。そこの的へ当てる」
指差した的とやらは木の棒に円形のものがつけられたものだった。中央には赤い点があり、その周りにいくつもラインが描かれている。
なるほど的だな。
的の他に、両サイドの仕切り沿って木の棒が一定の間隔で立てられている。
「的へ当てられればいいが、そこまで求めちゃいない。木の棒が立てられているだろ。あれで射撃できた距離と的への精度を測る。あとは攻撃のスピードだ。届かなくとも0点はないから安心しろ」
的の円自体は直径が成人男性の胸あたりまで長さ、数人で持ち上げたほうが良さそうなサイズ感だが、オレたちの場所からだと小盾くらいのサイズに見える。相当距離があるな。
一番適正があるのは弓か。
「ナンバーを呼ぶ。ひとりひとり、的へ当てられるか挑戦してみろ」
そういって教師が番号を呼び始める。
生徒は紙を教師に渡し、木箱で使うものを選び、的当てに挑戦していく。紙に採点の項目があったから教師に採点された返されるのだろう。
ほとんどが的に届かない。
最初のラインと言えばいいか、木の棒が立てられたところまで届かないものもいた。戦闘向きではない貴族もいるだろう。結果は様々だ。
「次、38!」
黒髪の長い女生徒だった。やけに堂々とした足取りで教師に紙を渡し、迷わずに木の棒を選択する。
それを歩きながら持ち上げ、流れるように踏み込み、槍投げの要領で投げた。
「……ほう」
初めて、的まで届いた。
円の中心とまではいかないが、近い位置に当たっている。周りから軽い歓声が上がるほどだったが、女生徒は悔しげに的を睨んだ。
「素晴らしい結果だ。高得点だな」
「いえ……まだまだです」
木の棒を回収し、木箱に戻してから紙を受け取る女生徒。
ふむ。強そうだな。弓を使っていないあたり遠距離武器を扱っているわけではあるまい。あれは近接戦闘のほうが得意そうだな。
「次44!」
オレか。
教師に紙を渡す。
「お、メイザースか。お前の兄は的まで届いたが、お前はどうかな」
挑発的な笑みを浮かべられる。
そうか、兄もここに通っていた、ということか。
まぁ別に関係ない。
「木箱の中に杖もある、使うといい」
「杖はいりません」
「なら弓か?」
「いえ魔法ですが」
「何もなしでか?」
教師の片眉が上がる。
見せればわかるだろう。
「まぁこうするんです」
射撃の位置に立ち、スローマを投げる。
当然、的に当てた。
周りが一瞬沈黙し、そしてざわつき出す。
「え、早」
「スローマだよな……? 本当に俺と同じ魔法かよ」
「しかも的に当たってる。さっきの子と同じくらいじゃない?」
中心に当てても良かったが、騒がれても面倒なのでさっきの女生徒より点数低めを狙った。
よし、あれなら点数はあの女生徒より低いな。
「驚いた。杖もなしに高得点とっちまうとは」
教師のもとに戻り、紙を受け取る。
「杖は苦手なので、こうしてるんです」
「はは! 普通は杖があったほうがいいんだ! こりゃ未来が楽しみだな」
がはは、と肩を叩かれる。
視線を動かすと、なぜか知らないが、さっきの女生徒に睨まれた。
その後も、的に届かない生徒が続く。
まぁ当てられる方が異常なのだろう。
「最後50!」
呼ばれたのは桃色の髪のボブカットの女生徒だった。紙を渡すと教師が眉を動かす。
「お前も杖なしか? まぁいいが」
ほう。人間は基本的に杖を持つかと思ったが仲間がいるものだな。
桃色の髪の女生徒は前に手をかざす。目を凝らし、的を見据えているようだった。
手のひらの先に魔力が集中していくのがわかる。
「マジックアロー」
一言呟くと、魔法の矢が生成され、飛んでいく。
的に当たった。
中心ではないが、限りなく近い。さっきの女生徒やオレよりも。
「今年は優秀な人材が多そうだな。良いいことだ」
「ありがとう、ございます」
桃色の髪の女生徒はどこかぼんやりした顔で紙を受け取る。
「射撃のテストは以上だ。次のテストに移る。ついてこい」
教師が満足げに頷いて、そう言った。
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