連携

 リオとディアナはダンジョンの中を進む。ギノスはふたりの背中を追いながら、ダンジョンを確認した。巨大な木が絡まりあってできた大空洞のようなダンジョンであった。


 ボス攻略は早いもの勝ちになる。


 攻略できる実力は間違いなくあるだろう。他のCランクのパーティーに攻略されないことを祈るばかりだ。


 ダンジョン調査によれば今いる場所はちょうど最深部にあるボスフィールドまで残り半分というところまで来ている。


 事前にふたりが購入したマップを参考に、ボスへ向けて最短距離で進んでいる。


(しかし、なぁ……)


 魔物が現れ、ディアナとリオが戦闘を始める。


「ボクが行くよ」

「あぁ、頼んだ」


 ディアナが魔物に突っ込んでいき、リオは後方で待機している。


 連携というより交代制、であった。


 ディアナがメインで戦うか、リオがメインで戦うか、違いはそこぐらいしかない。そうなってしまうのも仕方がないというのもある。


 このふたり、Cランクダンジョンの魔物が問題ない程度に強いのだ。Bランクでもいいのかもしれない。


 とにかく苦戦をしない。特にリオのほうが顕著だった。


 普通は休憩をしながら進むはずのダンジョンだが、ほぼ休憩なく進んでいる。戦闘が続くダンジョンの中では無論、疲弊するタイミングがある。魔法使いであれば、生命エネルギーである魔力を直接消費して戦うため、疲れやすい。


 はずだ。


 だが、リオの場合は違う。


 全く疲弊しない。むしろディアナが先に疲れを感じて軽い休みを挟む程度だった。


 ディアナが最近固定でリオと仕事をしていること。そして試験を担当したリオの実力を確認したくてサポーターを受けてみたが、リオの底が見えない。


 だいたい一撃で終わる。ディアナの様子を見て、援護することもある。


 これほど危険要素のないダンジョン攻略は滅多にないだろう。


 リオも強いが、ディアナも異常だ。


 少し前までDランクが精一杯の実力だったはずだ。他の冒険者と変わらない。しかし、この短期間でいきなりランクが上がり、実力は言うまでもないだろう。


 何があればここまで強くなれるのだろうか。


 ディアナとて努力していなかったわけではないはずだ。それでも、伸び悩むのが実力だ。


「リオくん」


 戦うディアナの様子を見るリオに声をかける。


「なんだ」


 リオは振り返らず周囲を警戒しているようだった。


「ディアナくんに何をしたんだい。普通短期間であそこまで強くならないと思うんだけど」

「飛べない鳥が飛び方を覚えただけだ。翼があるのに、それに気づいていなければ体を活かしきれない」

「飛び方、ねぇ」

「ディアナに魔力量があって、ほぼ使いこなせてなかった。オレが扱いを習得させられた。その偶然の一致でしかない」


 あっさり答えるリオ。それが簡単にできないこと、という自覚はないらしい。


「大したもんだ」


 試験時に感じた強さはやはり勘違いではなかった。


 もしかするとギノス自身よりも強いかもしれない。


 しかし、ひとりで戦うのが冒険者ではない。


 強いこと、強くなったことは非常に喜ばしいことだが、ギノスには懸念がひとつだけあった。







「君たち、自分より強い相手に遭遇したら連携できる?」


 野宿の準備をしながらギノスがオレたちに話を振ってくる。


 オレはディアナを見る。


「リオより強い敵って想像できないな」


 たはは、とディアナが笑う。現状オレより強いやつはいないからな。ディアナが少し対応に手間取る程度だ。ディアナも魔力の扱いがわかってからは強い相手というのを実感していないだろう。


「連携を考える必要はない」


 オレが断言するとギノスの表情が引き締まった。


「それはリオくんが強いからかい?」

「いいや、オレが魔法使いだからだ」


 オレはひとりで十分なほど強いのは当たり前だが、連携には関係のない話だ。


「ディアナにはいつも通り戦ってもらえばいい。オレが合わせる」

「でもそれじゃリオがしっかり戦えないんじゃ」


 ディアナの疑問にオレは首を振った。


「前衛が前衛として戦えているのであれば魔法の選択、発動に意識を集中できる。前衛は前だけ見ていればいい。周りを見るのはオレの仕事だ」


 無論ディアナはオレと組んでいる時期よりそうでない時期のほうが長い。となれば前衛としての戦い方は染み付いているだろう。わざわざオレのことなど気に掛ける意味はない。


 十全に力を発揮しているのであればそれでいい。


「やることはいつも通りだ。それでいい」


 断言する。


「それぞれの役割がこなせないほど困難な敵、状況であれば撤退だ。力が通じないのであれば連携なぞ維持できない」


 戦闘において、死なないことを考えるのであればこれが一番だ。


 わざわざ明確にするまでもない。


「それはお互いの力量を知っているからできることだね」

「何のためにディアナの戦闘を見ていると思ってる。ある程度癖が分かれば合わせられる」


 休憩のために交代制にしているわけではない。


「……リオ、そこまで考えてたんだ。ボクは何にも考えてなかった」

「立っている場の問題だ。ディアナが何もできていないわけではない。前に出る、一番危険な場に立っているのなら自己の生存に第一にしていればいい」


 全員が考える必要はない。考えるもの、べきことを絞れるのであれば絞って洗練させるべきだ。


 オレはギノスに目を向ける。


 この答えで満足か? という意味を込めてだ。


 ギノスは肩をすくめた。


「これはいらない心配だったみたいだ。しかし何者なんだい君は。その若さでそれだけ強いなんて」


 オレは口に人差し指を当てた。


「秘密、だ」


 実は悪魔だ、だなんて誰にも言うことはないだろう。








 ダンジョンに潜って2日。

 ボスフィールドの前にたどり着いた。


 ……のだが。


「扉開いてるね」


 ボスフィールドはそのうち悪魔の顕現する場所になるため、形式ばったものになりやすい。扉というのもこの先は悪魔の領域だ、と知らしめる意味がある。魔物は開けることはない。


 開けるとすればわざわざ招いたものか、攻略しにきた冒険者か、だ。


「戦闘に乱入して横取り扱いされても困るしな。中の様子を見て──」


 ギノスのアドバイスを遮るように開いた扉の先から何かが飛んできた。ギノスはそれを反射的に受け止める。


「──かはっ」


 女だった。ギノスに受け止められた瞬間、血を吐く。


「──は?」


 ギノスの表情が固まる。それから驚愕に目を見開いた。


「マリーナ!? 何があった!?」

「ギ、ギノス……?」


 マリーナと呼ばれた女は弱々しい声で扉の先を指差す。


「良かった……私の担当、中にいるんだ。ギノス、悪いんだけど助けて……」

「お前がやられるなんてどんなボスだ」


 ギノスはゆっくりマリーナの体をおろし、横にする。


「逃げて……伝えなきゃ。ここのボス……Cランクどころじゃ……ない」


 マリーナは唇を震わせた。


「あ、







 




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