第8話 おいしいカレーの作り方
「ログライン考えてきました」
「……そうか。まだやるのか」
「やる気なしですか?」
「当たり前だ! 慈善事業なんかやってられるか」
「そう言いながらちゃんと教えてくれるじゃないですか」
「教えないと五月蠅いからだよ」
「五月のハエ? なんですか?」
「うるさいってことだよ!」
「分かりました」
「なにが」
「みちのさんツンデレさんですね」
「誰がだ!」
「まあまあ。ログライン作りました」
「言ってみな」
「おいしいカレーを作って食べるまで」
「……はぁ?」
「だからぁ、『おいしいカレーを作って食べるまで』ですってば」
「前回の取りあえず、そのままじゃないか!」
「最初なのでシンプルがいいかと」
「……一理はある。しかしだ……まあいいか」
「いいですよね」
「じゃあ、プロットを作ってみようか」
「やった」
「まあなんだ。プロットの作り方は人それぞれだ。プロット作らず書き始める人もいるしな」
「そうなんですか?」
「そう。プロットを作って書く人種を『プロッター』、プロットなしに書き始める人種を『パンツァー』というんだ。『パンツァー』には、脳内で大雑把なプロットを組む人も含まれる」
「なんで分かれるんですか?」
「知らん。昔流行った『右脳派』『左脳派』みたいなもんじゃないか? 理論的に進めたい人種と、感覚でつき進む人種の違いとかかな?」
「へー」
「まあ、最初はプロット組んだ方がいいと思うぞ。最終目的地に着くまでの地図を作る感じだ」
「はぁ」
「小説は書いているとすぐ脇道にそれるからな。日常の会話だって、話しているうち脱線して何の話しているか分からなくなることあるだろう」
「そうですね。さっきのツンデレとか」
「うるさい! そんな時、話を戻すためのチェックポイントが必要になるんだ。そして、話をどこで盛り上げるかとか、伏線貼るとか、そう言った流れを作る。それがプロットなんだ」
「なるほど! よく分かりません」
「まあいい、やるぞ」
「はい」
「物語には『型』というものがいくつのある。今回は『序破急』と『起承転結』で作っていこうか」
「はい! 説明お願いします」
「要は物語を三ブロックで分けるか、四ブロックで分けるかの違いだ。まずは三ブロックで分けてみようか」
「はい」
「序破急は三つに分けることだな。やり方としては『オープニング・本文・エンディング』とか、『世界観説明』『事件と解決』『その後の世界』とか、『主人公登場』『日常・事件・解決』『新たなる試練』とかだ」
「はあ」
「古い話で言えばお経。これは「序分、正宗分、流通分」で分けられている。序文は『いつどこで誰に何のために話したか』の状況説明。お釈迦様が話した内容が正宗分だ。そして、その話を聞いた人たちがどうなったかを書いた箇所が流通分と分かられる」
「へー」
「新しい所では、ハリウッド映画の創作論の『三幕構成』だな。最初に主人公を活躍させる。小さな事件から大きな事件へ、そしてクライマックスで解決。日常に戻り次の事件への布石。アクションものならこんな感じかな」
「あ、分かります!」
「そうだろう。じゃあカレー作りで考えるか。カレーを作るのは誰で何のために作る?」
「そうですね。女子大生が初めて出来た彼氏に夕食をごちそうする話です」
「現代ドラマか! まあよくある展開で考えようか。じゃあ序はどうなると思う?」
「そうですね。彼氏を夕食に誘う。ですね」
「じゃあ破は?」
「カレーを作る」
「急は?」
「一緒にカレーを食べる」
「よくできました。第一段階終了です」
「これでいいの?」
「いいわけはない。次に起承転結だ」
「はぁ?」
「序、つまり本文を起承転結で分けてみろ。四ブロックに分けるんだ」
「ええと……わかりません」
「カレーの作り方。それが起承転結だ」
「えっ?」
「カレーを作る手順は大体一緒。材料を集めて切る。煮る。ルーを入れてさらに煮る。盛りつける。ほら四つに分かれた」
「そうだけど! それでいいの?」
「まずは大きな塊で分けるんだ。細かいことを気にすると全体が見えなくなる。大きな流れを大プロットとしてまとめる。そこから少しづつ細かくしていくんだ。切る順番も切り方も様々あるだろう。だがな、大きな順番を決めてからだ」
「はぁ」
「ここまで見直そう。序は彼氏にごちそうしていいとこ見せたいヒロインの邪心。いいかな?」
「え? なんか違うけど、だいたいあってるのかな?」
「破はカレーの作り方。切る。煮る。ルーを入れる。皿に盛る。この流れな中でコミカルさや泣ける話を乗せればいい」
「乗るんですか!」
「乗るよ。当たり前だろ」
「そうなんですか」
「そして急だな。彼氏が家に来て一緒にカレーを食べる。一応型にはなったな」
「そうですね」
「ここからジャンルを決めたり、キャラをデザインしたり、テーマを絞ったり、プロットを細かくしたりするんだが、まあ今日はこれくらいでいいだろう」
「そうですね」
「まあ、序破急と起承転結。単純に三分割や四分割すればいいってものじゃないんだ。ここから細かく分けるとどんどん複雑に見えてくるから、最初に大きな流れを知っておくのがいいって話だからね。いつか分かると思うから、頭の片隅にでも残しておきな」
「考えまーす」
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