過酷な運命に翻弄される少年少女の日常と非日常

本作の魅力は、まず登場人物の作り込みにあると思います。小学生から高校生くらいの年齢の少年少女がメインを固めていますが、どの子も個性的で、それぞれの立場や来歴の中でものを考え行動していることが、会話のひとつひとつ、シーンの一場面一場面から伝わってきます。

ちなみに当方が好きになったのは、若くして重たい過去を背負った一族の長、巫女服に身を包んだ和風美少女、楓(かえで)ちゃんと、みんなの精神的支柱、寡黙な剣士でありながら、時折見せてくれるコミカルな一面とのギャップが愛しいみんなのお兄ちゃん、檜(かい)くんです。

また、幼馴染、家族、仲間、師弟、恋人など、様々な関係性が丁寧に描かれており、和んだり、ハラハラしたり、心配になったり、あたかも自分が社(やしろ)の一員になったような気持ちで読み進めることができました。

そんな彼ら彼女らが織りなす日常と非日常のコントラストが非常に鮮やかな作品です。そこに主人公達の敵である「研究所」の謎、風守の一族の秘密、過去繰り広げられた大きな戦いの爪痕が影を落としています。

本作の魅力はそれだけに留まりません。
刀、巫女、日本家屋などの「和」の要素と、魔術、魔女、吸血鬼などの「洋」の要素が盛り込まれた現代ファンタジーであり、独自の設定が活きるテンポのいい戦闘シーンも読み応えがあります。

瑞々しい筆致で描かれる少年少女たちの物語を、この機会に是非お楽しみください。

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