第3話 初恋
少しずつ、夕陽が海に飲み込まれていく。
その様子を俺はただ黙って見てる。
佐伯は呼吸すら簡単には出来ない。身体中で呼吸してる。
きっと俺が想像するよりずっと、痛いだろう。
俺の顔も、ボヤけて見えてるはずだ。
お前の顔を見ると、胸の奥がギュッと掴まれるようで、みぞおち部分がズンと痛くなる。
喉の奥が熱くなって、声なんか出したら全てが溢れてきそうになるんだよ。
お前は悪くないのに、この怒りに似た感情をどこに沈めてしまえばいいのか分からない。
また、いつもみたいに笑ってほしい…
大きな声で笑うお前を見たいんだ…
あの時のお前の笑い声が頭に響いてくるよ。
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「佐伯、知ってるか?山﨑ってずっとヒカリちゃんのことが好きなんだよー」
ガハハと笑いが起こる。
男って奴は、その場のノリですぐに人の秘密を暴露する。
「そうなのか?お前、意外と高嶺の花狙いなんだな」
そう言って、佐伯は大笑いした。
オオヌキ ヒカリさんは、俺の初恋の人だ。
小さくて、可愛くて、頭が良くて、スポーツも得意だ。誰に対しても優しくて、こんな俺にも頑張ってね、山﨑くん!と笑顔で声をかけてくれる。
清楚で、話し方も丁寧で、ザ・女の子!という女子なんだ。
多分、学年男子の半数はオオヌキさんのことが好きだ。多分。
俺は無謀にも、この気持ちを伝えたいと思うようになってた。
人間の七不思議だと思う。どうして、好きって気持ちを無性に伝えたくなるんだろう…
ちょっと気持ち悪い感じに聞こえてしまったらすみません。
ほんとに不思議だなと思う。
最初は、可愛いなぁから始まって、目で追うようになって、話せたらその日は、顔のニヤつきが戻らないという病気に罹る。
佐伯に相談した。
佐伯は、えっ!と目をそこまで大きく開けれるのか!というくらい大きな目をして驚いた。
数秒の沈黙の後に、いいんじゃない?と言った。
手紙がいいのか、メールか、直接言うかなど色々話した。
「面と向かって告白!の一択だな」
佐伯なら、そう言うと思った。
俺もその方がいいだろうとは思うが、なんせ緊張しいだ。上手く伝えられるのか‥‥
「山﨑はさー、ヒカリのどこが好きなの?」
ダイレクトな質問だった。
どこだろう‥‥
俺って、オオヌキさんのどこが好きなんだろ。
ん〜かわいい、とこ?
頭が真っ白になって何も言えなかった。
「まっ!ちゃんとアンタの気持ちを伝えなよ。アンタ、自分で思ってるほどブサイクじゃないんだから」
そう言って、佐伯は大声で笑った。
そして、俺は面と向かって告白をして、面と向かってフラれた。
付き合えるなんて思ってなかったのに、落ち込む…
ちょっぴり泣けてきたりした。
風呂の湯につかりながら、フラれました。と呟いた。
そのまま俺はボーッとして自宅の風呂でのぼせてしまうとこだった。
次の日の学校へ行く足はかなり重たかった。
「山﨑ー!おっはっよ!!」
そう言って後ろから思いっきり俺の背中におぶさってきた佐伯。
「ひどい顔してるぞ、今日の体育はバレーだからな!勝負だな!負けたら、コーヒー牛乳だからな」
そのまま、耳元で大笑いする佐伯おぶって学校まで走らされた。
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俺は少しため息をついて、目を瞑っている佐伯の肩を温めるようにゆっくりさすった。
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