物語は、新たな展開を迎えた。高橋は裏社会の駒を集め、支配力を得た。しかし、彼の決断が思いもよらない波紋を広げることになる。

---

　参加者が10人に増える

　高橋が駒を手に入れ、裏社会の支配者としての力を得る中、ゲームは一層過酷なものになっていった。猛虎駒と横行駒の登場により、競争はさらに激化した。だが、高橋はその支配力を行使することなく、むしろ過去を清算しようと決意していた。彼が駒を手にしたことを知った他の参加者たちも、次々とその争いに巻き込まれていった。

　裏社会では、駒を集めることが「支配者になる」という象徴だった。しかし、駒を手にした高橋の動向が、他の者たちの命運をも左右することになる。裏社会には、すでに既得権益を持つ者や冷徹な犯罪者たちが勢力を築いており、彼らもまた高橋のように「平安大将棋」の駒を手にし、ゲームに参加している。高橋がすべての駒を集めることは、彼らにとって脅威そのものであり、彼を排除しようとする動きが加速していった。

　最初にその渦中に巻き込まれたのは、袰岩教授だった。高橋の大学での師であり、彼に冷徹な批評を繰り返していた袰岩教授は、裏社会における巨大な影響力を持っていた。しかし、袰岩はその影響力をもってしても、高橋の動向を完全に制御することはできなかった。

---

　袰岩教授の死

　高橋が裏社会で駒を集める中、袰岩教授が突然、命を奪われる事件が起きた。教授の死は、裏社会の「平安大将棋」のゲームが本格的に始まったことを意味していた。袰岩は、もともと高橋に対して冷徹な評価を下していたが、教授自身も裏社会と何らかのつながりを持っていたことが明らかになった。そのつながりが、彼を標的にした原因となった。

　教授は自分の命が狙われることを感じ取っていたのか、以前から秘密裏に高橋に忠告をしていた。だが、教授が命を狙われた理由は、単純に彼が裏社会における「駒の支配者」になり得る存在だったからだ。袰岩は高橋に対して厳しい言葉をかけていたが、その背景には「駒」を手にする者の支配力を恐れる気持ちがあったのだ。

　教授が殺されると、その情報はすぐに裏社会に広まり、参加者たちの間でさらなる動揺を生むことになった。裏社会での競争がいよいよ本格化した証だった。

---

　10人の参加者たち

　高橋が駒を集め、彼の周りには次第に多くの人物が集まるようになった。それぞれが裏社会での支配を目指し、彼を取り巻く環境はますます危険になった。

1. 猛虎 - 物理的な力を象徴する駒の所有者。肉体的に強く、戦闘能力に優れる。彼の支配力は暴力と恐怖によって成り立っている。

2. 横行 - 策略家であり、情報戦を得意とする。言葉と計略で他者を操り、冷徹に世界を動かす。

3. 黒崎 - 冷徹で手段を選ばない犯罪者。多くの手段を駆使し、着実に駒を集めていた。

4. 猛虎駒の持ち主 - 高橋が手にした「猛虎駒」を、暴力の象徴として使う者。

5. 横行駒の持ち主 - 高橋が手にした「横行駒」を、計略と心理戦で用いる者。

6. 山田 - 資本家であり、金銭的な力を駆使して裏社会に入り込んだ者。金銭的な成功が彼の力を支えている。

7. 河合 - 情報の使い手。隠された秘密を暴く能力に長けており、敵の弱点を見抜くことができる。

8. 高木 - 暴力団の元メンバーであり、金銭的な力と暴力を武器にする者。裏社会では強い影響力を持っている。

9. 坂井 - 銀行家であり、経済力を駆使して裏社会に顔を出した者。彼の力は、金銭的な支援を通じて広がっていく。

10. 高橋 - すべての駒を集め、裏社会の支配者になることを決意したが、過去の自分を取り戻すための選択を迫られている。

　これら10人は、それぞれが異なる能力と背景を持ち、裏社会での支配を目指して動き出した。袰岩の死が引き金となり、高橋を中心にした戦いはさらに激化していく。誰が最終的に勝者となり、誰が敗者となるのかは、まだ誰にもわからない。

---

　高橋の選択

　高橋はすべての駒を集め、裏社会の支配者としての力を手にした。しかし、彼の心には深い迷いがあった。彼は自分の道を選ぶ時が来たことを知っていた。駒を集めることができても、それが本当の「勝利」なのか。裏社会の支配者になれば、全てを手に入れることができるが、それには代償が伴う。

　袰岩の死、そして参加者たちの増加により、戦いはますます激化する中で、最終的に高橋がどの道を選ぶのかは、今後の物語の鍵となるだろう。

　袰岩教授の死因が明らかになったのは、事件が発生してから数日後だった。彼の死は、最初は不審な事故として扱われていたが、次第にその背後に深い陰謀があることが明らかになっていった。

　袰岩教授の死因：毒殺

　警察の調査が進む中で、袰岩教授が自宅で倒れているのが発見されたことが報じられた。最初に発見したのは、袰岩教授の家政婦であり、彼女は異常な匂いを感じ取った後、すぐに通報した。遺体の状態や周囲の状況から、警察は「事故や自然死」の可能性も考慮していたが、法医学的な検査により、死因は「毒殺」であることが判明した。

　毒物として使われていたのは、極めて高濃度の「アジ化ナトリウム」であることが分かった。この毒物は、ほんの少量で命に関わる致死性を持つため、専門的な知識がないと扱うことは難しい。警察は袰岩教授の周辺人物に対して徹底的に調査を行ったが、その中で浮かび上がったのは、事件当時、教授の研究室に出入りしていた数名の人物だった。

　袰岩教授の死と高橋の関与

　高橋は、袰岩教授の死の数日前、何度も教授と議論を交わしていた。教授の冷徹な批判に苦しんでいた高橋は、無意識のうちに教授に対する怒りを募らせていた。その時、彼は袰岩が学問を「理論」でしか見ておらず、感受性や自由な解釈を否定していたことに深い反発を抱いていた。

　高橋の心情は次第に複雑化し、袰岩に対する復讐の念が芽生え始めた。そして、高橋が裏社会の世界に足を踏み入れる頃、彼の目の前に現れたのは、袰岩教授と何らかの接点があった人物、あるいはその側近だった。最初はその人物との関係が薄いと感じていたが、次第に、彼が高橋を裏社会へと導いた目的が、袰岩教授に対する復讐を含んでいた可能性が見えてきた。

　一部の関係者は、高橋が教授に直接的に関わったわけではないが、教授が強い敵意を抱く人物だったため、その復讐心を引き継いでいたのではないかと推測している。高橋の周囲の人物がこの毒殺事件に関与していた証拠は見つかっていないが、彼の心の中で袰岩教授の批判と圧迫への復讐心が根深くあったことは間違いなかった。

　死後の影響

　袰岩教授の死は、D大学に深い衝撃を与え、学内での動揺が広がった。特に高橋を取り巻く学問的な環境は変化し、彼に対する評価が一転して冷徹なものとなった。教授の死が明らかになると、以前から高橋を厳しく評価していた教授たちも彼に対する態度を変えることなく、むしろ彼の関与を疑い始めた。

　また、裏社会の動きにも大きな影響があった。高橋が集めた「平安大将棋の駒」に関連する一部の人物が、袰岩教授の死に関わる情報を知っていた可能性もあり、事件は裏社会の権力争いにも影響を及ぼすことになった。どのようにして高橋がこの事件に関与していたのか、その全貌はまだ明らかになっていないが、彼の選択肢に対する疑念が一層強まっていくことは避けられなかった。

　最終的に、袰岩教授の死はただの学内での争いを超え、裏社会と学問の世界が交錯するきっかけとなった。その死が引き金となり、高橋はさらに深い闇の中へと引き込まれていくのだった。