第35話 エピローグ

居酒屋の窓際に、ほんの少しだけ残った夕暮れの光が差し込んでいた。美里、彩香、恵の3人は、すでにたっぷりと飲み、少しばかり酔っ払っていたが、どこかすっきりとした表情を浮かべている。長い一日の終わりに、ようやく心から笑い合う時間を持つことができたことに、どこか安心感が広がっていた。


美里がグラスを持ち上げ、少し照れくさそうに言った。「こんなふうに、たまにはこうやって愚痴言いながら飲むのも、必要だよね。仕事のことって、どうしても一人じゃ抱えきれないもん」


恵が頷きながら、笑顔で答える。「うん、ほんと。それに、仕事のこと話してても、みんなが理解してくれるって、やっぱりありがたいよね。普段はどうしても、外部の人には言えないことが多いから」


彩香も笑いながら言う。「ああ、あの『夜勤明けは休みでしょ?』っていう言葉とか、ほんとに言われたくないけど、誰かに話すとスッと楽になるんだよね。なんだろう、心の中で積もったものが全部、吐き出せるって感じ?」


美里がゆっくりとグラスをテーブルに置き、少し考えるように言った。「そうだね、でもやっぱり、看護師っていう仕事をやっていると、知らず知らずのうちに自分が頑張らなきゃって思うことが多くなっちゃう。けど、ここでこうしてお酒を飲みながら、少し気持ちを切り替えるだけで、明日もまた頑張れる気がする」


恵が少し真剣な顔になり、ふっと息をついた。「本当に、そうだね。私たちって、たくさんの人の命を預かる仕事をしているけど、自分たちもちゃんと支え合っていかないと、続けられない。だからこうしてお互いに愚痴を言い合うことが、何より大切なんだなって思う」


彩香も少し目を伏せるように言う。「仕事では完璧にやらなきゃって思うけど、完璧なんて無理だよね。でも、こうやって仲間と話して笑うことで、少しでも余裕ができるんだなって、改めて感じる」


美里がにっこりと笑い、最後の一口を飲み干す。「うん、だから、これからも頑張ろうね。私たちが笑顔でいられるように、支え合いながら。でも、あまり無理しすぎずにね。明日もまた仕事が待ってるけど、今日みたいに、少しはリフレッシュしながらやっていこう」


恵と彩香も笑顔で頷く。それぞれが同じように思っていた。看護師という仕事がどれだけ厳しくても、仲間がいて支え合えるからこそ、乗り越えられることがたくさんある。そして、愚痴を言い合ったり、時には弱さを見せたりすることも、必要だと気づいたからこそ、前向きに次の日を迎えることができる。


彩香が手を差し出し、「じゃあ、次回もまたこうして愚痴り合おうね!」と言うと、恵も美里も笑顔でその手を取った。


「うん、絶対!」美里が言い、3人はまたグラスを掲げて乾杯した。


その時、窓の外に広がる街並みが、少しずつ夜の闇に包まれていった。昼間の喧騒が終わり、静けさが戻ってきた街の中で、3人の心はまだ、温かいままだった。彼女たちにとって、仕事を乗り越える力はお互いの存在と、こうして共に過ごすひとときにあったのだ。


そして、明日もまた、どんな困難が待ち受けていても、彼女たちは一緒に乗り越えていくのだろう。


「じゃあ、明日も頑張ろう!」


軽やかな笑い声が店内に響き渡り、その夜もまた、看護師たちの絆を深める時間がゆっくりと流れていった。



― ― ―

一旦完結です!

ネタができる、PV伸びればまた続きを書こうと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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ナースたちの昼飲み診療所 タミフル・カナ @ru_tora

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