東映やくざ映画鑑賞記

しおまねき

『車夫遊侠伝 喧嘩辰』(1964年/主演:内田良平)


監督 加藤泰

脚本 加藤泰、鈴木則文

原作 紙屋五平

出演 内田良平、桜町弘子、大木実、河原崎長一郎、藤純子



 人力車稼業で一旗揚げようと東京から大阪にやってきた辰五郎。その人並外れた真っ直ぐさで、恋にケンカに大暴れ!!


 スゲェ。全カット決まりまくり。ブライアン・デ・パルマもびっくりのぐるぐる回るカメラワーク、大勢の人物が入り乱れる長回し、独特の編集、顔面どアップ、そして、全編を貫くローアングル。徹底して作り込まれた構図の数々は画面のどこに集中しても楽しめる密度の濃さ。巨匠、加藤泰監督の演出大炸裂!


 しょっぱなから暴れまわる主人公の真っ直ぐさは狂気すら感じさせ、まるでギャグ漫画のようだが、勢いと迫力が凄まじく、一切のツッコミを許さない。

 また、曽我廼家そがのや明蝶めいちょう演じる好々爺の親分や大木実演じる劇画チックな敵役など、脇を固める面々もキャラ立ちまくり。


 そんな本作のメインとなるのは、なんとラブコメ! 辰が惚れたヒロインも似たような自己主張の強さで、相思相愛なのにまったく結ばれない。しかし、結ばれないからこそ、わかる相性の良さ。なんだ、この逆説的な説得力は。


 そして、最後にどうしても書いておきたいのがラストシーン。特にラストカットの神々しさたるや、女神爆誕! 狂気を包み込む愛の持ち主は神となるのか!? 傑作。




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