勇者の代行人
@Lain_Tuzimiya
冒頭 最悪の昔話
これは、魔物と人間の争いのお話です。突如として現れた魔王に対抗するために四大国の王様たちはそれぞれの国から優秀な戦士を呼んで魔王を倒すための部隊を結成しました。そうして、彼らを勇者一行と称して魔王の討伐に行かせたのです。
「それで⁉そのあとどうなったの⁉父ちゃん?」
五つの時の俺はその昔ばなしに興味津々だった。その反応を見て父は、「がっはっは」と大笑いし、俺に話し始めた。
「その続きはまた今度な。さ、魔法の勉強やろうぜ!」
その言葉に俺は「ええ⁉」と不満を漏らしたが、父が一度決めたことは曲げないと知っていたので潔く諦めて魔法の勉強に集中した。俺が態度を変えると父も安心したのか魔法について話し始めた。
「俺達の魔法が勇者様を強くするんだ。なんたって俺達は魔法鍛冶師なんだからな!」
父のその言葉に「うん‼」と素直に応じる。魔法鍛冶師は魔法を使って武器を作る仕事のことだ。父は、5代目勇者の聖剣を作っていた。正に俺の誇りだ。父といるときはいつも楽しかった。いつも幸せだった。いつまでもこんな日が続けばいいと思っていた。いつか父と一緒に仕事をする日を待ち望んでいた。
だが、父は昔話の続きを話してくれなかった。そして、その続きは嫌でも知ることになった。
5代目勇者一行の魔王討伐は失敗した。百年に及ぶ魔王との戦いは人間の敗北に終わってしまった。勇者一行は全員殺され、魔物たちに各国は支配された。父は聖剣を制作し魔王を貶めようとした逆賊としてゴブリンに惨殺された。これが俺が齢十の時に起きた悲劇だ。だからこそ俺は理解した。
「この地獄は永遠に続くと」
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