序 後日譚の家

「最近、実話怪談って流行っているでしょ」


 切り出し方に迷っていたのか、長々と黙っていた女性は、やっと口を開いた。



 本当にあった怖い話、なんて昔は言ったけれど。実話ので話したり集めたりしているなら、本物もちゃんとあるのかな。

 それなら当然、怪談のあとにも登場人物たちの人生は続いているんでしょ?

 怖いこと、不思議なことが起きてハイお終い、あれは何だったんだろうねーって話もあるだろうけど、決定的に人生に影響を与えてしまうような怪談。


 そういう怪談の後日譚って、考えたことある?

 友だちの家に行ってみたら、普通の家じゃなくて。頭蓋骨を妹だと紹介してくるとか、家の天井に生きた巨大な顔があるとか、親が明らかに異常みたいなヤツ。

 肝試しに行った人が行方不明になったり、死んじゃったりとか。あるいは頭がおかしくなって……なんて、家族からしてみれば、たまったもんじゃないでしょ。


 本物の怪談があるなら、そういう怪異が人生の一部になっている人間が、この世のどこかに居る。超常的なものじゃなくたって、「毒親」を持つ人だっているしね。

 霊能者は出てこない、またはそれらしい人は逃げたり負けたりして、オバケが一人勝ちしたままバッドエンドで終わった怪談の、その後。

 面白くもない後日譚なんて、いちいち誰も考えたりなんかしない。


 私の家は、そういう後日譚の家だったの。

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