第11話 抱擁


「叩いて!罵って!私を憎んで!」


突然の叫びに、僕は息を呑んだ。


しばらくして落ち着いたのか、立ち上がったかと思いきや凛は突然土下座し、僕の足元で嗚咽しながら懇願し始めた。目は虚ろで、感情が制御を失っているように見えた。


「私のせいで、あなたの全てが壊れたのに…なぜ、なぜ私を赦すんですか!怒ってよ!憎んでよ!」


彼女の声は、苦痛に満ちていた。罪悪感という重荷が、彼女を蝕んでいく。赦されることへの苦しみ。償いきれない重圧。


僕は黙って彼女を見つめていた。


「叩いてよ!」


限界だった。


一瞬で、僕は彼女を抱きしめた。


リハビリ中の痛む膝を無視して。彼女の震える身体を、強く、優しく。


「...泣いてもいいよ」と囁いた。


彼女は、僕の胸で激しく泣き崩れた。


赦しとは、与える方より、受け入れる方が難しかったりするのかもしれない。

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