同人誌を売っていこう

 イベントで本を売る時に「接客業未経験だし怖いよ」「そういうの出来ない!」と思う人もいるが、同人誌即売会はフリーマーケット程度の空気感なのでそこまで気負いしなくていいだろう。最低限の受け答えでも成立するし、買う側も100点満点の接客ではなく「本そのもの」を求めているので、そこまで重要ではない。

 接客するのホントだめです、という場合なら売り子として接客業経験のある友人や知り合いを連れてくるのが一番よいだろう。

 お客さんからの問い合わせというのはあまりなく、強いて言うなら「これ新刊ですか」「これいくらですか」「これいつ出たやつですか」ぐらいが関の山である。

 同人誌のイベントでは積極的な声かけは忌避される(周りの迷惑になるので)傾向にあるが、個人的には目の前に立ち止まって本を眺めている人がいるなら「よろしければどうぞ」ぐらいの一声をかけるぐらいはしておいて良いと思う。買うか買わないかお客さん次第なので。でもお買い上げいただいた時は「ありがとうございました」だけは言っておこう。というか自然と言っちゃう。


 売り上げ管理は絶対にやっておこう。

 順調な場合は何部売ったかわからなくなり、最終的に売り上げ計算があやふやになるし、誰かに取られたとか、会計ミスがあったのかなかったのか全然わからなくなるし、確定申告の時や税務署に尋ねられた際に正確な数字が出せないと大変になるので、必ず管理してチェックする事。


 販売がスローペースな場合は「何部売れたか」をカウントする方が確実ではあるが、ハイペースな場合は見落としがちになるので「何部残ったか」で計算するのが一番楽だったりする。まずスタート時の部数、見本誌の提出や知り合いへの贈呈用の数をメモして、最後の時点で残った在庫数を引いてから売り上げ数を計算する方法が楽な時もあったりする。売れ行きが思ったより好調な時はそうした方が楽である。まぁ小説同人誌はポンポン売れる時点で相当レアケースだと思うが……


 同人誌の値段設定についてはキリの良い数字が出来る限り望ましい。よく500、1000、1500、2000……と価格を刻んでいたりするが、単純に利益の他に「売り上げを計算しやすい」「釣りを瞬時に出しやすい」というメリットがある。端数が出る価格設定をする際は、十分に釣銭を用意しておく事をオススメする。

 また、釣銭の渡し間違いなどの問題も起きたりするので、会計時には注意しよう。   

 中には酷い輩もいて「時そば」状態にして会計を誤魔化したり「500ウォン硬貨を混ぜて会計を誤魔化す」という奴もいる。昔実際あったので。


 会場での防犯対策もしっかりしておきたい所。

 もし会場内で一人の場合、離席する際は貴重品やお金は置いておかず、持ち運んで移動する事。どうしても残しておかなければならない場合なら、手提げ金庫や施錠可能な鞄など最低限守れる保証のある所に入れておこう。大型イベントなどでは毎回盗難のトラブルなどが発生するし、運営側もそこまで面倒は見きれないので、防犯は自分でしっかりと行う事。もし連れがいるのなら、離席する際に店番を頼んでおき、スペースを空白にしないようにするのが一番手っ取り早い。

 撤収前には必ず売り上げ金額と釣銭をチェックしておくこと。前述の売り上げ管理記録をしっかり付けておけば、ここでミスやズレなどがわかる事もある。確実に売り上げにズレや異常がないか確認しよう。1部・2部ぐらいの誤差はあれど、凄まじい誤差があった場合は洒落にならないので。


 色々大変ではあるが「新刊下さい」の一言の嬉しさに勝るものはない。イベントでその言葉を聞けたときの同人作家の気持ちは、実際に本を出す側にならないとわからないものである。

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