カシャ
週末がやってきたが、特に変わり映えのない日常が続いていた。薫は家の掃除をしたり、庭を手入れしたり、近所をぶらぶらと歩き回ったりしていた。それぞれの作業を始める時には一応の目的があったものの、それ自体には特に意味がなく、ただ時間をつぶすための行動に過ぎなかった。
それでも、白原から提示された条件は、彼の頭の片隅にしつこく居座っていた。とはいえ、ほとんど進展はなかったのだが。
いざその挑戦に取り組もうと腰を据えた時、自分がどれだけ場違いなのか痛感させられた。カメラのボタンやダイヤルを指で触れるたびに違和感を覚え、その不思議な記号は彼にとっては何の意味もなかった。
一時間近く試行錯誤を繰り返した結果、彼が得た最大の成果は、カメラの電源を入れることだった。しかし、メモリーカードにはぼやけた写真や、フレームの崩れた失敗作が並ぶだけで、それらをどう撮ったのかすら記憶にないものもあった。
とはいえ、それは土曜日の話だ。今日は日曜日、そして明日は白原に写真を提出し、部活に入るチャンスを得るかどうかの決戦の日。もうこれ以上、先延ばしにする余裕はない。
いつものように午前中の家事を終え、庭へと足を運ぶと、家の尖った屋根から長く伸びる影が午後の温かい陽射しに映し出されていた。それはまた、家の外装の修繕作業を思い出させるものだった…
「何か撮影するものを…」
彼の視線は五葉松に向けられた。祖母が生前に手入れしていたもので、今でも丁寧に剪定され、形よく保たれている。
「これでいいか…」独り言のように呟きながら、引きずるように持ってきたカメラバッグを砂利の上に置いた。
バッグを開け、中に収められた最悪の敵――Canon EOS60Dを見下ろす。当然ながら、説明書はバッグに入っていない。つまり、「AF」だの「Drive」だの「ISO」だのといった文字は彼にとっては完全に謎であり、下手に触れば爆発するのではないかとすら思っている。前回レンズを装着できただけでも奇跡だと感じていた。
「待てよ…レンズ間違えてるのか?どれを使えば…」バッグの中と、すでに装着されている短いレンズを見比べ、再び迷子になる。「えーっと…短いのは近距離用だよな?でも、どのくらい近いんだ…?」
それでも、やるしかない。液晶画面を開き、電源を入れると、何やら意味不明な表示が出た後、画面に松の木が映し出された。
「動いてるな…」触るべきか否か少し迷った後、設定やレンズには触れず、とりあえずファインダーを覗き込み、シャッターボタンを押すことにした。設定をいじって壊すよりも、距離を試す方がまだ簡単だと思えたのだ。
「さてと…ズームするべきか?それとも近づくべきか?ズームってどうやるんだっけ…」彼は木に恐る恐る近づきながら、カメラを構えてシャッターを押した。カシャ。
カメラを下ろし、画面を確認すると、口元が微妙に引きつった。「またぼやけてる…なんでこう簡単にできないんだ…?」
慎重にダイヤルを回し、いくつかボタンを押し、レンズの部分を回してみたが、何をしているのかまるで分からない。それでも再び構え直し、今度は砂利の上に膝をつき、松の針葉の間から差し込む光のコントラストを捉えるように角度を変えた。そしてまたシャッターを切る。さらにもう一枚。
徐々に、彼の苛立ちはある種のパターンに変わっていった。違う角度から撮っては、距離や視点を変え、ぼやけていることにイライラし…それを繰り返すうちにメモリーカードはいっぱいになった。振り返ると、半分は完全に意味不明な写真ばかりだった。
カメラをバッグにしまいながら、彼は五葉松を一瞥した。その枝葉はそよ風に揺れていた。一瞬、彼は祖母のことを思い出し、彼の選んだ被写体に満足気に頷いてくれる姿を想像した。しかし、実際にはひどい写真の撮り方に説教されるだろうなとも思った。
「はぁ…全然生産的じゃないな。でもまあ、窓から投げ出されるのは免れるかもしれない…」
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