Column2 「ビスケット」と「クッキー」の語源

 前回、「ビスケット」と「クッキー」の違いについて取り上げましたが、今回は二つの名前の由来について取り上げようと思います。


     ☆


 前回「『ビスケット』と『クッキー』は同じもの」と説明しましたが、「それならどうして名前が違うのか」と少し不思議に思いませんか?


 今の時代はすぐに情報を伝達できますが、情報社会ではなかった時代では、言葉が広まっていくうちに違う呼び方になることもよくあることでした。

 ということで、「ビスケット」と「クッキー」の言葉の歴史をみてみましょう。


 まずは「ビスケット」から。

 1600年頃のイギリス。

 このころにフランスからイギリスへ「ビスケット」の原型が伝わり、「ビスケット」の歴史は始まったと言われています。当時のビスケットは、卵白だけを使っていたようで、全卵を使わなかったことからだいぶ軽い食感のお菓子だったと言われています。


「ビスケット(biscuit)」の語源は、原型をもたらしたフランス語から。

 その名は「bis coctus(ビス・コクトゥス)」。

 これは「二度焼かれたパン」という意味です。「bis」が「裏と表、二度」「cuit」が「焼かれた」を示します。


 1600年前後というと、このときのイギリスは大航海時代にありました。

 船乗りたちの食料兼保存食として「ビスケット」を持ち込んだんですね。そのため、このときの「ビスケット」は今のような薄焼きの硬いお菓子というよりも、堅いパンだったようです。


 それから「ビスケット」は少しずつ変化をして、現在のようにさまざまな種類の「ビスケット」が生まれました。


 一方の「クッキー(cookie)」はアメリカで使われている言い方です。

 オランダ語で「小さなケーキ」という意味の「koekje(クックィアン)」が由来で、オランダからアメリカに渡って来た者たちが持ち込んだことにより広がっていき、のちに「クッキー」と呼ばれるようになったと言われています。


 イギリスでは「ビスケット」への愛着があることから、私たちが思い浮かべる「ビスケット」や「クッキー」に対して、全て「ビスケット」と言う人もいるようです。

 しかしアメリカ風の大きめのものや、食感がねちっとしたものはあえて「クッキー」と呼ぶこともあるのだとか。この辺りも、国によって言い方が違うようですね。


 ちなみに「ビスケット」のつづりは「biscuit」と書きますが、フランス語にも全く同じ綴りの「biscuit」があります。

 イギリスの「ビスケット」と同じ「bis coctus(ビス・コクトゥス)」が由来で、フランス語ではこれを「ビスキュイ(biscuit)」と呼びます。


 フランス語の辞書を引くと、これも「ビスケット」「クッキー」と訳されることもあるようなのですが、お菓子の書籍を読むと、どうやらイギリスやアメリカでいうところの「ビスケット」や「クッキー」とは違うようなんですね。

 軽い食感のお菓子のことをいうようで、調べてみた情報のなかには「『スポンジ生地』そのものを指している」というものもありました。


 国ごとに違う「ビスケット」や「クッキー」の定義。

 色んな言語を習得するときには「ややこしい」と思いがちな部分かもしれませんが、名称の歴史の豊かさがあることで、言葉一つひとつの背景に思いをせることの楽しみがあるなぁと思います。



<簡単なまとめ>

「ビスケット(biscuit)」の由来は、フランス語の「bis coctus(ビス・コクトゥス)」から。「bis coctus(ビス・コクトゥス)」は「二度焼かれたパン」という意味。


「クッキー(cookie)」の由来は、オランダ語の「koekje(クックィアン)」から。

「koekje(クックィアン)」は「小さなケーキ」という意味。


<補足>

 フランス語には、英語の「ビスケット(biscuit)」と同じ綴りである「biscuit」という言葉がある。由来は(当然という感じかもしれませんが)フランス語の「bis coctus(ビス・コクトゥス)」。

 フランス語では「biscuit」を「ビスキュイ」と読み、「ビスケット(biscuit)」とは別物のお菓子を指す。

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