『ナイトメア・シティ』(1980年/イタリア、スペイン、メキシコ)


Nightmare City

監督 ウンベルト・レンツィ

出演 ヒューゴ・スティグリッツ、ラウラ・トロッター、フランシスコ・ラバル、メル・ファーラー



 80’sイタリアン・ゾンビホラー。これは意外な良作。恐怖演出に緩急があり、ゾンビ乱入シーンはお祭り騒ぎみたいだし、そうかと思えば、静かに恐怖を盛り上げてきたり、その両方が実に巧み。

 そして、なんといっても全編に漂う厭世観がたまらない。


 本作に登場するゾンビは、ゾンビというよりパワーアップして不死身となった狂人吸血集団といった感じで、言葉は発しないが知能はそのまま。マシンガンは撃つ、ライフラインは破壊するなど、普通のゾンビよりタチが悪い。

 そんな奴らが暴れ回っているのに政府や軍は隠蔽優先で事態は悪くなる一方。特殊部隊を送り込んでも映し出されるのは兵士の死体ばかり。

 主人公の一般人夫婦は何が起こっているのかわからぬまま、運良く逃げられているだけ。特に夫はテレビ局員で、局内では上司に歯向かう硬骨漢を気取っているが、この状況下ではなんの役にも立たない。

 道中、教会の鐘が鳴っているので、誰がいるのかと行ってみたら……のシーンが神も仏もなくて印象的だ。


 さて、そんな本作の評価を真っ二つに分けるのがラストの展開だ。ネタバレになるので詳しくは書かないが、自分は一番盛り上がったところで観客を裏切ってくるこのラスト最高だと思う。例え、予算を超過してしまい、なんとか映画を終わらせなきゃいけなかった妥協の産物だとしても、本作にはぴったりなオチなのではないか。

 映画はフィクションだから時間が来たら終わる。しかし、現実に終わりはない。




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