No.20 カーテンを開ける時は言ってから
コロッセオ内医務室。
「まさかお客様が来るとはね」
魔法学園リオハイム
保健医プラトン・イオバルディ。
28歳の若手女教師。しかし医務室を任されてから数える程度しか治療魔法を使った事がない。
怪我をするほど熱の入った生徒が居ないからだ。
ベッドを別目的で使おうとする生徒を追い払う回数の方が数倍多かった。
しかし今日久しぶりにちゃんとした仕事をする機会が訪れた。
2人の生徒をベッドに移動させる。
1人の女生徒は意識を失っており、もう1人の男の生徒は意識がある上にうるさい。
「なんで勝ったのにこんなとこ来なきゃいけねぇンだよ!!!!」
「あんな派手に血ぃ吐いたヤツをはいお疲れさんって帰せるか!!診てもらうだけタダなんだ、なんかあったらついでに治療させてもらえ」
じゃあな、と言い上半身裸の生徒を残してコージロー先生が帰っていく。あれが噂の賢者ね。身なりはともかく、ちゃんと教師やってるようで安心した。
「…背中に魔法、当たったんだって?うつ伏せになってもらえる?」
大人しくうつ伏せになる。クラスDの生徒だと聞いて警戒していたがこの子、もしかして根は
真面目か?
とりあえず傷を見る。花のような
ただこれは着弾した瞬間、爆発はせず別の魔法が発動し体内向けて刃物のような切れ味鋭い弾が花のように8方向に爆散する。なんと凶悪な魔法、公式大会では恐らく使えない代物だ。
背中で良かった、当たる場所によっては最悪の事が起きてもおかしくは無い。
他の外傷は手の火傷と多少の擦り傷くらいか。
「…運がいいねぇ君」
「あー、なんか最近やたら良いンだわ」
「羨ましい限りだ、それじゃあ治療するからあんまし動かないように」
───────
ザックの治療が終わり、次はクラスAの女生徒の治療に移る。外傷的には軽い火傷と擦り傷、あとは多段的な爆発による脳震盪か。
魔障壁様様だ。この2人はちゃんとした大人になってほしい、余裕で人を殺せるぞ。
しかしこの傷が逆だったら合点が行くのだが
クラスAのお嬢様の様なヤツがこんな殺意高めの魔法を使うのだから世の中分からないものだ。
服を脱がせて治療を開始する。
意識はしていなかったがふと大きな胸が視界に入る。
…こいつ生徒だよな、最近の子供の発育はどうなっているんだ?大人を舐めているとしか思えない。治療ついでに少し小さくしてやろうか。その方が多分こいつも嬉しいだろ、知らんけど。
女として負けた気分だが仕事は仕事、しっかりとこなす。
────────────
「ん…」
治療が終わりハナが目を覚ます。安心しろ、胸は小さくしていない。ちゃんと傷のみ治した。
「おはよぉハナ君、お身体はどうかな?
あ、ゆっくり起きなよ?」
ハナは言われた通りにゆっくりと起き上がる。傷のあった部分を触り、腕や身体を曲げる。
うん、大丈夫そうだ。
「ありがとうございます、えっと…」
「プラトン・イオバルディだ。保健医なんて顔を見る事すら無いから分からなくても仕方ないよ」
すいませんと頭を下げる。とてもあの凶悪な魔法を使った人間とは思えない。
だからこそ怖いのだが。
「一応、教師として言っておくよ、あの花が咲くような傷をつける魔法は2度と使うな」
「…はい、分かっています。」
シュンと落ち込んだ様子で言う。ただ、この魔法の性能を知った上で一度でも使うような奴が、分かってます、なんて言っても簡単に信用する事は出来ない。
万が一でも、もう一度使う機会が訪れない事を祈る。
「起きたかよ」
ザックがハナに挨拶をしに来たのかカーテンを開ける。
……
あっ、ハナに服を着せていない。
「いきなり開けるなぁぁぁ!!!」
ハナが枕を思い切り投げる。ザックの顔にしっかり命中して後方に吹き飛ばす。うむ、ちゃんと治っているな。その隙にそっとカーテンを閉める。
「…ザック君、次からは開けるよ、とか言おうか」
「お、おう」
──────
「んじゃ、ちゃんと真っ直ぐコロッセオに戻んだよ」
「言われなくても戻りますよ!!!」
顔を赤くして怒鳴る。結構ウブなんだな
こいつ。帰りは大丈夫そうだ。
「じゃあなハナ・ガーランド」
「…ハナと呼ぶ事を許可してやったはずだ」
「あれ、そうだっけ」
「そんなことよりザック君、偽名ってどういう事だ?ヘルパテスじゃないのか?」
「秘密さ」
「な、なにぃ…!?」
「…互いに苦労するよなァ、ハナぁ」
手をひらひらと振りながらザックが去っていく。
ポツンと1人取り残されるハナ。
「一体何者なんだ彼は…あの
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