第35話 一説には我が軍最強が沢山

 私は恐る恐る穴を覗き込んだ。

 下の広間で、警備の兵士たちがお父様の救護をしている。

 お父様は「私をオジサンと呼んだ奴は誰だぁ……」と怒っている。思ったより元気そう。よかったぁ。


「陛下! これは私の勝ちですよね!」


「うむ! クラーラ・リンフィールドの勝利だ!」


「やったー」


 これで冒険者になれるんだ。嬉しくて飛び跳ねちゃう。

 王様や貴族たちの前で無礼だったかな?

 でも仕方ないじゃん。超嬉しいんだもん。


「暗黒竜を倒したのだから疾風エヴァンより強くて当然と言えば当然なのだが……いざ目の当たりにすると凄まじいですな!」

「ああ……ジッとしていれば可憐だが、エヴァン殿を釘のように床へ打ち付ける動き……人間とは思えなかった」

「武ではなく暴力そのもの。やはり野生の聖女の名は伊達ではない……」


 これ、褒められてんの? 貶されてんの?


「ぬぅぅ……今の戦いを見ていたら血が騒ぐ! 陛下! 私も野生の聖女と戦ってよろしいか!?」


「ぬっ、お主はロジャー! 一説には我が軍最強と言われている豪腕のロジャーではないか!」


 え。最強はお父様じゃないの?


「豪腕のロジャーと野生の聖女の戦いを見たいかぁぁぁぁっ!?」


「「「うおおおおお、見たいぞぉぉぉおおおっ!」」」


 なんか戦わなきゃいけない流れになっちゃった。仕方ねぇ。

 ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ!


「またオジサンが落ちてきたぞ!」

「これって豪腕のロジャーじゃないか!?」

「上でなにが起きてるんだ!」


 なにって、人間で床を貫いて下の階に落としているだけだが?

 ……いやぁ、お騒がせしております。

 でも仕方ないじゃん。挑まれたんだから。私から仕掛けたわけじゃないのよ。


「くく……ロジャーを倒したくらいでいい気になるなよ。奴は四天王の中で最弱。次は俺が相手になろう!」


「おお、雷槍らいそうのアーロン! 一説には我が軍最強と言われているアーロン!」


 この人も最強候補なのか。

 凄い速さで槍を突き出してきた。それを回避してからの――。

 ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ!


「雷槍のアーロンが落ちてきた!」

「次はなにが来るか楽しみだぜ!」


「ふふ。みなさん、油断しすぎでしょう。ですが、おかげでデータが取れました。私が敗北する可能性はゼロです」


「聡明なるオリヴァー! お主も一説には我が軍最強だったな!」


 諸説ありすぎませんか?

 この国の人、最強議論が好きすぎる。

 オリヴァーとやらはメガネをクイクイッとしながら、魔力の塊を放ってきた。

 私はそれをスイスイと回避しながら接近てからの――。。

 ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ!


「今度はオリヴァーが降ってきた!」

「聡明なるオリヴァーのメガネが割れている!」


 ってな感じで、次々と『一説には我が軍最強』な人たちが名乗りを上げては一階に落下していった。

 謁見の間は穴だらけになり、通気性がとてもよくなった。

 いやぁ、みなさん頑丈ですね。

 そして最終的に。


「うわああああっ、天井が落ちてきたぁぁぁ!」


 謁見の間そのものが落下してしまったのである!

 王様とかリリアンヌ様とか玉座とか、そういう絶対に落ちちゃ駄目なのまでズゴゴゴゴと。


「オ……オデ……悪くない」


 とりあえず全員にポーション飲ませておきました。

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