第13話 聖女VS暗黒竜

 私は着地してドラゴンを正面から見る。

 どう攻略しようっかな。そう思慮を巡らせていると、ドラゴンは四肢を大きく広げ、衝撃に備えるような姿勢になった。

 ……なんの衝撃に備えるっていうんだろうか。あんな巨体が。まさか私の体当たり?

 私が不思議に思っている中、ドラゴンは口を大きく開いた。その奥から膨大な魔力がせり上がってくる。


 その瞬間、私は前世で見た怪獣映画を思い出す。


 ドラゴンの口が向いている方向にいてはいけない。

 撃たれる前から「防げない」と確信してしまう。

 私は音速猪突で真横に逃げる。

 直後、ドラゴンの喉奥から、黒と紫が混ざったような閃光がほとばしった。

 それが通り抜けたあとは、燃えるでも潰れるでもなく、消滅した。

 土も木も。

 まるで、鉛筆で描いた絵を消しゴムで消したかのように。ラテアートをスプーンで抉ったかのように。

 直径二メートルほどの溝が、遙か彼方まで続いている。


 なんぞ、これ……。

 今までの敵と、破壊力の規模が違いすぎる。


 でも発射する前のタメが長いから、対処できないわけじゃない。

 威力が低かったとしても、前触れなく放たれる攻撃のほうが厄介だ。

 黒騎士との戦いで私はそうと学んだ。あと前世でやったアクションゲームでも学んだぞ。


 それにしてもドラゴンめ。黒い閃光を撃ったあと、硬直してるじゃないか。

 こりゃボーナスタイムだぞ。

 音速猪突で距離を詰め、さっきと同じ場所を攻撃……あれ、さっきつけてやった傷どれだ? もう塞がった? 私の次くらいに回復が早い奴だ。


 ならば根比べ。何度でも攻撃してやらぁ!

 音速猪突の勢いを乗せて、右腕の剣で刺突!

 よっしゃぁっ、二十センチくらい刺さったぜ。

 すぐに抜いて、傷口に左手を添える。そして毒魔法。

 おらぁっ、毒液を注入してやる。


「GAAAAAAAッ!」


 ドラゴンが苦しそうな声を漏らした。

 剣で攻撃したときと明らかに反応が違う。

 効いてる? 効いてるんだな! もっと毒を流し込まなきゃ。


 おおっと、のたうち回りやがった。危ない。潰される。

 ならば次は尻尾に同じ攻撃だ。毒、毒、毒。

 やっぱり痛がってる。そして傷が塞がらない。

 毒が弱点なんだな。


 試しに溶解液も同じように流してみる。こっちも痛がったけど、傷が塞がった。

 溶解液はただ肉を溶かすだけだけど、毒は神経に作用するから、それで再生が阻害されてるのかな。

 とにかく毒だ。剣で斬って毒を塗る。これを繰り返せば傷が増えて、出血も増える。

 こんな巨大な生物を出血死させるのは大変だけど、頑張るぞ。


 ドラゴンが動くたびに、全身から血が吹き出す。赤い水たまりが面積を広げていく。

 今やそのウロコは、遠目からでも分かるくらい傷だらけ。

 出血と毒が重なったせいか、動きがかなり鈍くなっている。

 倒せるぞ。


 しかも私は、回復も自働蘇生も使っていない。防御障壁だって、飛んでくる石とかを弾くために使っているだけ。ドラゴンの爪や尻尾ビンタは剣で防ぐか、回避するかしている。

 スキルのゴリ押しではなく、培った技術で戦っているのだ。

 黒騎士さんとの修行のおかげだ。

 マジ感謝。


 黒騎士さんは昔、ドラゴンと戦って倒しきれず、封印するにとどめたんだよね。幽霊がそんなこと言ってた。

 なら黒騎士さんの技術を受け継いだ私がドラゴンを完全に倒したら、胸熱な展開よね。

 刻を超えた師弟関係みたいな感じ。

 まあスキルも使いますけどね。

 黒騎士の剣技に毒魔法。これがドラゴンの攻略法だぜ!


「GUAAAAAAAAAッ!」


 ドラゴンの咆哮。

 そして喉奥から再び膨大な魔力。

 あの攻撃での一発逆転に賭ける気だな。

 一度通用しなかった攻撃に頼るしかないなんて、哀れな奴。


 はい、回避~~。

 って、私が避けた方向に首を振りやがった。黒い閃光もそれに合わせて動く。森を薙ぎ払いながら私に迫る。怖ぇぇぇっ!


 でも音速猪突のほうが速い。

 いくら威力が凄くても、当たらなきゃ平気よ。

 なんて余裕こいてたら、視界の端でなにか、、、が起きた。というか消えた?

 大きな岩があったはずなのに、消えた。

 黒い閃光に飲み込まれたわけじゃない。

 そういう理由もなしに、いきなり消えたように見えた。

 その岩が目の前に、突然、現われた。

 瞬間移動!? そんなの反則じゃん! どんな方法で……とか考えてる場合じゃない!

 音速猪突は方向転換できない。

 私は全身を包む防御障壁をより厚くし、岩に突っ込んだ。

 岩を粉砕。

 私は無傷。でも動きが止まってしまった。すぐ後ろに黒い閃光が迫っている。


「――ッッッ!」


 筋肉が軋む音が聞こえるくらい全力で転がり、なんとかギリギリで回避成功!


 ドラゴンは攻撃の反動で、口を開けたまま硬直している。チャンス。私はその口に向かっていく。

 口内に真空斬。

 直撃。

 さすがのドラゴンも喉の内側は柔らかかったらしく、これまでにない出血量だ。

 傷が大きいってことは、それだけ毒を流すチャンスってこと。

 口内に腕を……いや、上半身を全部突っ込んでやる。

 おらおらっ、私の全身から毒液を分泌してやる。もっと飲めっ。私の毒が飲めないって言うのか、ああんっ!?

 うぉっ、なんだ、この野郎。毒だけでなく私ごと丸呑みしやがった。

 胃液で溶かすつもりか。

 聖女の防御障壁を胃液で突破できると思うなよ、愚か者め。

 むしろ私が溶解液で胃に穴をあけてやる。胃潰瘍になったところに毒液を塗りたくってやろう、わーはっはっはっ! 


 痛いか。痛いんだな。

 のたうち回ってるのが分かるぞ。

 ん。胃の内壁が動いてる? 私を口から吐くのか? それとも腸に送るのか? つまりケツから出すのか!?

 口か! ケツか!

 うおおおおっ、どっちでもかかってこいやぁっ!

 うんこは溶解液で溶かしてやるぅぅぅ! うんこまみれにはならんぞぉぉぉっ!

 普通に口から吐かれた! ぶっちゃけ助かった! うんちは嫌だもん!

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