第10話 『サブギフト:黒騎士』を獲得しました

 それにしても……勝てたのは嬉しいし、達成感があるけど、消化不良な感じもある。

 多分、今の勝利がマグレだという自覚があるからだ。

 私がこの骸骨に挑み続けたのは、ただ勝つためではなく、剣術を身につけるため。強くなるため。

 十回に一度しか勝てないようでは、骸骨を越えたとは言い難い。

 まだまだ骸骨から学べることは沢山ある。

 だから回復して、もう一回戦う。


「回復魔法! 治れ! ……治らない!?」


 やっぱり生物じゃないと駄目?

 というか完全に死んでたら回復魔法じゃ治せないか。いや、アンデッドだから確実に死んでるんだけど。生物としての死とは別枠で、アンデッドとしての死があるじゃん? あるよね?

 おや? 骸骨の指先がピクピクと動いたぞ。まだ生きてた!

 でも治せない。


 アンデッド系を回復魔法で復活させるのは無理なのかなぁ。

 いや、簡単に諦めるな。

 私は今まで、スキルとスキルを組み合わせて、色んなことをしてきた。

 今あるスキルを工夫して、アンデッドを治せないか考えるんだ。

 失敗したっていい。人が死ぬわけじゃない。動いていた骨が動かない骨になるだけだ。


「アンデッドって闇属性のイメージがあります。一方、回復魔法は光属性のイメージ……そのギャップを埋めればなんとかなる……かな?」


 ただの思いつきだ。

 しかし死者を回復させようというのだから、普通とは逆属性の回復魔法を使うというのは、そう間違っていない気がする。

 闇属性……私のスキルの中で一番それっぽいのはダークミストか。


 よし。

 骸骨に回復魔法をかけると同時に、ダークミストも出すイメージ。

 あくまでイメージだけ。実際に黒い霧を出す必要はない。

 回復魔法にダークミストの属性だけを乗っける……。


《『魔法スキル:回復魔法』と『スキル:ダークミスト』から派生し『魔法スキル:回復魔法・闇』を習得しました》

《説明。回復魔法・闇とは、ゾンビや吸血鬼など回復魔法が効かないアンデッド系を回復させる魔法です。アンデッド以外にかけても意味がありません。むしろ、うっすらと嫌な気分にさせてしまうので気をつけましょう》


 大成功。

 頭蓋骨が元に戻り、骸骨が立ち上がる。

 さあ、戦いを続けよう!


 数日間。

 私は骸骨と戦いまくった。

 やはり、まだ実力的には及んでいなかった。何度も敗北を味わう。

 十回に一度しか勝てない。それが五回に一度になり、二回に一度になる。

 やがて。

 私は骸骨を常に圧倒できるようになった。


 あれほど素早く見えた斬撃を、落ち着いて跳ね返せるようになった。

 完璧に見えた動きの端々に隙を見いだせるようになった。

 越えた、と。そう実感できた。


《『実績:黒騎士を圧倒』を達成しました》

《『サブギフト:黒騎士』を獲得しました》

《『スキル:動体視力向上』を習得しました》

《『スキル:筋力強化』を習得しました》

《『スキル:呪い耐性』を習得しました》

《説明。動体視力向上とは、動体視力が向上するスキルです。強力なスキルですが、これに依存するのは危険です。慢心せず技術も磨きましょう》

《説明。筋力強化とは、筋力が強化されるスキルです。このスキルは使うほど成長します。ボディラインが崩れたりはしないので安心して鍛えてください》

《説明。呪い耐性とは、呪いへの耐性がつくスキルです。敵からの呪術的な攻撃を緩和します》


《呪い耐性の効果により『状態異常:方向音痴・強』が『状態異常:方向音痴・弱』になりました》


 待って、情報量が多い。

 黒騎士? あの骸骨は黒騎士だったの?

 黒騎士ってゲームやマンガだと凄く強い騎士に送られる称号だけど、この世界でもそうなのかな?

 転生してからも色んな本を読んだけど、しょせんは十歳。知らないことのほうが多いのだ。


 で、私が黒騎士になった?

 聖女でアサシンで黒騎士って、ギフトが三つもあるけど、そんなのありなのかしら?

 実のところ、サブギフトってのが分からん。転職システムじゃなくて? 兼業なの?

 三つ掛け持ちとか過労死するじゃん。

 まあ、ノルマがあるわけじゃないし、スキルがどんどん増えるから、深く考えないことにしよう。


 そして私って『状態異常:方向音痴・強』だったんだ……前世から薄々そうじゃないかと思ってた。

 スマホの地図と睨めっこしてないと、すぐに迷子になってたからね。

 でも方向音痴なだけで地図が読めないわけじゃないの。

 方向音痴と地図が読めないのは、別の症状だから。

 両方だと詰むけど、片方だからなんとか生存できた。地球ではね!

 この世界はスマホがないから……森から脱出できなかった。

 でも、方向音痴が弱になった。

 これで脱出できるのでは!?


 方向音痴が弱まっても、進むべき場所がどっちか分からないなら意味がいないって?

 てやんでぃ、こういうのは気の持ちようだい!


 それにしても、この骸骨さんには本当に色んな技を教わったなぁ。

 立ち去る前に拝んでおこう。

 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……。


 私が骸骨の残骸に手を合わせると、そこから白いモヤが浮かび上がってきた。

 な、なんだ、これ?

 私が驚いている中、モヤは変形し、人間の形になっていく。

 髭もじゃのオジサン……?


「ありがとう、強き少女よ。素晴らしい才能と向上心だった。君になら全てを任せられる。

俺でさえ封印することしかできなかった暗黒竜を、完全に倒せるかもしれない。任せたぞ。そうだ、俺が使っていた剣を持っていくといい。切れ味がいいし、なにより頑丈だぞ。暗黒竜の一撃を受け止めても刃こぼれ一つしないからな。その木の棒よりは役に立つだろう。これで俺はようやく安心して昇天できる。……さらばだ」


 オジサンは一方的にそう言い残して、消えてしまった。

 えーっと、黒騎士さんだったのかな?

 任せるって、え? 暗黒竜を、完全に倒せる?

 私、一つも同意してないのに勝手に任せられてしまった。


 スキルを沢山もらったから、やらなきゃいけないのかな……?

 悪質な詐欺に引っかかった気分。


 ところで暗黒竜ってなんだろう。

 口ぶりからして、絶対に強い奴だよね。

 まあ、偶然それっぽいのに出会って、倒せそうなら倒しておくか。

 とりあえず剣はもらっておきますね。

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