第2話 出会い

話は5年前に遡る。


アカマット村は比較的安全で周辺は深い森に囲まれている。


ただ、狂暴な魔物や熊などの猛獣の影は薄く、

農耕と牧畜、森から得られる恩恵で住民達は平和にくらしていた。


当時、7歳のライトは家の手伝いとして村の郊外でキノコや山菜、薬草などの採取をしていた。


ライトは特にキノコ狩りが得意で教えてもらったキノコの場所の把握はもちろん、

似た雰囲気の場所には同種のキノコが生えることに気づき独自のキノコの群生地なども発見していた。


そんな中、今日も今日とて籠を背に採取に励んでいたライトはいつもの森とは違う雰囲気を感じていた。


「なんだろう?」


独り言をつぶやくも普段から危険性の低い森なので警戒心の欠片も持たずに森を徘徊していると突然に声を掛けられる。



「こんにちは少年!」


ライトは一瞬ビクっと驚き声のほうを振り向くとそこには、

白を基調とした恰好にきれいな白いマントをしている中世的な顔立ちの少女が立っていた。



レイねえちゃん(15)くらいの歳かな?

瞬間そう思うも通り一遍の質問をする。


「おねえちゃんだれ?」

「わたしは魔法使いだよ」


「こんなところでなにやってるの?」

「お師匠さまの言いつけで探し物をしてるんだ」


「何をさがしてるの?」

7歳の少年はどしてどして?と自分の疑問を相手にどんどんと投げかける


「この森にあるキノコを探してるんだけどなかなか見つからなくて・・・」


「な~んだ、それで森がいつもと違う感じがしたのか」

ライトは無邪気に笑う。



「どんなキノコを探してるの?」

「珍しいキノコなんだけど、

赤魔茸とマジックプルチーニ茸なんだけどわかるかな?」


「わかんな~い。でも、僕のキノコみてみる?」


魔法使いの少女は一瞬身じろぎをした気がしたがすぐに、


「いいのかい?ではよろしく頼む」

とニタっと笑う。


「こっち!」

返事を聞くやいなや少年はシュタっとダッシュで森を駆ける。


純情無垢な少年にこの手の冗談は通じないかと少女魔法使いもあとを追う。


シュタタタタ、


元気に少年が森を駆ける。



最初は普通についていった魔法使いがつぶやく。


「少年、走るの早いな」


運動不足の魔法使いにはちと大変と思い身体強化と浮遊の魔法を使う。


後ろの気配が変化したので少年が後ろを振り向くとそこには空中を滑るように移動する魔法使いがいた。


「なにそれ!すごい!」

ライトは足を止めて魔法使いのほうを見る。


「これは身体強化と浮遊の魔法だね」


「僕にもできる?」


「どうかな?すぐには無理だね」

魔法使いは優しく返答する。


「大きくなればできる?」


「修行しだいだね」

少年の可能性をなるだけ否定しないように答える。


「それよりキノコはどっち?」


「こっち!もうすぐ着くよ」

少年はそういうとまた走り出す。


しばらくすると茂みが深く大人では立ち入りづらいような場所でライトは足を止める。


「この茂みのトンネルの先なんだけどおねえちゃんは通れるかな?」


「う~ん、通れなくはないけどその先はどうなってるの?」


「この先に広場があるからそこについたら呼ぶね、おねえちゃんは飛べるからそしたら来て」


「わかった待ってるよ少年」


数秒後。


「着いたよ!こっち!」

茂みの向こうから声がした。


「はい」


魔法使いは返事をして地面を蹴り後ろの木を蹴って三角飛びの要領で声のほうに向かう。


「ここだよ、僕のキノコの広場!」

少年がドヤっと自慢げに言う。


「凄いな!」

魔法使いも感嘆の声を漏らす。


そこには一面にいろいろなキノコ達が群生していた。

色とりどりのキノコの絨毯のようだった。


目的のキノコを探しがてら魔法使いは少年のことを聞いていた。


名前はライト年齢は7歳、農家の両親と2つ年下の妹の4人暮らし。

ライトの仕事は森での採取と農業の手伝い。

頑張れば食卓が豊になるので日々森を走り回っているらしい。


そんなこんな話をしていると、あるわあるわ希少価値のキノコ達が。


その中には目当ての赤魔茸とマジックプルチーニ茸の他にS級素材のギリンザーク姫茸もあった。


「わたしがキノコをもらってもいいの?」

「いいよ!」


気持ちの良い返事とともに屈託のない笑顔で少年は答える。


そのあまりの無垢さに自分がいかにひねた心になったのかを思い知らされる。



「それではこの3種類のキノコを頂くね」

(これだけで王都に豪邸が建つな)


「それだけでいいの?もっととってもいいのに」


「いや、これで充分。お師匠さまも喜んでくれると思う。

ライトはなんでキノコをもって帰らないんだい?」


「怒られるんだ。前に大きなキノコをもって帰ったら母さんにめちゃくちゃ怒られたから怖くて、

知らないキノコはもって帰れないんだ」


(確かにキノコの中には猛毒のものや触るだけで皮膚がただれてしまうものもあるからな)


「そっか、それだけライトはお母さんに大切にされているんだね。

でも、ただでもらうわけにもいかないな」


(大金を渡しても平和な村には害になりそうだし・・・)


「ライトはなにが欲しい?」

考えるよりも少年に聞いてみた。


「魔法を教えてほしい!」

即決即断で反応するライト。


「魔法を覚えてなにをしたいんだい?」


「ドラゴンや悪い魔物をやっつけて冒険をしてみたい」


「う~ん、そうだねえ。対価に相当するとなると、、それじゃ手を出して」


ライトはスッと両手の平を上に向けて差し出す。


魔法使いは左手をつかんでなぞりだす。


「なにをしてるの?」

ライトが質問する。



「魔法陣を描いているんだ、これで良し。

この魔法はわたしのオリジナル魔法でまだ世間では知られていない。

だから冒険者になるまで人前で使ってはダメだよ」



手の平を広げてしげしげと見てもなにもない。


「何をしたの?」


「少年の手のひらにわたしの魔力で魔法陣を描いたのさ、これで魔法をつかえるようになったよ」


「なんて魔法?」


「サンダーボルト」


「カッケーーー!!」


「よし、それじゃちょっとだけ魔法の講義をするから広い場所まで移動するね」


そういって魔法使いはライトをひょいっと抱え上げ空中に飛び上がる。


「あっちが広そうだね」


一番高い木よりも全然高い位置まで上がってから一言そういうとあっという間に平原に連れてこられた。

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