暗躍するは裏パーティー〜追放された狂戦士はやらかしが多すぎる〜
ロケッチェ
第1話 追放されたので勇者パーティーと殺し合ってみる
神々からの恩恵である魔法によって発展を
その中で、最大の大陸にある戦士の国、アイアルド王国の東の山中にて、とある作戦が実行されようとしていた。
崖に面した開けた荒れ地、夜の静寂に満ちたその場所に突如として球形に渦巻く風の塊が落下する。
破裂音と共に弾けた風の中からは8人の人影が姿を現した。
1人は
残りの5人はそれぞれ異なる格好をしており、レイピアを装備した軽装の騎士、三角帽子を被った魔導師、法衣を着た神官など様々だ。
特に目立つのは、流れるような金髪を短く切り揃え、白銀の剣と純白の鎧を装備した若い男性で、幼さが残りつつも人を惹きつける魅力のある風貌をしていた。その瞳には魔眼であることを示す星のような輝きが宿っている。
ただし、目立つという意味では最後の1人も劣らない。
ボサボサの白髪頭に右目の眼帯、獣のような尖った歯を持つ口、額には
古びた革鎧を身につけ、背中には片方の先端が輪になった身の丈ほどの鉄棒を
そんな男が周囲を見回しながら口を開いた。
「転移の魔法ってのは便利だな。行ったことのある場所ならどこでもあっという間だ」
男の言葉に応える者はいないが、男は気にすることなく続ける。
「んで、こんな山奥まで呼び出して何の用だよ?法務のおっさんまで来るとか
おっさんと呼ばれた白ひげの老人、法務大臣のカール・ヴェルスバッハは不快感を隠さずに話し始めた。
「相変わらず礼儀を知らぬ
言いながらカールは懐から書類を取り出し大声で読み上げる。
「キイチ・ドドグラ、貴様を宝物庫から金貨200枚を盗み出した容疑で逮捕する。勇者アレス・プトロアク・ローレンス、並びに騎士セレン・ハイドロジェンス、魔導師ルヴィ・ジームソン、土神の神官ケイン・ゲルマニルの4名はキイチ・ドドグラを拘束せよ!」
言い終わると同時に命じられた4名はキイチと呼ばれた男とカールの間に立ち
崖と勇者たちに挟まれる形になりながら、その様子を考え込むかのような顔で見ていたキイチは、不意に納得した顔になると笑い出した。
「ヒィーハッハッハッハ!なるほどなぁ。ついにお偉いさん方から愛想尽かされたって訳だ。それで、テキトーな理由付けてとっ捕まえると」
「だまれ!汚れた
「そう、国の上層部は君を追い出すと決めた。そして、僕もそれには賛成だ。だから、おとなしく投降してくれないかな?なるべく早く出られるよう国王様には掛け合ってみるからさ」
キイチの顔をまっすぐに見つめながらアレスは言葉を続けた。
「キミはもう、ボクたちのパーティーにいるべきじゃない」
「そっか。リーダー様から追放宣言されちゃしょうがねえな。いいぜ、パーティーからは抜けてやるよ」
肩をすくめながらそう答えると同時にキイチの笑みに凶悪さが混じる。
「でもよぉ、ここでおとなしく捕まるってのはもったいねえよな。今抵抗したら、お前ら全力でオレを潰しにくるってことだろ」
言いながら、キイチは背にした鉄棒に手をかけた。鉄棒を背中に
「前からお前らとは思いっきりやり合いたいと思ってたんだ。せっかくだからやろうぜ、殺し合い」
心から楽しげに、まるで酒場へ誘うかのような口調だった。
「うん。そう言うとは思っていたよ」
「神器にまで手を伸ばすか。どうやら本気のようだな」
「バカだとは思ってたけど、この状況で喜ぶとかマジモンのバカね、ほんと」
「どうしますか?手加減していい相手ではありませんが」
アレス、セレン、ルビィ、ケインの4人もそれぞれに戦闘態勢に入る。
アレスが白銀の聖剣を抜き、セレンがレイピアの先端をキイチに突きつけた。ルヴィが車輪のついた靴で宙に浮き、ケインは巨大な宝石がはめ込まれた聖杖を
「愚か者め!いかに貴様が鬼神の
勝ち誇って告げるカールに対し、キイチはさらに喜悦を込めた笑みで返す。
「ヒャッハ!いいねぇ、要するに国の最大戦力との殺し合いだろ。こんな良い機会はそうそうねえ。最っ高に楽しめそうじゃねえかっ!」
「くっ!……これだから狂戦士は!」
キイチの反応にカールは一瞬ひるんだように後ずさるとそう吐き捨てた。
「ボクが前に出る。みんなはサポートを頼むよ」
アレスはそう告げると、聖剣を構えた状態で鉄棒に手をかけたままのキイチと相対する。
ケインが後方から筋力と耐久力を増強する魔法をアレスにかけ、ルビィとセレンは左右にそれぞれ広がりいつでも攻撃できる態勢を取った。
数秒の睨み合いの後、キイチとアレスはほぼ同時に動き出し周囲に金属がぶつかり合う轟音が響きわたる。
それを合図として、
そして――その作戦は崖の大崩落にともなうキイチの逃亡という結果に終わることになる。
※※※※
あとがき
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