メーコのモチモチ回答配信

「こんばんわ! みんな、見えているか? 聞こえているか?」


 義母さん…… いや、メーコが配信を始めると、既に百人以上の視聴者が義母さんのチャンネルを視聴していた。


「こんばんわ、メーコだ! 今日はみんなから頂いた質問に答えていく配信をしていこうと思う」


〖こんばんわ!〗


〖初見です! よろしく!〗


 おお、義母さんが挨拶をするとコメントも一気に増えた。


 身バレ防止のためにマスクとサングラス、それと俺が部屋着として着ている首元がヨレヨレのTシャツにクソダサ芋ジャージを履いた義母さんが画面越しに手を振って視聴者のコメントに反応していた。


 撮影用の義母さんのスマホを俺が持ち、横にはコメントが見やすいよう使っていなかったタブレットを置いているので、まあサングラスをしていても大丈夫なはず……


「うーん…… コメントが良く見えないな……」


 おわっ! 大丈夫と言ったそばから正座していたのにいきなり身を乗り出すように四つんばいになってタブレットに近寄るから…… 危ない! 撮影しているスマホにぶつかりそうになったじゃないか!


〖うぉっ!〗


〖あっ……〗


〖あっ……〗


 な、何だ!? いきなりコメントが『あっ……』って埋め尽くされているけど。


〖見えた〗


〖デッッッ!〗


〖エッッッ!〗


 えっっ!? な、何が視聴者には見えたんだ!?


「んーと『こんばんわ』…… 『初見です』…… ふふっ、みんな、メーコチャンネルに遊びに来てくれてありがとう、さーて早速質問に答えていくぞ!」


 義母さん、コメントが騒がしいのは触れないのかよ!

 そしてコメントがざわざわし始めたと同時くらいに、視聴者の数もどんどん増えてきた。

 今は百五十人くらい…… いや、少しずつだが更に増えているぞ! ……さすがバズっただけある義母さんだ、複雑な気分ではあるが注目されつつあるのかも。


「最初の質問は…… 『何歳ですか? 結婚してますか?』か…… うーん、歳は二十九歳で、


 年齢は正直に答えたけど、結婚は嘘をついたな…… さすがに個人情報だし、誤魔化しておかないと……


「あっ、でも息子はいるぞ、すっごくしっかり者で何より可愛いんだ! ふふふっ」


 か、義母さん!? なぜそこは正直に話しちゃうんだ……


〖二十九!? もっと若いかと思った!〗


〖結婚してない、でも息子はいる、シンママか!〗


〖メーコママぁー!〗


 ま、まあ、息子と言っても義母さんの年齢からして小さい子と勘違いされているだろう……


「ほんと可愛くてな…… いつも一緒に寝ているし、お風呂も入ってるんだ! でも恥ずかしがり屋で身体を洗われるのは嫌みたいなんだ、そんな所も可愛いんだがな」


〖添い寝にお風呂……〗


〖息子よ、そこを代われ!〗


〖でも恥ずかしがるってことは息子さんは小学生くらいかな?〗


 おい! 何言ってくれちゃってるんだよ! まあ、小学生と勘違いされているし大丈夫……


「んっ、違うぞ? 息子はピチピチの十八歳だ!」


 義母さぁぁぁーん!! 正直に答えるんじゃなぁぁぁーい!! 


 おいおいマジかよ…… 義母さん、それ、ポンコツじゃ済まされないぞ?


〖十…… 八歳??〗


〖おい、息子! 代われっつってんだろ!〗


〖年齢的におかしいな、義理の息子か彼氏じゃね?〗


 ほら! 言わんこっちゃない! コメントがどんどん増えて盛り上がってるぞ!?


「そう! 義理の息子なんだ! でも義理の息子だとしても私の可愛い息子に変わりない! だから普通だろ?」


 義母さんの爆弾発言でコメント欄も加速し混乱している…… ただ、義母さんは何事もなかったかのように雑談を続けている。


「じゃあ次の質問はぁ……『身長、体重、スリーサイズは?』だって!? 失礼な奴だな、女性に体重を聞いちゃダメなんだぞ? でも身長は…… 百七十八センチ! スリーサイズもひ・み・つ! だっ!」


『百七十八!? デカッ!』


『おぉ、その身長で、アレはあの大きさって…… デカッ!』


『ばぶぅー、メーコママぁー』


 うん…… 義母さんって身長高いんだよ、俺よりも。

 どのくらい差があるって? 俺が頭を抱えられるとしそうになるんだぜ? 分かるだろ? ……いや、分かるな!! 俺だって気にしてるんだよ!!


「もう! 私はみんなのママじゃないぞ!? 私の息子は一人だけなんだ! ふふっ、じゃあ次の質問は…………」


 その後も視聴者から募集した質問に答え続ける義母さん。


 趣味や最近ハマっているものから、男性のタイプやちょっときわどい質問まで…… 義母さんはすべてご丁寧に答えちゃったよ。


「趣味? うーん、今は子育てか? 好きなタイプかぁー、あえて言うなら…… 息子みたいなしっかり者で可愛い人だな! あと…… いっぱいヨシヨシしてあげたくなるくらい甘えられながら…… っていうのが一番なぁ……」


 そんなふざけたことばかり言ってるからコメント欄は大騒ぎ、しまいには大きな赤ちゃんが大量発生してしまった。

 それでも義母さんは気にしている様子はなく、笑顔でコメントを拾っていた。


「はははっ、みんな甘えん坊さんばかりなんだな、でもダメだぞ? みんなはみんなのママに甘えるんだ、残念かもしれないが、私はまー…… じゃなくて息子だけのママだからな」


〖はーい!〗


〖……いや、この歳でおふくろにヨシヨシされるのを想像したらキツイわ〗


〖メーコママー! おっぱい!〗


 大きなお友達にはキツイわな、それはもはやプレイとも言えなくもない…… んっ?


「んっ? おっぱい? 私の胸に何か付いてるのか? ここには何もないぞ…… どこだぁ? も、もしかして虫か!? やぁぁーん!」


 えっ? か、義母さん!? 配信中なんだから下から持ち上げたりムニュムニュするな! 義母さんのトゥインクルは只でさえ目立つんだからそんな風に確かめたらダメだって! ああっ、シャツを引っ張ったらポロリもあるよ!


 あれ…… か、義母さん!? トゥインクルの動きがやけになめらかで開放的な気がするんだけど…… ちゃんと拘束してる? ま、まさかノーブ……


「はぁっ…… はぁっ…… 何も付いてなかった、良かったぁ…… やっぱりみんなの見間違いじゃないのか? …… って、あれっ? 電波が悪いのか? 画面が真っ暗になってる…… おかしいぞ? んーと……えっ? た、大変だ! 配信が…… 停止してる!」



 その日の配信は強制的に終了させられた。

 まあ、色々喋り過ぎだからもうそろそろ止めようとは思っていたのだが……


 この配信のせいで義母さんの『メーコチャンネル』はトゥインクルトゥンクからBANされた。

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