第42話 田舎の猫 回想する

 『やっと使う気になったのね~。まあ、今までは使う機会もなかったみたいたけど』 

 キャティがLIN……リンクを飛ばしてきた。その言葉を聞き流しながらも、私は遺跡でキャティと話した時の事を思い出していた。


 「スキルについては大体分かったかしらね?」 

 「まあ大体は分かりました。私に使いこなせるかどうかは分かりませんけど。」

 「じゃ、次は貴女の衣装についてだけれど……」

 「は?」

 「えっと、着る服の話だけれども?」

 いや、そこじゃないし。


 「あ、えっと……修道女が着るような服を着ろって事でしょうか? それで女神様に対する信仰を集めよと?」

 「あのね、その女神様ってのはマジでヤメて貰える? 私、カミって言葉にアレルギーがあるのよね」

  女神様が『マジで』とか『神アレルギー』とかどゆこと? ちゃんと説明プリーズ…… 


 そういう私の思いをぶった切るかのように、目の前の『女ゴミ様』──いけない誤変換しちゃったわ──『女神様』はこう言った。  「貴女の元いた世界にペーパーレスって言葉があったでしょ? この世界もカミは無くす方向になってるのよ」

 いや、それは強引すぎるだろ。カミ違いも甚だしい……。でも確かにグリーンフィールドには教会も寺院もなかったわね。田舎だからだとばかり思ってたけど。


 「ではなんとお呼びすれば?」

 「フルネームはキャティ・ウィンガードよ。長いからキャティでいいわ」

 「いや、流石に恐れ多いんですけど……」

 「後、言葉ももうちょっとフランクに出来ない?」

 「いや、流石に……」

 「細かい事を気にするとハゲるわよ?」

 多分化け猫とハゲ猫をかけたつもりなんだろうなぁ……微妙…… 


 「コホン……と、とにかく衣装はコレね」

 そう言ってキャティが差し出したのは数着の服だった。

 デザインは今風でお洒落な感じ。サイズもぴったりね。……でも、このカラフルさはなんなん?  それらは虹の七色が散りばめられたド派手な衣装ばかりだったのだ。流石にこれは着る人を選ぶんじゃ…… 


 「貴女さ、前の世界ではジミ娘だったじゃない?」

 いきなり思いっきり刺してくるやん……

 「こっちの世界ではもうちょっとハッチャケてもいいと思うのよね」

  あー、知らないんだ。前の世界での反動からかグリーンフィールドでの私は結構……だった事。でも、あれは師匠が悪いのよっ。私がグリーンフィールドを出る決心をしたのだって……。まぁ、その話は長くなるから今は言わないけどさ。


 「というわけで、貴女には虹の加護が与えられました~っ!」

 どんどんどん、ぱふぱふぱふ~っという音が聞こえてきそうな口調でキャティが言った。

 「な、何その虹の加護って?」

 「平たく言えばアレね。レインボーマ『ダメッ!』みたいな?」

 この特撮オタ──「それは誤解よっ!」

 私はインドの山奥で修行なんてしてないぞっ!私の師匠はダイバなんとかって名前じゃないしっ。敵はデス!デス!デース!って叫ぶ狂団なのかっ!? 


 「その設定は嫌? 嫌ならセーラーム『絶対ダメッ!』とか?」

 そっちは新しいからもっとダメに決まってる。知名度もグローバルだし。それに1人で変身するならまだしも、何人も仲間が出て来たら収集がつかないぞ。

  「でもさぁ、貴女の元いた世界では強大な敵に対して、みんなで力を合わせて立ち向かうってのが燃える展開なんでしょ?」


  うーん、それね。確かに一つのジャンルとして戦隊モノってのは人気だった。でもさ、私はあんまり好きじゃなかったのよ。ほら、多数で取り囲んで1人を倒すのって何かイジメみたいじゃない? 実際学校とかでも『○○ンジャーごっこ』と称したイジメがあったしさ。大体いじめられっ子が悪の怪人にさせられるのよね。


  私はそれよりたった1艦で敵に立ち向かい、14万8000光年の彼方まで到達した話の方が好きなのよね。乗組員は確かに多いけどそれは敵も同じじゃん? 1艦で多数の敵艦に勝つ方がかっこ良くない? ボッチ最高!  って話が逸れた。設定はともかく、どうなるのかを聞かないと。


  「虹って七色でしょ? つまり……」

  まあ簡単に言えば、虹の七色それぞれの特色に特化した力を有する分身を生み出せる加護らしい。赤なら火、青なら水みたいにね。  七色が混ざった白色の私を入れると8人って壮観だけどさ。大丈夫なの? メモリー足りる? カクらない?  その分身たちが服の中に仕込まれてるって訳ね。で、解放するには『レインボーブースト』と言えと。


  服じゃなくてアクセサリーとかにはならなかったのかな? 落とすからダメだって? でもそれはヒロインがピンチになる時のお約束じゃない? そういうサービスシーンも必要じゃないかなぁ……

  えっと、それから分身たちは別人格なのかな? それなら普段から1、2名話相手として出しときたいんだけど。 


 あぁ、AI搭載なんだ? しかも戦闘特化型なのね。思考判断の出来る人型ファン○ルみたいな感じ? 過敏に反応して誤作動とかしない? 


 キャティと1問1問しながら私はその使い方や機能について理解していった。でもさ、こんなの持たせるって事は敵が出てくる事前提じゃん。しかもかなりの強敵が。

  その時は漠然とそう考えていた私だったけど、今まさにその場面に遭遇しているんだよね…… 


 取りあえず『履いてて良かった』もといっ……『着ていて良かった』レインボースーツなのであった。

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