第9話 赤色の花

そこに咲いていたのは真紅の綺麗な花だった。


「これ、なんの花……?」


 ラズは困惑していた。こんな花は見たことがない。


(私この話見たことないのになんでこんなに悲しかなるの…?)


 ラズが花を見つめているとフランとウィリアムは急いでその花をラズの視界から消した。

 

 「どうして、この花が……?」

 

「僕はこの花をラズには見せたことがない。」


 二人が顔を見合わせている。フランもウィリアムも困惑していた。フランはこの花がどういうものなのかよく知っている。ウィリアムもこの花をラズの目に入れないようにしてきた。なのに、だ。


 おかしい、明らかにおかしい、僕はこの花をラズには見せたことがない。フロムも同じくラズの視界にこの花を入れたことはないはずだ。


 ウィリアムは焦っていた。この花のせいで思い出してしまったらどうしようか、と。


 「ねぇ、二人とも、この話なぁに?」


 ラズは不思議そうに見ていた。初めて見る花だ。幼い子供のように二人に聞いている。


 「ラズ?この花どこかで見たことあるの?」


 フランはラズにそう聞いた。何故ならこの呪文は自分が一番好きな花、頭に思い浮かんだ花を探す呪文だ。ラズはこの花を見たことがない。ならば後者だ。


 「…たまにね、夢に出てくるの。この花なんて言うの?」


 ウィリアムがラズにこの花は知らなくていいと言おうと口を開いた時


 「この花はね、レッドマジックリリーと言うのよ。」


 フランがそう言った。ウィリアムは驚きフランな顔を見た。


 何故、勝手に言うのだと。言おうとしていたがフランな顔を見て黙ってしまった。フランな顔は、今までに数回しか見たことのない真剣な顔をしていたから。


 「レッドマジックリリー……」


 ラズは俯きながら呟いた。二人からはラズの表情は見えない。


 「ラズ、この花はね、」


 ウィリアムがラズに説明をしようとしたその時。


 「そっか、この花レッドマジックリリーって言うんだ!新しいお花に呪文覚えたよ!」


 ラズは嬉しそうにしていた。


 (どうして、君はそんなに笑っていられるの?どうして、)とウィリアムは目を開いてラズのことを見ていた。


 ラズはウィリアムの目線に気付きにっこり笑った。


 「今はまだ、知りたくない。」と。


 「そっか、うん、そっかぁ。」


 ウィリアムは涙が出そうなのを堪えてラブを抱きしめた。


 この子にはたくさんの我慢をさせてきたなぁ、ごめんね、と思いながらラズに抱きついていた。


 フランはそんな二人を見て微笑ましそうにしながらも考えていた。なぜ、ラズがあの花を咲かせてしまったのか。


 フランが口を開き呟いた。

 あの花の花言葉は、


       「悲しき思い出」

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