第7話 私の杖

ラズの背後に誰かがいた。

ラズはびっくりし恐る恐る振り返った。そこにいたのはウィリアムだった。


「びっくりしたぁ、ウィリアム様か。どうしたの?」


 ウィリアムはラズを見て笑っていた。恐る恐る見るラズが年相応で可愛らしかったからだ。

ウィリアムはラズの目線に合わせるために腰を曲げ屈んだ。


「ラズ?魔法を使うために一番必要なのはなんだと思う?」


 その質問を聞きラズはハッとしている。ラズはいつも魔法を使う二人のところで育ってきた。

二人はいつも杖を使っていた。二人とも個性的で素敵な杖だ。魔法を使いたいと思っているラズは杖を持っていない。


「私、杖持っていない………。」 


 ラズは泣きそうになっていた。それもそうだろう。自分には杖が無いのだから。

そんなラズを見て隠れていたフランの怒りがピークに達しそうになった時、ウィリアムが焦りながらラズを宥め始めた。


「違う違う!いや、杖ないと魔法が使えないのは合ってるけど……。ラズには、渡すものがあるんだよ?」


「?私に渡すもの……。」


ウィリアムはラズに箱を渡した。装飾が鮮やかで箱の大きさは35センチくらいの長さだった。


「!?これって、」


「本当はね、師匠が渡すんだけどフロムと悩んみ悩んで選んだんだ。まるで、ラズだけのような物の杖を見つけたから。」


ラズは箱を開けた。箱の中には杖が入っていた。30センチくらいの長さで装飾としてラズの目の色のような赤色のルビーが使われていたりと、ウィリアムが言っていたとおりラズによく似ていた。


「これ、わたしの杖なんだ……。なんか、しっくりくる。ありがとうウィリアムさま。」


「フロムにも後でしっかりとお礼を言いなさい。」


ラズがすごく嬉しそうな顔で杖を見ていた時フランが物陰から出てきた。


「あらぁ、いい杖をもらったのねぇ。でも、この杖……」


フランが言いかけたその時ウィリアムが遮った。


「フラン久しいね。話があるんだけどいいかな!?」


珍しくあのウィリアムが慌てていてラズは驚いた。

フランはウィリアムな顔を見てにまにまと笑っていた。


「いいわよぉ、お話しましょうか。」


「ラズちょっとフランと話してくるから待っていてくれるかい?」


「うん!」


ウィリアムはラズの返事を聞き安心した顔をした後にフランの肩に手を回して少し歩いた。


「ちょっと、もう手を離してちょうだい?」


 フランがラズに話す時と異なる口調になりウィリアムの手を払った。


「うん、ごめんね。フラン」


「あんた、それよりあの子の杖。何かで細工したわね?あんたの魔力が感じられたわ……恐ろしいほどに。」


「ちょっと、だけだよ?ラズには内緒にしておいてくれ。あの子はきっと怒るだろうから」 


 杖自分の魔力を込めることはあまりよく思われていない。なぜなら自分の命を削っているからだ。ラズも魔法は使わなかった物のよく本を読んでいたから分かるだろう。


「なら、なおさら言うべきじゃないの?あなた、過保護すぎるわ。」


 フランは少し引いていた。あの、ウィリアムが一人の少女を愛しここまでしているのだ。フランが知っているウィリアムではない。


「あの子は僕の大事な宝物だから。」


 そこで話は終わり二人ともラズのところへ戻っていった。


「おかえりなさい!何を話していたの?」


 ラズは頭に???がいっぱいだった。それもそうだ。この二人が話しているのを初めて見た。なによりとても仲がよさそうだったから。

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