江東区の団地の一室のレポート

まだ転がっているのは玩具か。

カラカラと音を鳴らしながら転がっていく。

テーブルの上には食べかけの

食器が転がったまま。

子供用の離乳食や、

粉ミルクの缶が転がったままである。

箸は転がり落ち、

こびりついた食器の食べ物も目に浮かぶ。

耳を澄ませると子どもの

鳴き声のようなものが聞こえてきた。

それは愛くるしく、胸が痛んだ。

棚の上には和気藹々と家族の写真が並べられ、

2歳と書かれたプレートに

その男の子が笑っていた。

またも転がるのはその黄色い玩具。

鈴のような音もしている。

遊んでいるかのように見えるが、

それはやはり姿を見せないままだ。

何かを溢したのかフローリングは色を変え、

映像からでも異臭が漂うのが窺える。

やがて、特殊清掃員の面々が

部屋へと入ってきた。

厳重に覆われた防護服を着ている。

彼らは手際よく片付けをこなしていき、

見る影もなくその荒れた姿を変えていく。

三人で部屋を片付けていく。

それは二日ほどで済んだようだ。

一変し、転がった玩具も

どこかへ消えてしまった。

家族であろうか、

3人ほど部屋の中に入ってきた。

女性が膝から倒れ涙を流す。

その背中を撫でるのは父親だろうか。

この部屋で起きたことは、

すぐに明らかになった。

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