自己紹介

 私は畑山緑。畑山家が誇る筋金入りの美女です。どうぞよろしくお願いします。キラーン☆


 Vサインと、呪忌夜みたいなにっこりした笑顔で愛嬌を振り撒いたので、どうかよろしくお願いします。さて、それでは自己紹介という事ですので、とりあえず今日は、介党鱈の西京焼きを作っていこうと思います。材料は二人分です。簡単に、材料と作り方の紹介をします。まず最初に材料の方から。


 介党鱈の切り身2切れ。合わせて150g程度ですね。それからサラダ油が、小さじ1。すだち、こちらはお好みで構いません。西京味噌、大さじ4。ご用意がない場合、白味噌で結構です。そして、みりんを大さじ1。お醤油も大さじ1。以上となっております。


 それでは作り方の紹介です。


 まず調味料を混ぜていきます。ボウルを用意していただいて、そこに西京味噌、そしてみりん、それからお醤油の順番で入れていきます。入れたらその都度よく混ぜるというのがポイントです。味噌をいれて軽く混ぜて、みりんを入れて混ぜて、お醤油を入れて混ぜて、そういうふうにして下さい。


 次に、介党鱈を包丁で半分に切ります。切ったら、介党鱈をキッチンペーパーでくるんで下さい。それで水気を抜きます。


 ラップを用意していただいて、適当な場所に広げます。そこへ先ほど混ぜ合わせた味噌を1/4くらいの量で、ラップの上に広げます。


 半分に切って、水気も切った介党鱈を1切れ分乗せて、その上にまた1/4くらいの味噌を塗っていきます。最後にラップをぴったりと包む。残りの1切れも同様の手順で包みます。これを保存袋に入れて1日、お急ぎでない場合は2日程、冷蔵庫で寝かせておいて下さい。そうすると介党鱈に良く染み込んで、味が馴染みます。


 そしてここに、2日間寝かせておいたものがあります。ラップを開いて、中身を取り出して、味噌を流水で洗い流していきましょう。それからキッチンペーパーで水気を良くふき取ります。こういう手順を丁寧にやる事で、料理の仕上がりに違いが出てくると思います。


 さて、十分に水気が取れたら、フライパンに油を加えて熱します。介党鱈を油の上に置いて、弱火で5~6分ほど焼いて下さい。それからフライ返しを使って、上下を返して、さらに3~4分くらい焼きます。この時に、身が崩れるかも知れません。なので、優しく丁寧に返して下さい。


 最後にお皿に盛りつけて、お好みで切ったすだちを添えたら完成です。冷蔵庫で寝かしておく手間を別にしたら、本当に簡単に出来ますので、皆さま是非お試しになってみて下さい。


 ちなみに、明治維新の頃に江戸が東京となって、京都を西京と呼んだそうです。西の京、なので西京。そこの味噌を使っている事から、西京焼き。歴史を振り返ると発見がありますね。以上で、私の自己紹介を終えさせて頂きます。お付き合い、本当にありがとうございました。


 そしてここからは、私の親友である姫野呪忌夜の解説をさせていただきます。どうか、もうしばらくのお付き合いを、よろしくお願いします。


 結論から言ってしまうと、私の親友である姫野呪忌夜という女の子は顔が良い。凄くはっきりした顔立ち。そして、羨ましくなるくらいに、顔のパーツのバランス整っている。正直、最初に見た時はクレオパトラかと思いました。


 といっても、実際にクレオパトラに会った事がないので、あくまでも私の想像としてです。世界三大美女と言い伝えられているくらいだから、きっと、美しい女性だった。そういう事にしておきましょう。そうじゃなかったら、夢がない。クレオパトラは美しい。姫野呪忌夜も美しい。


 気難しい顔をしている事が多い呪忌夜は、顔が良くて独特のオーラもあるから、近寄りがたい。それなのに、同じクラスになった最初の自己紹介で、可愛い失敗までしてしまう。同じクラスの子達が笑っている中で、私はぽかーんとして、それを見ていました。あざとさを感じられない。ある程度、あの子と付き合った今は流石に分かる。器用な真似が出来る子じゃない。どこか抜けていて、綺麗で、素直な性格で、愛嬌がある。ただそれだけの女の子だという事を。


 気難しい顔にしたって、緊張しているか、考え事をしているか、変な事を考えているか。そのいずれか。呪忌夜のパーソナリティーなんだって、今はもう分かっています。


 それでも、私のクラスの子達は呪忌夜に対して、遠慮して、遠巻きに見ていた。最初のクジを誰が引くのか。そういう緊張感があった。私としても、この子は一筋縄では行かないと思っていたので、今思うと馬鹿な話だけど、ライバルだとも思ってた。


 そして、訳も分からずに距離をおいている“みんなとは違う”、そう意地になってる部分があった。その頃の私の中に、確かに、あったんだと思います。子供っぽい感情で。


 私は、自他共に認める美少女だけど、でも華がない。そして、大地の恵みに感謝している感じのフルネーム。春の息吹き。夏の輝き。秋の実り。冬の静けさ。そしてまた春が来て、命が芽吹く時に、大地に祈って感謝する。畑の山の緑。はっきりいってダサと思う。


 それに対して呪忌夜は、名前もルックスも存在のあり方も、はっきりしている。持って生まれた才能の違い。だとしても正直な所、悔しかった。負けてるなって思ったから。


「緑はまるで、天女様だなぁ~♪」


 父と母はそう言って良く、無責任に褒めるけど……、あの頃の私には、何の慰めにもならなかった。


 農作物の収穫に多大なる感謝を覚えるのとは別に、物足りない気持ちが私の中にはあった。両親から、お米という作物がいかに偉大なものであるかというのを、よく聞かされて育った。ちなみに両親は、一般的な企業に勤める会社員です。


 畑山緑。大地の恵みには感謝している。人並みに。でもあまり可愛くない名前だとも思う。もしかしたら性格も可愛くないかも知れない。少なくとも私自身はそう自覚している。


 だから正直、最初は呪忌夜に対して、好きとかそういうのはあまりなかった。名字と名前が個性的で、ルックスまで良くて、色々な意味で凄くはっきりしている。そういう子なんだなって。まるで物語のヒロインみたいに、そういう子なんだなって思っていた。特別枠。


 自分だけの世界まで持っていて、スポットライトが当たってる子なんだ、特別なんだって思い知らされる。どうしようもない事なのに、どうしても羨ましいと思ってしまう。身勝手な不満だという事は自覚していた。けどそれを、どうする事も出来なかった……。


 ある日、放課後に楽しそうな様子で、廊下を歩いている呪忌夜を見掛けて、今だなって思った。とりあえず昇降口でつかまえて、どこに行くのかと話し掛けてみた。


 そうしたら、恐い人に絡まれたとでも思ったのか、呪忌夜はあたふたしながら、校門の側の溜め池に行くと言った。実はその時に私は、あんたの顔の方がよっぽど恐いよ、そう思っていた。ある意味、お互い様だった。


 池に着いて、私はまず、普通の池だなという風にしか思わなかった。木々に囲まれていて、苔むした石垣に囲まれていて、植物がそこそこ生えていて、濃い灰色をした大きな魚体の鯉が何匹か泳いで、そして妙に大きな亀がいるだけだった。


 でもそこは、呪忌夜にとっては、素晴らしい場所だった。自分にとって居心地の良い場所で、呪忌夜は調子が出てきたのか、私に嬉しそうに解説を始めた。


 この景色のバランス。ゆったりと泳ぐ鯉の、それぞれの大きさや性格。チーちゃんの愛らしさ。生徒のエサやりは学校のルールで禁止されていて、せっかくチーちゃんが見上げてくれているのに、毎回それに、応えて上げる事が出来ない。


 そういう自分の気持ちを、眉をしかめながら、本当に残念そうな顔で話していたのが、印象的だった。そして少し恐かった。表情を変えたら、崩れた状態になるはず。哺乳類の肉体を持つ以上、人間の顔というものはそういうものだ。歪めたら崩れる。なのに整っている。損なわれない。恐らく、本人の意思と関係なくはっきりとしている何かがある。呪忌夜の、そういう人間離れした部分も含めて、印象的だった。


 あの子の名前に含まれた、「呪い」と「忌まわしい」という文字の意味を、考えさせられる。それでようやく、姫野呪忌夜という女の子の事が、少し分かった気がした。ちゃんと向き合って話してみたら、ちょっと子供っぽいだけの、普通の女の子。自分の好きな事がはっきりしていて、私にそれを、楽しそうに話していただけの呪忌夜。勝手な思い込みだけで、きっと凄い子なんだろうと思っていた。けど、以外と普通の子なんだって分かった。


 本人の意思に関係なく機能している。そういうプロセスが、問題の切っ掛けになっているんだ──。何となくそう思った。


 それから良く一緒に、溜め池とか裏庭とか、学校の色々な所に付き合うようになった。たまに、両手を合わせて何かを拝んでいる。そんな呪忌夜を見て、張り合う気持ちでいた自分がバカバカしくなった。どこか影があって、放っておけなくて、本人の雰囲気もなんだか危なっかしいのに、凄くはっきりしている。私達の関係も、だんだん遠慮がなくなっていく。


 自由にならない、バランスがおかしい、そういうのを抱えている女の子と一緒にいる時間が、楽しくなっていった。出生時に、命の危険があったというのも聞いた。おへその下に手術の跡があるって言って、シャツの裾をめくろうとした。それを、あわてて止めた。無防備だからこそ呪忌夜なんだけど、流石にそれはあんまりだ。


 それから、けっこう気合いをいれて怒った。そういう風になったのは、私にとっても初めての体験だった。私にいきなり怒られて、混乱して、呪忌夜は泣きそうになっていた。けどその時ばかりは、心を鬼にして説教した。


「……ごめんなさい」


 そう言って、本当に済まなそうに謝ってた。思わずほだされそうになったけど、油断は出来ない。この女の子は真夜中の街灯だ。何を引き寄せるか分かったものではない。この子の無防備さは、危険だ……。


 それでも、その無防備さで、「ズッ友」だって言ってくれたのは、本当に嬉しかった。とても嬉しかった。他の人が言ったら、なんでもない言葉でも、呪忌夜が言うと違う響きに聞こえる時がある。美しさは罪だ。なのにそれが、あの子の中でも、私の中でも、色々な形になっていく。その過程を、間近で体験出来る事に、何時しか快感を覚えていた。そういう風に染められていた。


 あの日の朝。教室についた私は、香ちゃんが来ているのを確認して、呪忌夜と一緒に魔女の隠れ家に行った事を話した。


「行ったのね!」


 その一言に、香ちゃんの興奮が凝縮していたのが分かった──。


 私にとって、たまに話す程度の関係だった、香ちゃん。大人しげで、気が優しくて、引っ込み思案。どこか呪忌夜の性格に似ている所のある女の子。自分の事ではないのに、親近感を覚える。些細な切っ掛けを見つけては、たまに話すようになっていた。


 香ちゃんが、「変わった文房具屋さんがある」と言って、教えてくれた事があった。その場には夢ちゃんもいて、私を含めた3人で、果たしてどんな所なのかと話し込んだ。魔女がいるらしい。その頃には、もうすでに未知の存在に興味を抱いていた私は、その話に、強く興味を引かれた。


 具体的な場所と、ある程度の情報を聞いた私は、呪忌夜を誘って、絶対に行こうと心に決めた。心臓がドキドキしていた。こんな事は初めてだった。魔女の隠れ家。名前からして、楽しみだった。


 ──話せる範囲内で、一通りの感想を、香ちゃんに話した。とても目立つ建物だったから、道に迷わなくて済んだ、そういう事を伝えた。良く目立つピンク色の建物。それを思い返したみたいで、香ちゃんは「流石にあれはねぇ……」と、苦笑いを浮かべて言った。


 後から来た、夢ちゃんも参加して、話をした。2人とも、前から呪忌夜に興味があった。それでも話し掛けづらい。それでも、香ちゃんも、夢ちゃんも、良い機会だから仲良くなりたいと言ってくれた。魔女の隠れ家で、洋子さんに助けてもらった仲なのだからと……。


 私が好都合だと思っていたら、夢ちゃんが、自分の事情を話した方が良いかと、聞いてきた。別に興味がなかったので、首を横に振って、話さなくて良いと伝えた。その時に2人とも、何故かほっとした顔をした。私がそれを不思議そうに見たら、夢ちゃんが「何でもない」と言って、違う話を始めた。


 今はまだ2人と、それほど親しい関係って訳じゃないから、それで良いと思った。夢ちゃんの話を、メガネの奥で柔らかく目尻を下げて、楽しそうに聞いている香ちゃん。それでますます、調子が上がって、身振り手振りを交えて話す、元気な夢ちゃん。凄くバランスが取れている。とても仲の良い2人だと思えた。


 しばらくしたら、呪忌夜が教室に入ってきた。それを横目で確認していたら、もじもじしながらこっちを見て、いつものように難しい顔をして考え込んでしまった。相変わらず、しょうがない子だなと笑えてきた。香ちゃんと夢ちゃんも、私と同じような顔をして、苦笑いを浮かべていた。味わい深いものを見てしまった。そんな感じになっていた。


 それから、勇気を振り絞った呪忌夜が話しかけてきて、私達はとてもスムーズに、受け入れる事が出来た。最初から受け入れ態勢が出来ているんだから、当然だった。呪忌夜の「大丈夫かな?」が、とても伝わってくる挨拶をされて、それを受け流す方が難しいと思う。香ちゃんと、夢ちゃんと、仲良くしようとしている呪忌夜の様子を、私はまるで親鳥が、雛鳥を見守るような気持ちで眺めていた。あたふたすればするほど、愛嬌を覚える。呪忌夜のそういう性格は確かに、洋子さんが言っていた価値のあるものだと思った。


 チーちゃんの事は。呪忌夜がチーちゃんを大切に思っていたなんて、ちょっと見ていれば分かるのに。そこまで思い入れがあるなんて思わなかったと、私は甘く考えて、適当な言葉で呪忌夜を慰めれば良いと思っていた。こういうところは、私の悪いところだと思う。そして、私に無くて、呪忌夜の中にたくさん溢れているものだと思う。


「なんで、生き物は死んじゃうの?」


 呪忌夜が洋子さんにそう聞いた時、ドキッとした。まだ無垢で小さい子供が、自分の口から思わず、溢れだした疑問。そういう風に思えた。純粋な子なんだって、あらためて思った。洋子さんは、お母さんのような顔をしていた。同じように思っていたんだ。


 あの時、私は2人の会話が終わるまで、なるべく黙っていようと思っていた。口を挟む必要を感じないくらい、2人の会話が滑らかに調和していたから、そこにある種の才能の様なものを認めて、話に参加してはいけない。それくらいに思っていた。とても貴重な体験をしているのだから。退屈ではなかった。


 呪忌夜がタロットを片付けている間、洋子さんから、田中の秘密を教えてもらった。どうしてもイジメが治まらないようなら、利用すると良い、洋子さんからそう言われた。


 その提案を聞きながら、私の中でイメージが自然と沸いてきていた。深淵の魔女が呪忌夜に話していた内容の一部が、具体的なものとして繋がった。


「価値のある女の子に対しての嫉妬。それを持っているということに対しての。そして、それを手に入れたいっていう、正直な欲求。でも子供だから、上手に表現出来ない。経験が足りないから、考えもまとめられないわね」


 ……だから我が儘なアピールをする。なるほどなと思った。そして私はその時、初めて深淵の魔女が恐いと思った。他人の弱みがこんなにあっさり分かってしまう。会ったこともない人間の気持ちが、手に取るように分かる。とんでもないズルだと思った。避けようがない、なんでもありの反則だ。何でも分かるのかも知れない。いや、知れないじゃなくて、本当に何でも分かるんだ。


 でも、そんな事が出来てしまう人は、誰よりも孤独なのかも知れない。そういう風にも思った。共感してくれる相手が、この世界に、1人もいない。私にとっての呪忌夜みたいな人が、どこにもいない。果てしなく隔絶した存在として生きている。そういう厳しさを想像すると、それは、とても寂しい事だと思う。


 田中の話をした後。洋子さんは、呪忌夜を主人公にした小説を書きたいと言い出した。同情していた私に、洋子さんは真面目な顔をしてそう言った。思わず私は、「この魔女、正気か?」と思った。あの時、呪忌夜の質問に答えながら、色々と聞き出してると思ったら、そういう事だったのか。せっかく心配してたのに、ワクワクしている男の子の様な顔をして、どういう内容にしたら良いかとか言ってくる。大人の女の人のそんな姿を見ていたら、何だかバカバカしくなった。


 初対面の小学生の女の子を主人公にして、小説を書く。しかもそれをネットで公開する。魔女の考える事は本当に良く分からない。呪忌夜にだけは言わないようにと、それだけは約束して貰った。あの子の事だ、必要以上に意識して、絶対におかしな事になる。


「それはそれで、楽しそうねぇ……」


 呑気な発言をする魔女に、釘を刺すのは一苦労だった。それでも、呪忌夜がタロットの片付けを終える前に、何とか言質はとった。


「残念だわぁ……」


 文房具店のオーナーで、魔女で、小説家。まだ足りないのか? とりあえず、私は聞き流すことにした。相手をするのが面倒だった。あの人の事を考えると疲れるから、呪忌夜の話に戻そう。癒しが欲しい。


 オカルト関係の話を聞いている時、呪忌夜はまるで、実際に体験した話をしているような感じで語る。そういう時、年上の人から話を聞いているような気持ちになる。何時もじゃなくて、ごくたまにだけど。そうなる時がある。まるで、想像もつかないような体験をした人のように。とっても不思議で、なんだろうなって、自分が幼くなったような気持ちになる。


 たぶん呪忌夜は、洋子さんと正反対の人なんだと思う。そして、同じくらいに凄いんだと思う。でもそれを、本人は全く自覚していない。凄く透明で、真っ直ぐで、アンバランス。だからなんだか変な感じがする。あの子と友達になってから本当に、色々な事が分からなくなった。でも、とにかく──。


 すぐにあたふたするところ。両手を合わせていきなり拝み出すところ。いきなり奇声を発するところ。妄想にふけって恍惚とした表情をしてる時の、呆れるほどだらしない顔。頭をなでなでされてる時の安心した顔。私が「好き」って言った時に、心配になるくらいびっくりしてから急に、ニヤニヤと妄想に浸るところ。しかも本人は、見られている事にほとんど気付いていなくて、いつもの、そのまんまの呪忌夜でいてくれるところ。


 誰かのために何かをしたいって、ここまで思えるのは、生まれて初めての事だった。正直、自分でも驚いている。


 前からずっと、田中達の事を何とかしないとって、ずうーっと思ってた。私の中でモヤモヤしていた。そういう風に思っていた所に、機会が巡って来た。だから、実際にやってみた。そうしたらちゃんと、力になる事が出来て、自分が誇らしく思えた。一つ一つのきっかけが嬉しかった。


 魔女の隠れ家に行く前、親友は教室で、ズッ友だよって言ってくれた。空が夕陽に染められていて、教室には私達だけしかいなくて、机の上に呪忌夜のタロットカードが置いてあって、私達は内緒話をしていた。そして何の混じりっけの無い、その時に思う、そのままの気持ちを、真っ直ぐに伝えてくれた。とても輝いている女の子の、とても輝いていた言葉。親友の顔を思い出すと、気持ちが温かくなる。


 私の名前は畑山緑。


 趣味は特にありません。好きなものは友達。嫌いなものは特にありません。


 これからもどうか、よろしくお願いします。

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