魔女のお茶会

 文房具屋さんの店内で、お茶会が始まった。悲痛な顔をした山本さんが、頭上にぴんと人差し指を立てて、弾圧に立ち向かう魔女のように言った。


「ますます話がややこしくなると思うのー!」


 そして開催された。大声を出す人に逆らうと、ろくなことがないから、私は大人しくしていた。何かきっと理由があるんだと思う。せめて理由くらいはあってほしいな。思いつきとかだったら嫌だな……。


 山本さんと緑ちゃんが、お茶会の準備を進めている間、私はどうすれば良いか分からなくて、あたふたしていた。何を聞いても、「大丈夫」って言われたから、大丈夫なんだと思う。お腹の調子が悪いとか、言い訳をして、さっさと帰っていれば良かった。なんで、話をややこしくしないといけないんだろう?


 私は予定と違う出来事が苦手だ。それでも普段なら、我慢するようにしているけど、今はなんだか気が乗らない。きっと、山本さんが初対面の人で、あまり知らない大人の人だからだろう。緑ちゃんはちゃんと手伝っていたのに。私はどこで間違えたんだろう?


 少し考えて、お母さんと一緒に見た、動画サイトの広告だと思った。お母さんがスマホを使って、テレビで動画を見れるようにしてくれて、その時に一緒に見たやつだ。


「よく注意して聞いてください。我々は、アナタの味方です。何時だって誠意をもって答えます。だから、相手の話を鵜呑みにしないで下さい。実はそれは、サギです! そしてアナタはカモです。このままだと騙されて、取り返しのつかない事になってしまいます! でも大丈夫、安心して下さい──」


 という感じの内容だった。舌打ちしたお母さんがスマホをいじって、途中で止めちゃったから、あんまりよく分からなかったけど、私は驚いていた。鵜とサギとカモ。鳥がいっぱい出てきた。


 でもすぐに嫌な気持ちになった。私が勝手に思っているだけだけど、みんな友達みたいな親しみのもてる、がんばって生きている鳥たちだ。じっさいに見てみたらそれが分かるはず。それなのにナレーションの人は、悪く言う。私そこでモヤモヤした気分になった。


 まるで湯切りの時に間違えて、カップ焼きそばを、シンクに落とした時のような気分だった。勢い良く紙のフタを開いて、勢い良くお湯を注いで、お腹がすいて待ちきれなかったから2分ぐらいで、勢い良く湯切りをしたらそうなった。あの時の勢いはダメな勢いだった。


 お母さんに「うわー! 何ぶちまけてんだよ、本当にドジだなお前は……」って怒られて、「泣くんじゃねぇよ、人生なんてこれから、いくらでも辛いことがあんだよ」って困った顔で言われて、「私の食べて良いから、泣くんじゃねぇ!」って慰めてもらって、でも“けじめ”だからって、泣きながら焼きそばを片付けた。罪悪感を覚えた。食べ物を粗末にして、ごめんなさい……。でもちゃんと優しいから、お母さん大好き。


 それからは、カップ焼きそばの湯切りを、慎重にするようになった。思い出したくないから、カップ焼きそばのことは置いておこう。ちゃんと他に話があるし。


 私のお家の近所に河川敷がある。そこには、遊歩道とサイクリングロードが一緒になったコースがある。私は、ヒマな時によくそこで散歩をしている。たいていヒマだから、たいてい散歩している。川の流れる音を聞くと、心が落ち着いてくる。


 散歩の最中にたまに、川鵜の姿を見かける。でも川鵜は臆病だから、私の姿を確認すると、次の瞬間にはもう驚いた様子で、矢のように飛んで逃げてしまう。


 それでも運が良い日には、電柱のてっぺんで翼を広げて、日向ぼっこしている姿が見られる。水気を乾かすためだったり、健康のためだったり、そういう理由でまんべんなく、全身にお日様の光が当たるようにしている。川鵜の健気な気持ちが伝わってくる。見かけるたびに私は、幸運な出会いに嬉しくなる。


 でも、翼を広げたシルエットを初めて見た時、私はそれをてっきり恐竜だと思った。


「い、い、い、いた──!?」


 って驚いた。翼を持つ恐竜そのままな姿に見えたから、発見に沸き上がった。その後、急いで近所のお姉さんのお家に行って、ちょうどお家にいたお姉さんに話したところで、真実を教えてもらった。浮かれていたのが恥ずかしくなった。勘違いでした。まあ、あれだけ簡単に見つかる鳥なんだから、誰かがとっくに発見してるよね。


「まあでも、鳥は恐竜の子孫なんだよね。だから、呪忌夜ちゃんの発見は、そんなに間違ってないよ」


 お姉さんに頭を撫でてもらいながら、そう言ってもらえて、嬉しかった。あと、鳥と恐竜が親戚だって知って、私は驚いた。それから、進化論と女神ガイア様の話を、詳しく教えてくれた。賢そうな目で、私が分かるように説明してくれて、質問にもちゃんと答えてくれた。本当に楽しい時間だった。お姉さんは、尊敬できるお姉さんだって思った。


 散歩中に川鵜を見かけるたびに、その時のことを思い出す。良い思い出になってる。でも川鵜は相変わらず、私に対して警戒心が強い。


 同じように、あわてて逃げていくコサギ。白い羽毛と黄色い爪先が特徴の鳥で、黒くて細長い足と合わさると、オシャレなカラーリングのグラデーションというふうに見える。可愛い。


 でもすぐ逃げる。私に驚いてから、あわてて飛び立っていく姿を見ると、間が悪かったかなって罪悪感を覚える。ごめんね。


 同じように、居心地が悪そうに二本足で対岸に避難する、ダイサギとアオサギ。遠くからでも分かるくらい大きい鳥が、バランスをとりながら、ゆったりと前後に体を揺らしながら歩いていく。


 アオサギを最初に見た時。首を縮めた姿勢で、ガードレールにとまっている姿を見て、私は驚いた。


 ──よく分からない生き物がいる!


 正直な気持ちがそれだった。普通に立ち上がったら、1メートルくらいはある。そんな鳥が、長い首を縮めてガードレールの上にいて、小さな姿勢になってて、凄い違和感を感じる姿を見せている。


 予想外のものを目にすると、人間の頭は止まるみたいで、「んっ!?」っていう驚きで少しの間、私はその場で立ち止まってしまった。


 ダイサギもアオサギも警戒心が強い。とりあえず私が、手を合わせて拝もうとすると、それを感じとったみたいに、鳴き声を上げて飛び立たっていった。飛ぶ姿を眺めながら、私はしばらく、その場に立ち尽くしていた。


 同じように、対岸に泳いでいくカルガモとか、マガモとか、色々なカモたち。まだ離れているところからだと、のんびりした様子で、じゃれあったりしていて、とりあえず平和そうなんだけど。私が近づいていくと、様子が変わっていって、警戒する鳴き声が増えていく。


 なんなら、「グエッ!」って鳴いてから、ピヨピヨピヨって飛び去ってしまう。なぜか、どの鳥も逃げていくんだよなあ……。


 きっと本能だと思う。自然界の生存競争は厳しい、この世を生きるのは、なみたいていの事ではないからだ。でも、穏やかな気持ちになれるから、見てるのは好き。


 そういう事情を知らないで、あの時の広告は、好き勝手に言う。思い出すとモヤモヤする。たぶん、モラトリアムだと思う。これも最近覚えた言葉です。あの広告はモラトリアムだと思う。


 あと、私が面白くない気持ちでいるのに、山本さんと緑ちゃんも、モラトリアムだと思う。今も「ややこしい、日々を、北国でぇーぇぇ……」とか、「波に揉まれて、生きているーぅぅ……」とか、二人で歌って盛り上がっている。


 緑ちゃんも山本さんも、少し苦しそうな表情だけど真剣に歌っているから、凄く魂に響く。歌詞も分からないし、音痴で歌が下手な私は、その輪に入れないからとっても悔しい。二人はとても息が合っている。緑ちゃんは私を裏切ったのかな?


 二人のデュエットで、このまま歌手デビューしちゃうのかな? このまま私も、魔女に操られてしまうのかな。それってモラトリアムだと思う。


 そういえば下校中に、校門で色んなアイテムを売っていたおっちゃんも、モラトリアムだな。確か今は、イタリアのミラノで、ファッションデザイナーを目指して修行中だって聞いた。クラスの男子が話しているのを聞きながら、おっちゃんも頑張っているんだなって思った。


 色々な修行をして、人間は成長していく。よくそういう話を聞く。大人はこういう苦しい思いを、こんなふうに我慢してるのかも知れない。大人になるって、思った以上に大変なんだな。井戸に落ちた、石ころみたいな気分。井戸の底で、コツンと反応が返ってくるけど、ただそれだけ。これっていう手応えは、感じられない。


 用意してもらった椅子に座って、湯気を上げる紅茶と、テーブルに並んだお茶菓子と、また違う歌を歌い始めた、山本さんと緑ちゃんを眺める。


 文房具屋さんの店内のド真ん中で、とても芸術的な時間が流れている。まだ営業中なのに良いのかな? このお店に来てから、ずっと分からない。感情のコントロールを、会話にゆだねて、自分の中を調整していく。私には、みんながやっているような感覚が、よく分からない。同じようなことを、いつも一人でやっている。


 好きな場所を散策したり。友達だと思っている生き物を、じっと眺めたり。空を眺めて、風を感じて、日差しの加減、大気の変わる様子を感じたり。まわりに意識を向けて、近所の犬の鳴き声、道路を走る車の音、工場からうねりを上げる機械音、繁華街の喧騒、とにかく色々な出来事を、安心できる場所で聞く。


 そういうふうにして、“姫野呪忌夜のゼンマイ”を巻いて、毎日の調整をしている。


 他人からよく、空気が読めないと言われるし、私は想定外の出来事が苦手だ。だから安心して“ゼンマイ”を巻けない。もしかすると、三者三様という言葉は、こういう時に使う言葉なんだろうか?


 みんな、分からないように上手にしているだけで実際は、同じような気持ちを覚えているのかな?


 私はまだ、生きるということに真剣じゃないから、よく分からない。お茶と一緒に寂しさを味わう。この世界は、あまりにも大きくて、私は小さすぎる。ほろ苦くて、複雑なものを飲み込むのは、まだ苦手だった。大人ぶって、少なめにしていたけど、ミルクと砂糖をもう少し、紅茶に足してたら良かった。


 そういえば緑ちゃんは、見ていて心配になるくらい、ドバドバ入れていたな。馴れてる子ってやっぱり、違うんだな……。


「おかわりあるわよ?」


 ポットを手にして、山本さんが言う。もしかしたら、この人は本当に魔女なのかも知れない。スムーズに、色々と整えていく様子を見ていると、まるで魔法みたいだ。


「このお茶、美味しいですね」

「喜んでもらえて良かった。実はちょうど手に入ったところだったの。だから、二人が来てくれて嬉しいわ」


 歌い終わってのどが渇いたみたいで、緑ちゃんと山本さんは、すっかり打ち解けた様子で、おしゃべりしている。私は、つまらない事ばかり気になって、仕方ないのに。『魔女の隠れ家・ピンクアカウント・本店』って何なんだろう……。


「ところで、表の看板に『本店』て書いてありましたけど、もしかしたらこういうお店が、他にもあるんですか?」

「あるわよー。世界中にあるわよ」

「世界中!」


 緑ちゃんの質問に、自信満々に答える山本さん。やっぱりあるんだ。しかもたくさんあるんだ。私は驚いた。


「なんてったって、秘密結社ですから!」


 山本さんがそう続ける。とうとう秘密結社になってしまった。話が大きくなってきた。


 恐れを抱いた。でも、さっきから感じていた不満が、ムクムクと膨れ上がった。コップから溢れる液体みたいに。私はいつも我慢していたのに……。


「うわあー!」

「わっ。どうしたの呪忌夜?」

「コボルトのいたずらかしら?」


 やってしまってから、冷静になった。緑ちゃんを驚かせちゃった。一寸先は闇だ。


 山本さんは、ゆっくりとしたしゃべり方で、落ち着いている。大人のフェロモンがすごい。着ている洋服は普通だし、赤いエプロンだし、なのに、エッチな妖精が化けてるかも知れないから……、コボルト?


 二人は私を、「分かってます」って感じで見ている。母性の強い、女神様のような顔をして私を見ている。やっぱり納得いかない。


「初々しい」

「実は私にもあったのよ」


 それから、遠くを見上げてるような感じで、二人とも違う世界を見はじめた。


 なんだー?


 ~○


 ガイア仮説というものがある。


 当初「自己統制システム」と命名されて、それから、ギリシャ神話の女神ガイアにお名前を借りて、ガイア仮説と変更されたものである。


 あくまでも私の知る限りでは、地球を一個体の生物とみなし、そこで繰り返されるシステムを巨大な生体活動の一環として捉えるという。私たちの住むこの地球という惑星は、実は、“地球さん”だったという話である。例えるなら──


「先輩にタメ口とか、普通あり得ねえよなー?」

「あっ、どうもー地球先輩。こんちわーッス」


 という感じで、もしかしたら関係性だったり、ボスなりの思惑があるのかも知れない。


「管理してて、とりあえず思うのがソレ。あと最近、調子くれてるよな人類? 尊敬足りてねえよな? とりあえず、お前らもしかスッと最近、根性たりてねえか? 気合い入れてやろうかー?」


 という感じで、この『チーム・地球☆』の活動内容に憤懣やる方ない思いを抱え、『世界‐Online』という超巨大コンテンツにおける、“地球サーバー”の管理を、まるっと地域のまとめ役の如く取り仕切っている、とにかく大変な御方なのである。敬え。人類には逆立ちしても認識出来ない、そうしたレベルの決定権を持つ御方なのである。


「すんません。いくら知的生命体だからって最近、調子に乗ってましたわー。ふへへ。それに引き換え地球先輩、マジ、キレッキレっスよー。輝く御大! その威光たるや半端ないッスー! 先輩ってもしかすっと唯一無二ッスか。マジかー!? 尊敬。憧れるわー。よっ、輝かしい我らの青き星、ばんざーい! ばんざーい!」


 個人のプライドとか関係なく、それくらいの気持ちを全力で抱くべきだと思います。やったところで別に減るわけじゃないので。みんなで幸せになりましょう。ハレルヤ。


 ちなみに、ガイア仮説というのは“科学的な理論”としては、人類の学術的理論として認められていないそうです。残念。


 地球システム科学、生物地球化学、システム生態学という分野の開拓、まるで木が育って枝の先が分かれしていくように、この世界への解釈の拡大に影響をもたらした学説だと思うので、興味を持つ人がきっと今も研究してくれているというのが純粋に嬉しい。


 可能性を見通していくという過程で、選択肢を認めるかどうかというのは、どうしても難しい。


 なぜなら、確信を覚えた次の瞬間にはもう、変わってしまっているかも知れないから。この世界は、人類が目安にしている”記号“だけではまだ図りきれない何かなので、だからこそ計り知れない。確かなことを解き明かすなんて、いったい、どうしたら出来るのだろう。


 それは善悪ではないし、正しいか間違いかという話だけではないので、基準となる目安にすら疑いを覚えてしまう。定まらない。あるのかどうかも分からない“真実”に従ったものでなくてはならない、なのにその、”真実“という目安すら図れない。そんなんでいったいどうしろというのか?


 当選、そこに世論なんていうものは介入できない。世間一般の解釈は、あやふやで論点が定まらないから。そもそも、人間の脳に写し出される認知度と、自然環境の法則性との間には、情報量という壁がある。良いか悪いか、善か悪か、白か黒か、そういう話ではなくて前提条件が違う。


 でもそれを認めるのは難しい。まず、みんなが納得しないといけない。とりあえず、社会性の存在としての性質が、欲求を満たしてくれるものでないと受け入れにくい。


 ガイア仮説の正当性はともかくとして、“分からない”とか、“判断する”ということに対して、息苦しいものを感じる。


 呪忌夜ちゃんが、「なんだかよく分からなくなってきた」って顔をしているけど、私はけっこう調子が出てきたから、話はまだまだ続く。


 ある種の欲求に従って、「さあ、解き明かすぞ!」と、衝動に駆られた学者さん達によって、世界が解き明かされてゆく。学術的な知識は我々にとって必要だ。誰がなんといっても、私は絶対に必要だと思う!


 だから、ガイア仮説もその一環として、人の世に提唱されたのだろう。そんなわけで、私はこの仮説が控えめにいって好きだ。


 地球先輩は最高! 凄い! 尊敬! 輝く青い星は伊達じゃない! なんなら最寄りのコンビニにひとっ走りいって、表面の溶けていない新鮮なメロンパンと牛乳を買って、可能な限り速やかに届けましょうかって。なんなら、期間限定の“なめらかプリン”も献上するべきではないだろうか。


 ところで、私たちはいったいなんなんだろう?


 毎日じゃないけどたまに、一日を振り返った時なんかに思う時がある。嫌な気持ちではない。


 ──ありがとうございます。


 そういう気持ちの時に。反応は期待していないけど。


 それでもし感激した地球さんが、地震とか、雷とか、火事とか、親父(ゼウス)とか、そういうので返してくれたら困るからだ。


 地球先輩からしたら「ほんの気持ち」、くらいのことかも知れないけど、我々からしたら死活問題になる。


 もしかしたら、地球さんから見たら私は、微生物みたいに存在するシステムの一個体なのだろうか? だとしたらとても誇らしいし、自分のいる惑星に親しみを覚える。


 ──どうもこんにちは。地球に生息する微生物のお姉さんでーす。どうぞよろしくお願いしますー。はい、拍手。パチパチパチ。


 小さなお友達や大きな友達と、これから過ごす毎日がなんだか、楽しいものになっていく気がする。


 無意識に、生き物たちがお互い、生きやすい環境を作っていく。ミクロとマクロ。調和した世界のバランスを取り合っている。さらに私のからだのなかでも、からだを構成する一つ一つのバイオメカニクスが、きっと、私という星をかたちにしてくれる。


 私はこの世界のエトワール。この世に生まれてきたことが嬉しいです。


 とにかく理想と現実の──そもそも、現実とバーチャルの区別ってなんだ?


 今のこの世界のバランスを保つためには、地球上に生息する生き物の存在が不可欠なのかな? そして、増えたり減ったりするたびに、世界に目まぐるしい変化が起こっている……。


 私の頭ではまだちゃんと把握できていないから、ぼんやりした想像にしかならないなぁ。


 全ての命の都合で、この世界が成立しているという。もしかしたら私も、自分の都合で、地球上の大気をコントロールしていたりするのかも知れない。


 エトワールはやはり格が違った。えっへん。


 そうかなるほど。そうだったのか。この世界はもともと、ただの混沌で、そこにガイア様が現れて。


 原初の神様。


 ただの混沌であったという、かつての世界。それはあまりにも寂しい気がする。だからこの世界は、誰かを求めたのではないかと、混沌無形(荒唐無稽)な想像をしてしまう。一人ぼっちは嫌だからなぁ。


 そう、あれはまだ私が大学に入学したばかりの頃だった──

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