資料24_2:一次調査員(ID_31769)による初回面談記録

記事作成日:1989年12月29日(金)/ID_31769

最終更新日:2023年10月13日(金)/ID_00013

電子移植日:2022年4月4日(月)/ID_22967



■音声データ(mp3形式)

総時間24分35秒。

前半9分41秒のみ再生可能。

以降は音量レベルを0に上書きされており、再生不可。

※1 [関連記事0024_2]より音声データの再生を禁じる。

※2 やむを得ず再生が必要な場合、後述する各種申請の後に実施すること。


■動画データ

無し

※一次対応時は職員、来所者双方の保護の為、監視カメラ作動の居室で応対する決まり。当時の保存データは明らかに一部削除されている。当時の監視カメラのデータ保存先は冗長を組んでいない簡易的なシステム構成だった為、復旧不可。


■【厳守】音声データ再生の際に必要な申請

1. 音声データ持ち出し許可(卜部宛)

2. 精神除染/レベル5(衛生部宛)

3. カウンセリング(健康保全部宛)

※ [2. 精神除染/レベル5]及び[3. カウンセリング]は音声データ再生当日に合わせて実施申請すること。


■一次調査員による24号との初回面談記録

以下は本記事の電子化に伴い、文字起こししたもの。



(雑音)

(雑音)

声1(女性):(雑音)ここまでは何でいらっしゃったんですか?

声2(女性):タクシーです。(そうでしたか)女性ドライバーを見つけるのに苦労したので、遅くなってしまいました。

声1(女性):そうだったんですね。(はい)お疲れかとも思いますので、無理のない範囲でお話出来るところからお聞かせくださいね。

声2(女性):ありがとうございます。(雑音)

声1(女性):(雑音)それで、えーと、今日は山梨さんからのご紹介ですか?

声2(女性):はい、ここに来れば安全だと言われたので。

声1(女性):安全、と仰いますと?

声2(女性):えっと、元基がそう言ってたんですけど、違うんですか?

声1(女性):いえ、えーと、そうですね。此処には限られたものだけが出入りできるので、そういう意味では安全だと思います。(じゃあ大丈夫ですね)あー、ちなみに、山梨さんが安全と仰った時はどんなやりとりをされたんですか?

声2(女性):うーん、そうですね、困ったことがあれば此処に行けばなんとかなるって言ってました。(なんとかなる、ですか)はい。だから此処に来れば大丈夫かなと思って。

声1(女性):そうだったんですね。(はい)先ほどの受付ではとにかく疲れた、とも仰っていたようですが(はい)何か困っていらっしゃるんですか?

声2(女性):その、とにかく、見られることに疲れてしまって……。

声1(女性):見られる、ですか。

声2(女性):はい……その、(ええ)特に男性からの目線が気になっていて……。(うーん)でも、元基はそういうものだから仕方ないって言ってました。

声1(女性):男性から見られることが気になっていらっしゃるんですね。

声2(女性):はい、そうです。前はこんな風じゃなかった気がするんですけど(前は)なんですかね、気がついたら自分がそうなってしまったようで。

声1(女性):んー、それは、何か変化があったということですか?

声2:うーん、変化というか、これも教えてもらったんですけど。(ええ)私、与死らしくて。

声1(女性):え、っと……与死ですか?

声2(女性):はい、えっと、あの……。

声1(女性):あ、ごめんなさい。すみません。その、与死の方にお会いするのが初めてなので、驚いてしまって。

声2(女性):ああ……そうなんですね。

声1(女性):えっと、与死だとは山梨さんが仰ったんですか?

声2(女性):はい、元基がそう言ってましたし、(うーん)元基のことも私が殺しました。(え)与死ってそういうものですよね?

声1(女性):あ、あの、……山梨さんは行方不明だと聞いていますが、その、今は……。

声2(女性):あ、はい、そうですよね。(雑音)えっと……これ、元基です。(これが)はい、と言っても元基の一部ですけど。(ああ)全部は掻き集められなくて……。あの、この意味、此処の方なら分かるんですよね?

声1(女性):……ええ、……分かります。

声2(女性):あ、あの! 元基、本当に苦しそうでした! なんていうか、辛そうで、私にしか出来ないことだからって! それで、(雑音)(あ、大丈夫ですよ!)それで、私が殺したんです! (落ち着いてください!)(雑音)でも、でも! 与死と非死ってそういうものなんですよね!? (雑音)

声1(女性):(雑音)大丈夫、大丈夫ですよ! 一旦座りましょう?

声2(女性):う、うう……(啜り泣く声)すみません、すみません、私。

声1(女性):大丈夫ですよ。大変でしたね。教えてくださってありがとうございます。

声2(女性):すみません、私、(うん)もう、本当に疲れて……。

声1(女性):うん、そうですよね。

声2(女性):すみません。……でも、私しか元基を助けられないって言われたんです。(うんうん)元基、助けて欲しいって……私、う、うう……(啜り泣く声)

声1(女性):大丈夫ですよ、(うう)此処には同じような方も所属しています。必ず力になれると思います。

声2(女性):うっ……私、……私どうしたら……。

声1(女性):大丈夫ですよ。

声2(女性):すみません。(いえ)本当にすみません。でも、あの、私、(うん)もう本当に疲れてしまって……。

声1(女性):そうですよね。教えてくださってありがとうございます。今日はこの時間だけにして、まずは此処でゆっくり休みましょうね。

声2(女性):はい、……休みたいです。

声1(女性):分かりました。ゆっくりで構いませんので、(はい)手続きの為にもう少しだけお話を伺ってもよろしいですか?

声2(女性):大丈夫です。お願いします。

声1(女性):ありがとうございます。では……(以降は無音が続く)

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