無駄をそぎ落とした濃密な文章にのめり込んでいると、不意にさしこまれる怪異。幾度となくゾクッとさせられました。
不安で不穏で怖い。故にもっと知りたくなる。
得体のしれない存在の描写が、真に迫り、かつ、洗練されていて、あまりに魅力的……。
気づけば、すっかり不思議な世界に引きずりこまれていました。
現在、作者様はこの大作の最終章を執筆中とのこと。
「終わってほしくない、もっと読みたい!」という気持ちと、「完結が楽しみで早く読みたい!」という気持ちが、せめぎ合っています笑。
それほどに素晴らしい作品です。
※本レビューは「産女」の章まで読了した段階で書いております。
どの章も、大変面白いのですが、個人的には「蛟」と「湖畔の幽霊」が特に印象に残りました。
「蛟」は静かで不思議で怖くて、更に味のあるキャラクターが登場するところがたまりませんでした。
「湖畔の幽霊」は、ゾクゾクしました。
今思い出しても背筋が冷えます。
現実と異界の境界線が曖昧な世界観、禍々しさと荒ぶる力強さをもつ異形の数々……
見てはいけないものたちに、好奇心から近づくエイミーと、それを諌めながらも付き添う響子。
この物語は、そんな大学生二人の心霊スポット巡りから幕を開けます。
このお作品に出てくる怪異は、慰めも憎しみも必要とせず、ただただ現象のように、天災のように圧倒的な存在感で描かれており、読み手は毎話固唾を飲みながら主人公たちの動向を見守ることしかできません。
逃げ惑う主人公たちの手の中で、静かに記録を続けるビデオカメラ。そこに記録されているものは果たして……
怪異をここまで悍ましく、暴力的に、そして歪で美しく描写されている作者さまの稀有な筆致に惹き込まれるのと同時に、怪異を通して見えてくる人間の業を引き摺り出すような、奥深いストーリーも必見です。
ぜひご一読ください。