第14話 キャラクターたちと集合とおさらいと
十五時、学園内のテラスにて。
招待した全員と、なぜか学園長であるセオとエルム先生まで集まって、私たちはテーブルを囲んでいた。
アンソニー、ジャレッド、セオ、エルム先生、リリーさん、私というメンバーである。
……多いな。
六人掛けのテーブルがいっぱいだ。
メルは黙々と給仕をしてくれている。まったく、できたメイドだ。
はからずも、原作乙女ゲーム「花と散るエデン」の主要キャラクターがけっこうな数揃ってしまった。
「……誰が、どんなキャラクターだったかしら」
誰にも聞こえないようにぽつりとつぶやく。
私は五人を見て、どういうキャラクターだったろうかと整理してみることにした。
★
まず、アンソニー。
アンソニー・ローレンス・フロリアン。
フロリアン王国の第二王子だ。
青い髪に碧眼.正統派イケメンといった顔立ち。
原作乙女ゲーム「花と散るエデン」の一番人気攻略対象キャラクターだ。
彼は、原作のシナリオからもっとも離れている人物で間違いないだろう。
原作で、アンソニーは貴族間の派閥の都合で無理矢理ローズ・シルヴェスターと婚約させられる。
それを不満に思い、学園でヒロインと恋に落ちるはずだった。
……だが、彼は自分から婚約を申し出てきた。
どうしてシナリオが変わったのかはわからない。
けれどおそらく、彼も人間だということなのだろう。
この世界は紛れもない現実で、アンソニーも私もここにいる人間だ。
なんのきっかけでどう変わるかなんて、誰にもわからない。
主人公がアンソニーのルートに進む場合、私――ローズ・シルヴェスターは国外追放となる。
婚約していたアンソニーに一方的に婚約を破棄され、追放されるのだ。
次に、ジャレッド。
ジャレッド・ケラヴノス。
ケラヴノス皇国の第一皇子だ。
フロリアンとの友好国であり、魔法に優れた者が多いといわれるケラヴノス皇国から留学にきている。
長い黒髪をポニーテールにまとめていて、鋭い金色の瞳をしている。
どこか陰のある美青年である。
原作では、「ツンデレクール系イケメン」としてアンソニーの次に人気があった。
ジャレッドは、出会ってからまだ間もない。
わからないことも多いけれど、笑い上戸なのは確かだ。
よく笑いをこらえて咳払いをしている。
箸が転がってもおかしい年頃というやつだろう。
無口なのかと思いきや、意外と変なところがツボに入って笑い出す。
面白い人だ、と思う。
前世で、彼のルートをプレイした覚えがある。
彼のルートに進むと私は殺される。
ローズ・シルヴェスターは自分を選ばなかったジャレッドとリリーを逆恨みして襲うが、返り討ちになるのだ。
次に、セオ。
セオ・タイム・フロリアン。
彼は十二歳にして、フロリアン魔法学園の学園長を勤めている。
おかっぱにした銀髪に、くりくりとした赤い瞳。
絶世の美少年と言っていい外見をしている。
原作乙女ゲームでは、「美少年枠」として一部のお姉さまがたから根強い人気を誇っていた。
セオは、意外と年相応の子供らしいなと思う。
私が芋を焼いて持っていくと、喜んで食べてくれた。
テーブルについている彼の表情は、わくわくしている子供のものでしかない。
彼のルートに進むと、私は国を脅かした悪女として処刑される。
セオに相手にされなかったローズ・シルヴェスターは、国家転覆を企んで失敗するのだ。
次に、エルム先生。
エルム・サイプレス。
サイプレス伯爵家の次男で、フロリアン魔法学園の新任教師である。
緑色の髪に眼鏡をかけていて、一見柔和なイケメンといった顔立ちをしている。
「穏やか年上お兄さん」「ママみがある」というファンの声に応えて実装されたキャラクターだ。
穏やかな先生だが、中身は鬼教師だ。
私が魔力のコントロールを完全に覚えるまで、魔力を何度も流してきたっけ。
あのときの笑顔は悪夢に出てくるほどだった。
しかも人を鍛えるのが趣味らしく、本当に鬼の特訓を課された。
――まあ、学園にきてからも石窯を作ってくれたり、なにかと目をかけてくれる気のいい先生ではある。
彼のルートに進むと、私は魔物に食われて死ぬ。
ヒロインに魔物をけしかけようとして、逆に餌になるのだ。
最後に、リリー。
リリー・ブロッサム。
彼女は聖属性の固有魔法を持ち、平民出身ながら伯爵家の養子として学園に招かれた。
この世界――「花と散るエデン」における、主人公である。
桜色の髪に同じ色のまんまるい目をしていて、小柄で華奢な身体つき。
前髪を伸ばしているが、まぎれもない美少女である。
彼女が順調に攻略を進めると、ローズ・シルヴェスターは魔物に取り憑かれる。
膨大な魔力を苗床にされて、ラスボスになってしまう。
あげく、逆ハーレムルートでは魔力を費やしすぎて衰弱死するのだ、
一番避けたいルートである。
……あれ、でも。
彼女は、成績トップで新入生代表挨拶を務めたけれど。
原作にあんなシーン、あったかしら?
原作乙女ゲームをプレイしていた記憶が蘇ったのは十歳のときだ。
記憶の行き違いといえばそれまでだけど……。
「うーん……どうだったかしら……」
「こちら、ローズ様が焼いた芋でございます」
「あら、もうそんな時間?」
芋。
そう聞けば黙ってはおれない。
私は先ほどまで考えていたことをきれいに脳味噌から消した。
「美味しいですわね……!」
私は満面の笑みで、熱々のサツマイモにかじりつくのだった。
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