第6号 階段のない世界

(旺文社標準国語辞典 第七版)より

かいだん【階段】

(名)

❶上や下の場所に行くための段になった通路。「―をのぼる」

❷順序に従って進む地位・段階。「出生の―」


   ***


街に出ると、少し不可解な光景を目にする。

階段とエスカレーターが同時に並んでいるのだ。この光景は至る場所で確認出来よう。駅、ショッピングモール、イベント会場など公共施設ではありふれた光景だ。しかし、あまりにも奇々怪々である。どっちか片方さえ作ってしまえばいいものだと思ってしまえばと。エスカレーターならば、エスカレーターを。階段ならば、階段を。なぜ、わざわざコストをかけて2つの手段を持たせてしまうのか。多くの利用者はエスカレーターを利用する。そうすると列ができ、なかなか前に進むことはできない。それを待つことが出来ぬせっかちの人のために作るというのか。ならば、階段のみを作って一定の速さで動かないようにすればよい。


では、バリアフリーの観点からだろうか。うむ、確かになくもなかろう。しかし、それよりももっと暗い理由がある気がしてならぬ。そして、その暗いものとは自動化に対する人間のプライドの表れではないか、と思ったのである。昨今はAIによって自動化が進んでくる。その中にも幾分か人間のプライドが見え隠れする。自動運転では必要もないのにハンドルを付けてしまっているように。これは安全の観点から来るものだろうと予測できる。


であるならば、エスカレーターと階段にもいえよう。人間のプライドを守る安全装置として階段が残っているかもしれない。階段がなくなり、エスカレーターのみになった世界は、きっと人間のプライドがからっきしなくなった全自動の社会であろう。


以上、2点の語釈を“大学紀行辞典”に採用とする。

かいだん【階段】

自動化に対する人間のプライドの表れ。エレベーターと共にあることが多く、エレベーターのみになった

とき人間のプライドがからっきしなくなった全自動の社会であろう。「今日は-を使おう」


えれべーたー【エレベーター】

人が自ら移動することをさせなくなるもの。階段と共にあることが多く、エレベーターのみになったとき人間のプライドがからっきしなくなった全自動の社会であろう。「田舎には―が少ない」


― 2024年12月某日 最近、階段を使っていないことに危機感を持ちながら ―

※参考文献 

『旺文社標準国語辞典 第七版』

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