異世界小料理店「隠れ屋ポプラ」~人間と魔族とおじいちゃんの14日間の物語~

美堂 蓮

小料理屋「ポプラ」のご紹介

一人の男が扉を開けて、お店に入って来た。


「・・・ここはどこだ?」


周りの物が不思議なのか、キョロキョロしながら入ってくる。

お店はカウンター席のみで4席しかない。

壁には大きな時計がかけられており、

その下には日付の大きなカレンダーが貼ってある。

そして、現在は11月17日まで大きな×が書かれている。


カウンター奥にはすらっとした身長で白い割烹着を来た女性が料理を作っていた。

そして男に気づいたのか包丁を置いてから、話しかけた。


「いらっしゃいませ。どうぞ、お席に」


言われるがまま、男はカウンター席の真ん中に座る。

そして男は女性に尋ねる。


「色々聞きたいことは山のようにあるんだが……ここはどこなんだ?

 家の中に急に扉が現れたから入ってみたが……」

「ここは異世界小料理屋『隠れ屋ポプラ』という場所です。

 このお店は様々な場所と勝手につながるようになっております。

 とりあえず、初めて来店された方はこの紙を必ずご覧頂くことをお願いしております」


そう言うと、女性は一枚の紙を男に手渡す。

男は手渡された紙を読んでみた。


◆◆◆◆◆◆


『隠れ屋ポプラ』へようこそ


ここは異世界の様々な場所とつながっている小料理屋となります。

下記はこのお店のルールとなりますので、お守り頂きながらお楽しみくださいませ。


1.この店は『隠れ屋ポプラ』です。扉が現れた際は遠慮なくお入りください。

1度に入店できるのは最大4人までとなっています。お一人でのご入店も可能です。

扉はいつ、どこに現れるかは誰もわかりません。


2.料理はご指定いただけません。基本的に女将のおすすめ1品だけとなっております。お酒はご注文いただければ提供は可能です。日本酒に関してはボトルキープも可能ですのでおっしゃってください。料金は、一人当たりその世界で銀貨1枚となっております。


3.ここでしかお話できないこと、ご自由にしてくださいませ。もちろん、女将は他のお客様にお話の内容を一切お話いたしません。ただし、他のお客様のお話も出来かねますのでご了承下さい。


4.暴力沙汰など女将が悪質だと判断した場合は、いかなる場合においてもその場でこのお店から退店及び入店禁止措置をとらせていただきます。


5.このお店にはお客様の忘れ物はお許し出来かねます。万が一忘れ物をされた場合はその忘れ物をされた方、つまりこの店の女将と共にいる方は二度とこの店に立ち入れませんので、ご容赦下さいませ。


以上となります。

ぜひこのお店の料理をご堪能下さいませ。


◆◆◆◆◆◆


男は目を通して紙を置いて女将の方を向く。


「つまりここは異世界の料理屋で、隠れ家的に使える店ということか?」

「その通りです」

「そして、その内容について女将は絶対誰にも話さないと」

「もちろんです。今ここであなたがお話している内容も、他のお客様には一切お話いたしません」

「なるほど」


男は頷いた。

そして紙を指さしながら尋ねる。


「この5番目はどういうことだ?どうして忘れ物に対してそこまで厳しいんだ?」

「その昔、この店の話を盗み聞きしようとしたものがいまして……ビデオカメラやレコーダーを置いて帰った方がいらっしゃったため、このような形をとらしていただいております」

「びでおかめら?れこーだー??」

「つまり、映像や音声を取るものをわざと置いていたお客様がいたということです」

「ふーん。そんなものがあるのか」


男は物がイメージできていないものの、納得したようだ。

女将は男に対してニコッとして、作っていた料理をお皿に盛り付けた。

そしてそのお皿を男に渡す。


「とりあえずどうぞ。本日の一品となります」


男はお皿を受け取った。

お皿には人参、ジャガイモ、糸こんにゃく、玉ねぎ、牛肉が見える。

肉じゃがのようだ。

ただ、男にとっては見たことが無い物しかないようで、かなり不思議そうな顔をしている。


「女将……信じていない訳でないが、これは本当に食べ物か?」

「もちろん。ぜひご賞味下さい」


男は恐る恐る食べ始める。

食べて数口すると、笑みがこぼれる。


「おいしい!!女将さん、初めて食べたけど、とってもおいしいよ!!

このホクホクしている奴って何?」

「これはジャガイモといって.......」


男は女将と肉じゃがについて語り始めた。



さて、このお話は隠れ小料理屋「隠れ屋ポプラ」のとある14日間のお話となります。

今回の男は、、、明日からの14日間のお話には全く出てきません。ご容赦下さい。

では明日から14日間、毎日昼すぎにお会いしましょう。

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