吹雪
基本的に雪を作るのは楽しいウィンテルでしたが、一つだけつらいことがありました。それは、年に何度か吹雪を起こさなければいけないことです。
風が強く雪の量も多い吹雪は、住民たちに歓迎されません。大地は深い雪に埋もれて動きにくくなるし、時には雪の重みや強い風に吹き飛ばされて壊れるものも出てきます。下手をすると、死んでしまうことだってあります。
「それでも、作らなければいけないのよね……」
フラスコを冷やしながら、ウィンテルは嘆息しました。住民たちに迷惑をかける悪天候などなくなってしまえばいいとは思うのですが、これは自然のこと、彼らに優しいだけではいけません。そしてそんな自然に従わなければいけないのも、魔女の役目なのでした。
自然を操る魔女たちですが、なにも自由気ままに操っているわけではありません。きちんとした規則があり、それを守らなければなりません。時にはこうするようにと〝指示〟が下ることもあります。その限られた自由の中で、魔女たちは住民たちに被害ができるだけ及ばぬよう気を配るのです。
だからこそ、魔女には優秀さが求められます。少しの手違いで、大惨事になってしまうこともありますから。
「嫌だったらやらなければいいのに」
白梟はのんきに言います。相変わらず面倒くさがりなビノをウィンテルは睨みつけました。そうできたらどんなにいいか。
「そういうわけにはいかないの。お仕事なんだから」
そう答えながら、しぶしぶウィンテルは雪を作ります。気の進まない仕事ですが、ウィンテルの仕事はどんなときも丁寧。今日もまた、いろいろな形の綺麗な結晶ができていくのでした。
数日後。
ひゅおおぉぉ……と強い風の音が聞こえてきます。雪がすごい勢いで大地を埋めていきます。いつもはビノに手伝ってもらって雪を降らせていますが、吹雪の時は彼の手を借りず、風に乗せて降らせているのです。強い風の中、ビノを飛ばすのは大変無理がありますから。
降らせるのは風に任せっきりで、ウィンテルは吹雪の様子を塔の窓から見ていました。暖かい部屋、手には湯気の立ったジンジャーティー。暖かいところにいるからこそ、外の寒々しさを感じます。
「このときばかりは、春が恋しいっていうのもわかる気がするわ」
風が荒れているのを見るだけでつらく、雪が煽られているのを見るだけで悲しくなります。明日の雪かきを懸念する人は多いことでしょう。もしかしたら、木や建物が壊れることも心配しているかもしれません。そうするとみんな、早く春が来てほしいと願うのでしょう。冬が好きなウィンテルも、今だけはなんとなくその気分が分かる気がするのでした。
冬の魔女らしからぬ発言に、テーブルのクッキーの滓を突いていたビノは肩(?)をすくめます。
「冬の魔女がなにを言っているんだか」
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