第2話 不自然な物語と新説

 1話の最後と重なりますが、あくまで矛盾しない様にシナリオを考えてみました。新説に関わる部分を考察してから、新説を書こうと思います。 


 まず気になるのが、物語根幹に関わる遺跡が高性能過ぎる点です。この遺跡は石板をはめることで、エスタード島の過去にいけるものです。過去を変える事ができ、変えた事は現在にキッチリ反映します。また、同じ場所に何回か入った際、明らかに過去の時間の経過速度の方が早い描写があります。したがって、過去の時間を圧縮して出来るだけ遠い過去に行き来できる様にしているものと思われます。

 そこまで破格の機能を持った遺跡が、石像に「旅立ちたい」という強い意志を示すだけで封印が解けてしまう。しかも石像との距離を示すものがない。恐ろしい事になりそうです。


 では何故そんなモノがあるのかというと、恐らく「結構簡単に詰んでしまう世界」にあるのではないでしょうか。憎しみに染まっただけで魔物化する世界なので一人魔物になったら案外アッサリいってしまいそうです。この遺跡を作ったのは、ほぼ間違いなく「神」でしょう。


 次に気になるのは、初めて過去に行って最初に出会ったマチルダの発言が明らかにおかしい点です。

 キーファは最初にグランエスタードの王子と名乗り、「ついでに」といった感じでアルスとマリベルを紹介しました。これだけ聞くとリーダーはキーファという事になります。しかしマチルダは「アルスさんたち」や「マリベルさん」と呼ぶもののキーファの名前は一度も出してなかった様に思います。(間違ってたらスミマセン)これは不自然です。(ただ嫌われてただけかも…)

 そして彼女は「エスタード? まさか」と言い、「家に帰りたい」と言われた時、「あなた達はすぐには帰れません」と答えている。彼女は最後の方で「封印の鍵は私の命」といっているのでこの時点で自分の運命を悟っていた事がわかるのだが、エスタード島は当時、無人島だったのでそこにというのはあり得ない。しかも最初に出会った森の奥から帰れると知っていた。つまりキーファ達が未来から来たことも知っていた事になる。

 彼女は、英雄の妹で魔物化していたとはいえ、「ただの村娘」です。彼女を魔物化させた「あのお方」から知らされていたのは明白です。

 

 ではあのお方とは誰かというと、該当する人(神?)物は少なく、神、精霊、主人公達のいずれかになります。ただこの時点で、未来のエスタード島に人が住んでると言い切れるのは…


 余談ですが、「マリベルさん、花の種ありがとう。うれしかった」と言った時、

「キーファとマチルダ、チェンジで」との心の声が聞こえました。…続きます。

 

 ところで昔、美の女神であるビーナスは実は醜女だと言った人がいました。なんでも、美しくあろうと努力する神=現状美しくないということらしい…。

 この理屈でいくと、ダーマの神殿で人間の能力を吸い上げていたオルゴデミーラは弱い魔王だという事になる。実際、彼が明確に自身の手を下した場所はほとんどない。逆に言えば、彼自ら出てくる時は、それだけ重要な事と推測される。ただ神との直接対決ならわかるが、なぜ海賊「マールデドラゴーン」を凍結させ封印する必要があったのだろう?配下の魔物を使って物量で潰すか、船自体を破壊して沈めた方が手っ取り早い気がする。


 

 ここまで書いた事に矛盾しないエピソードとは………一箇所だけあるんです。キーファがオルゴデミーラになってもおかしくない場所が…

 

 それは物語が始まる少し前、エスタード島の遺跡です。


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 平和だったエスタード島に爆発音が響く。

戦艦からの砲撃だった。火は瞬く間に燃え広がり落城も時間の問題だった。王は囮として城に残り、息子達を逃す決断をする。

 


少数の兵士に連れられたキーファとリーサは、船で脱出すべくフィッシュベルに向かう。しかしフィッシュベルは既に制圧されていた。

 やむを得ず北にある遺跡に逃げ込む。色々試してみるものの、遺跡が開く気配はない。そうこうしている内に、敵国兵士に追い付かれる。


 次々に倒れる兵士達。遂にキーファにも刃が迫る。その時、リーサが敵兵士との間に割って入った。


      「逃げて…


   それが彼女の最後の言葉だった。

 

 その時遺跡の封印が解ける。

  

 しかし、その時既にキーファは魔物になっていた。彼は兵士達を全滅させた後遺跡に潜る。


   と言った感じでしょうか。

 

 これだと大体の説明がつきます。なぜエスタード島だけ生き残ったのか?遺跡の力を使って封印したから、遺跡があるエスタード島の封印は不可能だった。過去から時間をさらに圧縮して、現在から切り離す。もしくはその場所のみ、星の寿命が尽きるまで時間を経過させる。そのために人々の絶望が必要だった。そしてエスタード島以外が封印されれば島の滅亡がなかった事になる。つまり物語が始まる直前の状態が彼が望む世界だった。


 そうだとすると、ウッドパルナの「あのお方」はキーファという事になる。

 

 「兄を見殺しにされた妹」を「目の前で妹を殺された兄」が闇落ちさせる………純粋な魔物に言いくるめられたというより、リアリティはあるが……


 ただ、この説は、海賊を氷漬けにしたのはエスタード島を攻めたのがコスタールだと仮定すれば、わかりやすい。仮にコスタールと海賊を同時に封印したら解除された時エスタード島が滅ぶ。海賊のみ封印の解除を遅らせれば、コスタールは海洋国家ではなくなる。つまり攻める理由も手段もなくなる。(エスタード島は海運の中継点としては立地が良い)さらに海賊を封印してから、コスタールが封印されるまで、時間があるのでエスタード島に戻る事もできる。


 全てを封印した時キーファが魔物化する理由がなくなるので、エスタード島に戻った後人間に戻ったと思う。ただ、この説だと、封印を解いていくと、魔王としての記憶や力が戻ってくる可能性がある。ユバールの民が残っているところを見ると、アルス達と別れた後ある程度歳をとったあたりで、徐々に魔王化、出て行ったか、追い出されたのではないか。ただこの場合、アルス達とのラストバトルで仮にラーの鏡や呪文を使って元に戻したとしても、既に人としての寿命はとうに過ぎているので助けるのは不可能である。ただ一瞬だけキーファの面影を見ることはできたかもしれない。


 結論としてキーファ=オルゴデミーラ説は、ただただ悲しい物語になる。精霊の一人がオルゴデミーラになったとしておいた方が無難かもしれない。

 


 最後になぜキーファは家族に別れの挨拶もせず過去に残ったのかを記して終わりにしようと思います。


  彼が家族別れの挨拶が出来なかったのは、ユバールの民の残念な戦力にあるのではないでしょうか。ただでさえジャンのトゥーラ頼りなのに彼は出て行ってしまった。この状態での最大戦力はライラの父なのだが、怪我が治っているか微妙だし、そもそもキーファより弱い。この時点でキーファが現在と過去の時間の流れが違っている事を把握しているかは判らないが、仮に現在に戻ったとして、妹辺りから「一晩だけでも泊まっていって…」とか言われたら断れなかったと思う。その後戻っても過去ではそれなりの時間が過ぎていて合流できたかは、かなりあやしい。少なくとも結果だけ見れば、彼の判断は正しかった。

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ドラ◯エ7 キーファ=オルゴデミーラ説の考察と新説 もーさん @pipi-kiki

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