第3話 夕日の約束

俺は、淳子ばあちゃんと商店街に来ていた、しょうへいさんと淳子ばあちゃんがよく行っていたと言うデートコースを回る事になった。まず行き着いた所、そこは、意外な場所、ゲームセンターだった、音楽が大音量で鳴り響き、色々な種類の機械が立ち並んでいる。

「淳子ばあちゃんさー、本当にここで合ってるの?」俺は、疑う様に聞いた。

「合ってますよ…コンガの達人の記録保持者ですよ…ホホホ」

 そう言うと淳子ばあちゃんは、コンガの達人の台へと足を運んだ、百円玉を二枚取り出し投入した。

「曲を選ぶポンッ」音声に従い

「ポンッ」

「この曲にするポンッ」

 音声に従い曲を選択すると台から音楽が流れて始める、曲名は、イケテル太陽と言う曲だった、数年前にヒットしたドラマの主題歌だ、淳子ばあちゃんは、凄い勢いで流れて来るターゲットに合わせコンガを叩く、それが、全てパーフェクト判定、俺は、少し引いてしまった。

「淳子ばあちゃんす…凄いじゃん」

「ふふっ」と笑っていた。

 俺もムキになりコンガの達人を皮切りにレーシングゲーム、シューティング、ユーホーキャッチャーで挑んだが全てにおいて完敗だった、

「淳子ばあちゃんバケモンかよ、はぁはぁ」

「最後は、あれにしましょうか…」と淳子ばあちゃんが指差す方向には、プリクラがあった。

「ちょっとそれは…恥ずかしい…かな」

「そうですか…良く一緒に撮ったんですけどねぇ…」

「…………゛あーもう分かったよ」

俺は、淳子ばあちゃんの手を引き、プリクラ機へと入った、こちらも音声に従い俺は、ぎこちなくピースや何個かのポーズをして数枚撮った、そしてお絵描きコーナーへと進み、淳子ばあちゃんは、プリクラに昌平♡淳子と描き込んでいた。ちょっと恥ずかしかったが淳子ばあちゃんの為だと我慢した。

 ゲームセンターを出て直ぐの所に、老舗のたい焼き屋さんで一服する事に、これがいつものデートコースらしい、老人のデートコースにしちゃ若いと思い、学生のデートコースっぽいなとも思った。

 たい焼き屋さんは、焼いている所を見れる様な作りになっていて、横窓から注文できる、俺も学校帰りに良く買い食いするから店のおっちゃんととも顔見知りだ、俺は、おばあちゃんを店のベンチへ座らせ注文をしに行く。

「おっちゃん!カスタード二つ!」

「あいよ!しょう!お前今日は、デートかよ?笑、青春だねぇ」

 おっちゃんが俺をおちょくってくる。

「やめて下さいよ!あのおばあちゃん知ってる?旦那さんとここに良く来てたらしいんだけど…」

「ん?」とおっちゃんは、窓から身を乗り出し淳子ばあちゃんを見る。

「しらねぇな〜一度来たお客は、全員覚えてんだけどな…」とおっちゃんは、頭を抱える。

「お客さん少ないもんね〜」

「そうなんだよ〜だから全員覚えて…ってしょう!お前!」

「へへっさっきのお返し〜」

「たくっ」

 俺は、おばあちゃんの隣に座った。

「淳子ばあちゃんお待たせ!あっ流れでカスタード二つにしちまった…カスタードで大丈夫だった?」

「大丈夫ですよ…私もいつもカスタードですから…」

 偏見かも知れないけど老人は、餡子の方が良いかと思った。

「おっちゃん淳子ばあちゃんの事知らないってさ」

「そうですか…いつも来てたんですけどね…」

 俺は、淳子ばあちゃんに、疑問を持ちつつ、たい焼きを平らげ公園のベンチへと戻って来ていた。

「淳子ばあちゃんどうだった?ちょっとは、楽しめた?」

「はい…ありがとうございました…本当に…こうやってまた二人でこの夕日が見れるなんて夢…見たいです」

 淳子ばあちゃんは、ポタポタと涙を流していた。

「どっ…どうしたんだよ淳子ばあちゃん!俺なんかしちまったか?」

「いいえ…本当に昌平さんなんだなって思っただけです…ふふっ」

「ん?」と俺は、首を傾げた。

「まぁ俺も昌平では、あるけどさ…」

「…ふふ…最後に一つだけ約束してくれますか?…」

「最後にって…怖い事言わないでよ…」俺は、おちゃらけていたが、おばあちゃんの顔は、至って真剣だった。

「淳子ばあちゃん…わかった…俺にできる事だったら約束するよ!」

「…私を…今までも…これからも…大切にしてくれますか?」

 淳子ばあちゃんからの告白…大分ヘビーだぜ…でも悲しましたくねぇし…゛あぁ…ごめんしょうへいさん一瞬あんたの代わり、させてもらうよ!

「おっ…おう!めっちゃ大切にするぜ!これ本当まじで!」

 淳子ばあちゃんは、ニッコリ優しく微笑みこう言った。

「………ありがとう……」

 何故だかその言葉だけは、俺に言われた…そんな気がした。淳子ばあちゃんは、何も言わず立ち上がるとスタスタと公園を出ようしていた。

「またか…淳子ばあちゃん明日も来るんだよなー!俺も来るからまた明日なー!」と離れた淳子ばあちゃんに伝えた、するとまた淳子ばあちゃんは、深々とお辞儀をした、俺も公園を後にした。


 そして次の日も同じ様に公園を覗いて見ると、ここ二日間、ベンチに腰掛けていた淳子ばあちゃんの姿は、どこにもなかった。

「今日は、居ねぇのか…」と俺は、残念がりながらベンチに座ると手に何かが触れる感触があった、見て見るとベンチの隙間に手紙が挟まっていた。

「何だこれ…」と手紙開ける。

「吉野昌平さんへ

昌平さんが亡くなってからもう三年…

長い様でまだそれだけしか経っていないんですね…

私と昌平さんが一緒に居た七十年は、もっと短かった気がします…

長年の癖なのか料理を作っていても二人分作ってしまいます…癖っていうものはなかなか取れないものですね…

またこうして昌平さんと再会する事が出来たのも家族の計らいがあったからです…感謝しかありません…

この時代の昌平さんからすれば、私は、少し見るだけ…と…思っていたのに、ただの見知らぬおばあちゃんに優しくしてくれるんですものそれは、甘えてしまいますよ…昌平さんが悪いんですからね…ありがとう…

私は、貴方のお嫁さんになれて…大変…幸せでした…

吉野淳子」手紙の端の方にツーショットのプリントシールが貼られていた。

「時代?まっさかー淳子ばあちゃん未来人?そんな訳ないだろ〜」とプリントシールに目をやる。

「今日撮ったやつか……ん?…ん⁉︎」

 プリントシールには、俺と同級生くらいの女の子が写っていた…そして、昌平♡淳子の文字が書いてある、もちろん俺は、撮った覚えがない…

「これ…淳子ばあちゃんだよな…?隣に映ってんの、どう見ても俺だしなぁ…んー」

 と俺は、考え込んでいると後ろで何かが倒れる音がし振り返ると女の子が転んでるのが見に入って来た。

「大丈夫ですか?」と駆け寄ると。

「ん?ん⁉︎」俺は、女の子の顔をまじまじと覗き込み、プリントシールと照らし合わせて見る。

「な…なんですか?」

「そう言う事か…うん!了解!了解!」

「あのー?」

「君、名前は?」

「えっ藍田…淳子…ですけど…」

「……………いきなりだけどさ……俺の嫁になってくれ‼︎」

「えっ?えっー⁉︎なななないきなり何言ってるんですかー!」

 淳子ばあちゃんがこの子と同一人物なのかそうじゃないのかなんて俺には、わからない…分かるのは、淳子ばあちゃんも昌平さんもお互いが大切な存在だった言う事…約束するよ淳子さん…貴女を大切にするよ…と俺は、夕日そう堅く誓ったのだった…

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俺の嫁さん ikki @Adgjkl33

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