13話 一晩で消えた『好き』~儚い恋心~

朝早く私は彼の家を出た。


冷たいドアノブに触れるのも、これで最後。そう思うと、不思議と静かな気持ちだった。


元カレと出会うきっかけをくれた共通の友達に連絡をした。

「今日会える...??お願い」


その日は正直何をしていたのか覚えてない。

洗濯をしたり何かしらして考えないようにしていたのかな。


午後4時、友達と会った。

顔を見ると安心して笑った。けれど次の瞬間、涙が溢れた。


「どうしたの?大丈夫?」

優しい声にますます堪えきれず、全てを話した。

「・・・・・・別れた。元カノさんから復縁の連絡が来たんだって。彼のこと好きだけど、将来が見えない人に『私を選んで』なんて無責任すぎて言えないし。でも、でも……同時に遊びだったのかなって思っちゃう。本気だったけど一時的なものだったのかも……でも、それはお互い様……か。」

思っていたことを全部言った。

今まで一度も友達の前で泣いたことなんてなかった。でもその日だけは、止められなかった。

友達は何も言わず、そっと抱きしめてくれた。

「……彼に君を泣かせたら許さない、って言ったんだけどな。……ごめんね。」


頭を優しく撫でられ、ただ隣にいてくれるその温かさに、少しずつ気持ちが落ち着いていった。


「ありがとう。来てくれて。もう、大丈夫!」

「ほんと??」

「うん!!なんか泣いたらすっきりした!」

「じゃあ、甘いものでも食べに行こう!元気でるよ!」

「やったー!食べに行こう!」


そして私たちはチーズケーキを食べに行った。


---------------------------------------------------------------------------------


次の日、驚くほど晴れやかな気持ちだった。


正直、自分でも信じられないくらい。


彼とはほぼ毎日一緒にいたから、自分の生活の一部だと思っていた。だから別れた後の自分は、胸にぽっかり穴が開いたような虚しさを抱えるだろうと思っていた。


でも……違った。


心が軽く、解放されたようだった。


その自分の感情に逆にショックさえ受けた。


えっ。私確かに彼の事本当に好きだったよね????

なんで??

将来が見えないから???元カノさんの存在が諦める理由になったから...??

恋愛感情ってこんな一時的なものなの.........???

こんなすぐになくなってしまうの???


一晩でここまで気持ちが冷めるなんて、正直ショックだった。


「好き」という気持ちがないと付き合わない。

その気持ちが付き合う上で自分の中で一番大切。

でも、将来が最初から見えない人とは、もう付き合わない。

好きだからこそ、大切だからこそ、責任を持てる恋をしたい。


そう思った。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る