結果

ツバキが買ってきた鈴カステラを口に入れた瞬間、カステラの甘さと共に奇妙な食感が口の中に広がる。

噛めばぐちゃぐちゃと音を立て、鉄のような臭いが広がっていく。

考えてはいけないのに、どうしても肉や内臓を思わせる。


「なんか真っ青だけど大丈夫か?」


ツバキはペットボトルのお茶を差し出す。

私はそれを受け取り、慌てて流し込んだ。

口の中にまだ、肉のような触感が残っている。


「何だったんだ、今の……」


袋の中を見ると、鈴カステラが人の顔となり、うめき声をあげているのに気づいた。気づいてはいけなかった。


『たすけて』

『あつい』

『いやだあ』


口らしき部分がもぞもぞと動き、言葉を発している。焦げた部分だと思っていたのは、潰された両目や鼻、耳であることに気づいてしまった。


大量の生首だ。小さくなった大量の生首が袋に詰められ、ごろごろと転がっている。


「何だこれ、頭⁉︎」


大声を上げ、後ずさる。ツバキは不思議そうにこちらを見ている。


「頭? 何言ってんの?」


「いや、お前、これどう見たって頭だろうがよ!」


心臓がギュッと何かに掴まれ、縮んでいくような感覚を覚える。

強烈な痛みに襲われた私を、ツバキは怪訝そうに見ている。


ツバキがどんどん離れていく。

いや、離れて行っているのではなく、私の視界が低くなっているのだ。


心臓だけではなく、手足や胴体がバキボキと音を立てながら、収縮していく。

言葉にならない何かを全身で叫び、体が変わっていくのを感じる。


ツバキはただ、その場で立ち尽くしていた。


やがて、手足の自由がきかなくなり、立つことすらできなくなる。

そのまま地面に倒れ伏し、助けを求めて伸ばした手は全然届かない。


「嫌だよ、ツバキ、助けて。助けてくれ……」


どうにか声を絞り出す。

それを聞いたツバキはあなたを抱え上げる。


「いいよ、分かった」


ツバキは祭り会場の外へ連れて行く。

あるはずの胴体や手足は消え、残されたのは頭だけだ。


気がつくと、ツバキの部屋にいた。

状況の整理が追い付かないまま、ただ抱きしめられる。


「ようやく、ようやくだ……これでずっと一緒にいられる」


薄れゆく意識の中、笑顔を浮かべていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る