アラサー男は二分の一の初恋を忘れる。

第44話 2年目のハロウィンイベント。

ハロウィンイベントは「何がなんでも来い」と十石石元成に言われ、「何がなんでも行きますよ」と真冬に言われた。


何その熱量、意味不明。

椿と言えば「行ってもいいのかなぁ」と言っていて、去年の小峰を気にしているようだった。


「小峰か?構わん。行くぞ椿。堂々とパスで入り、なにも知らない俺が十石石に作らされたパネルの前でパスを持ちながら写真を撮るぞ」


このやり取りに真冬はガッツポーズを取っていた。


「なんだ、真冬も小峰を気にしてくれていたのか、当然コテンパンだ。見かけたらパスを見せびらかしてやる」

「はい。よろしくお願いしますねー」


そんなやり取りをしたハロウィンイベント当日。


俺はまたチラシを見ていなかった事を恨んだ。


【専用チケットをお持ちの大人の方は仮装できます】


「やあ!真冬ちゃん!椿ちゃん!」と出迎えた十石石元成は、「さあ、奏。更衣室だ」と言ってきた。


「は?」

「お前、今年も読まなかったのか?」

「お前が15校もやらすからだ馬鹿野郎。なんの話だ?」


聞けば、去年は子供のみの仮装で、ご意見箱ではないが、運営には大人も仮装したいというご意見を貰えたので、今年は会場を大きくして、更に更衣室を用意して、大人も仮装できるようにしていた。


椿は去年魔女だったので、今年はカボチャのジャックオーランタンの被り物が用意されていた。

まあ可愛いが、カボチャのデカい顔から頭と手足を出す椿は恥ずかしくないのだろうか?


「ごめん真冬ちゃん。手違いで真冬ちゃんに用意していた魔女コスがお客さんの所に行っちゃったらしいんだ」

「いいですよー。来年着ますよー」


ニコニコ笑う真冬が不憫な俺は、「おい、元成。今すぐに安さの殿堂で買ってくるか、俺の分とか言ってた奴を真冬に渡せ」と言った。


「返却されたらすぐに渡すから待ってくれよ。予算カツカツだから無理だよ」

「なら俺の分があるんだろ?ドラキュラか?真冬なら似合う。それを渡してやれ」


ニヤリと笑った十石石は、残念そうな顔で「すまんな元成。いくら真冬ちゃんでも着こなせないんだ」と言う。


「何を用意した?」

「ミイラ男だ。メイクもしてあげるからな」


なに?

ミイラ男?


「それ、ただ包帯で巻くだけだろ!?」

「いやいや、キチンと売ってる奴なのさ」


服を着替えさせられて気づいたが、周りの奴らは普段着の上にマントを羽織るくらいだというのに、俺だけ更衣室も運営の奴らが使う所に入れさせられて着替えさせられた。


顔は血色悪い色に塗られて、外に出ると「うぉ!?」、「すげぇクオリティ」なんて言われるし、真冬からは「ひと目で奏ってわからないや」と言われ、十石石元成は「やはり、このクオリティをやるとトラブルになるな、来年も羽織物でいいや」なんて言われてしまう。


だがまあ、これでパネルの前でパスを持って写真を撮るミッションをこなし、後は椿を満足させるだけになった。


「今年はもうわかる。仕事に戻れ元成。真冬の衣装がきたら電話をしてくれ」


そう言った時、運営の人が十石石元成の元に来てトラブルだと言う。


「元成?」

「気分が悪くなった親子連れがいたみたいで、親御さんが休んでる間、運営で面倒を見れないかとなったんだ。でもこの混雑で人は削れないし」


十石石元成は運営の人に「お子さんって何歳?救護室で待つのは?」と聞き、「4歳の女の子で、多分難しい感じです」と返される。


これを聞いた真冬と椿は黙っていないで、パスを見せながら「運営側ですよ」、「私と真冬お姉ちゃんで見るよ!」と言い出す。


「俺は?子供なら俺だろう?」

「…その見た目だと泣かれるよ?」

「うん。ダメですね」


俺は着替えてくると言ったのだが、真冬からは「いいから」と言われてしまうし、運営の人が真冬と椿を連れて行ってしまった。


残された俺を十石石元成が「奏はこっちだ」と言って、奥へと連れていく。


「何言ってんだ?椿が居なければ俺は楽しんだりしないぞ?」

「いいから、15校も付き合った奏に感謝してるし、普段からのお礼だ」

「お礼?何言ってんだ、仕事に関してそんな間柄でもないだろ?キチンと請求したんだから貸し借りなしだ」

「なら労いだ。今まで大変だった奏への労い。それが嫌なら真冬ちゃんという運命の相手に会えた後藤奏へのお祝いだ」


意味不明な事を口走る十石石元成は、強めに俺の腕を引き、奥へ奥へと進んでいく。

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