腹黒王子の叶芽ちゃん

壱日

プロローグ

第1話

季節は12月



「……瀬戸」


不機嫌そうな声で俺の名字を呼び

不機嫌そうな顔で家の2階から降りて来る


1つ年上の俺の彼女 相馬 叶芽(ソウマ カナメ)



土曜の夕方から彼女の家に来て散々愛でた

本日は翌朝の日曜日




《いい加減名前で呼べよ》と言いたいトコだけど


叶芽が俺を名前で呼ぶ場面が限られている事に快感を覚えてるのも事実




そんな彼女と最初に出会ったのは俺が小1の頃


兄貴みたいに慕ってた人が怪我で俺の病院に入院した日だった


見舞いに来た俺と同じ状況で鉢合わせた






     正直、一目惚れだった



ランドセルも服も汚されてボロボロで

可愛らしい顔は弱々しく涙の跡のついてた

いかにも苛められてますって彼女だった


なんとなく守ってやりたくなって


  《俺が結婚してやってもいいぞ》


初めて告白じみたプロポーズを


《お兄ちゃんと結婚する》


速攻で跳ね除けた女だった



今まで告白される事はあっても

告白した事なんかなかったし

まして振られた記憶もあの時が最初で最後


今思えば俺もどうかとは思うけどさ




そんな時も数日で終わり

俺はアメリカに引っ越す事になった


癌で母親が亡くなり

外科医であるにも関わらず救えなかった親父はアメリカでもっと高技術を学ぶ為に

俺も一緒に行く事になったから





日本に戻って来て

親父の意向で名門校であるT高に入学する事になった


特に学校への拘りもなかったし

そもそも勉強なんか授業聞いて参考書に目を通せば全て頭に入るし


それが周りからは"普通じゃない"と言われるけど他のヤツの"普通"が俺には分からない


まぁそれはおいておいて





俺は高校入学してすぐに叶芽を見つけた


あの頃のまま成長した様な感じで

すぐに分かった


あっちも俺に気付くだろうと思ってた俺の予想は大幅に外れ


まさか俺を《覚えてない》と言う現実にも

苛立った






色々工作した後に

晴れて俺の一目惚れは叶った訳だけど





少し大きめのパーカーにモコモコのフリースのパンツ足取り重たそうにこちらに向かって来る叶芽に


「大丈夫?腰砕けた?」


いかにも心配してますってフリしてからかう


「瀬戸のせいだからねっ」


不機嫌に俺を睨み付けてくる癖に


俺と目が合うと叶芽の頬は赤くなる


その頬に自分で気付いたのか次の瞬間には

プイッと俺から目を逸らす





      マジで可愛い

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