第24話

ライside



目を開けると、そこにはふわふわと白銀に輝く花が宙を泳ぐように浮かんでいた。




(……どこだっけここ)




自分が一体なにをしていたのか、これまでの経緯を思い出そうと目を細めた時、どこからか声が聞こえた。




「ライさん、目が覚めたんですね!」



「?」



初めて聞くその声は耳触りのいい、優しい少女の声だった。



(誰だ?ライに女の子の知り合いなんていたっけ…?)



ベッドからゆっくりと上半身を起こした私が声のした方を振り返ると、そこにはふんわりとした長い金髪の髪に、アメジストのように輝く大きな瞳を持った少女が微笑んでいた。



どこか見覚えのあるその少女の姿に、私は一瞬固まったが、少女のそのか細い首に付けられた白銀のレースであしらったチョーカーを見て思わず叫んだ。



「マリー・マリアンヌ!!!!」



突然名前を叫ばれたマリーはそのアメジストの瞳を大きく見開き、驚いた表情をしたが、すぐに優しい微笑みへと戻り、ゆっくりとコチラへ歩み寄ってくる。



その表情を咄嗟に修正するマリーの癖が私にはメロウと重なって見えた。



「私のこと覚えてくれていたんですか?嬉しい…!」



(そりゃあ覚えてますとも!貴方と共に幾人もの攻略対象を攻略してきたんですから!もはや私は貴方で貴方は私…!と言っても過言ではないのですよ…!)



感激するマリーに私は表面上はライらしく静かに微笑んで返したが、内心では軍人のごとくマリーに対して見事な敬礼を捧げていた。



しかしマリーは私が微笑んだ瞬間、サッと顔色を変えて私の顔をその華奢な両手でおおった。



「やめて…!」



「え…?」



「そんな風に笑わないで!」



「えっと……」



マリーの急変に私は戸惑っていると、マリーはそのまま私の唇に口付けた。



(えぇ!?待って待って、もしかしてマリーはライを攻略しようとしてる!?まずいまずい、私は貴方の望むかっこいいライじゃないのよ〜〜!)



「お願い、あの日みたいに笑って?そんな取り繕った笑顔じゃなくて…私、貴方の一番になりたいの」



「取り繕ったって…」



(うぅぅぅわ、やっぱり攻略しに来てるぅ〜!どうするどうするよ!?ああ、でも逆にここで私が素で対応して幻滅or友達エンドに持ち込めれば、この聖女様を無事に他の攻略対象ルートに導けるかもしれないのか!よし!)



意を決した私は「参ったな〜バレちゃった!」とヘラヘラ笑ってみせた。



するとマリーは安心したように微笑み、今度は私の胸に抱きついてきた。



(おうおう積極的だな…)



内心焦りながらも、私はそんなマリーをそっと抱き締めて頭を撫でた。



(確かマリーは小さい頃から"聖女"として扱われてちゃんと甘えらなかった設定だった気がする…コイルルートで先輩に頭撫でられて喜んでたし)



「そういえばココはマリーの部屋?」



マリーの頭をゆっくりと撫でながら私は部屋を見渡す。



するとマリーはうっとりとしながら「そうです…とても広い部屋だけど…寂しくて」と私の胸の中で呟く。



「えっと私はどうしてマリーの部屋にいるんだろう?」



「私、朝早くに訓練場に忘れ物を取りに行ったんです。そしたらライさんが倒れていて…最初はライさんの部屋に運ぼうとしたんですけど、男子寮には入れなくて。それでココに」



「そう…だったんだ。ありがとう」



マリーの話を聞きながら私は今朝の出来事を思い出してズクリと胸がいたんだ。



"お前は誰なんだ?"



頭にシュンの声が木霊して中々消えてくれない。



転生したのだから私がライであることには間違いない、



だがしかし、この乙女ゲームの世界で求められている"ライ・アビス・ブルー"ではない自分に私は苦しんでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る