第17話
♡♡♡♡
「それで君は僕のところに来たの?」
コイルのおチャラけた軽い笑顔に私は黙って頷くと、コイルは「まあ、とりあえず座って☆」と私の肩を軽く叩いた。
「それにしても副作用に学力の低下まであるなんて…あの薬は改良どころか根本的な見直しが必要だな〜」
私の向かい側に腰を下ろしたコイルが頬杖をつきながら、発言とは裏腹にニヤニヤとした笑顔を浮かべる。
(まあ…本当は副作用じゃないんですけど!一人で勉強するにしても意味がわからな過ぎて助けを求めに来たんですけど!)
メロウから逃げ帰った翌日、私は学力向上の為、コイルの研究室に来ていた。
自分の無知と勉強の出来なさをコイルの薬のせいして責任を取れと泣きついたのだ。
原作でも穏やかな性格のコイルは、特に反論もなく、こうして快く教師役を引き受けてくれた。
(へへ、乙女ゲーをやっていたからこそ出来た間違えない人選…!前世の自分、グッチョブ!)
「それで、どこから分からないの?」
「…………………」
勉強出来ない人あるある、そもそも自分の現在地が分からない。
視線をあらゆる方向に泳がせながらテキストをペラペラとひたすらにめくる私を見て、コイルは明るい笑い声を上げながら私の手の上にそっと自分の手を置いた。
「ごめんごめん、僕の聞き方が悪かったよ。基礎が分からないんだもんね、じゃあ僕は君が今ゼロの状態だと思って教えるから、君は知っていたことは復習だと思って聞いて」
「はい、分かりました」
私の返事にコイルは今までのおチャラけた笑顔とは違う、とても優しく温かい笑顔を浮かべて頷くと、私の手元に置いてあったテキストを全て閉じてテーブルの端に寄せた。
「魔法学全般を学ぶにあたって最初に知っておく必要があるのは、やっぱり歴史だと僕は思う。魔法の始まり、そして成り立ちを知ることでなぜこの世界に"魔力"というものが必要不可欠になったのか理解することによって、呪文も実技も上達するはずだよ」
「はあ…」
あまりピンとこない反応の私に、コイルは変わらぬ笑顔で今度は私が手に持っていたペンをとった。
「たとえばこのペンが魔法だとする」
「はい」
「たとえば君がこのペンの使い方を知らなかったら、このペンが手元にあったとして役に立つかな?」
「あっても使えないので役には立たないと思います」
「だよね。じゃあ、君がこのペンの使い方を知ったとする。君は実際にこのペンを使うようになった。だけどある日問題が起こってしまった」
「ほお、」
「なにが起こったと思う?」
「え……い、インクが無くなった、とか?」
「なるほど、それも死活問題だね。じゃあインクが無くなったらどうする?」
「えーと…インクの取り替えをするか、新しいペンを買います」
「そうだよね、そのどちらを選ぶかはペンそれぞれの仕様に左右されるから、その都度ペンの仕様によって判断するしかない。他に起こりそうな問題といえば?」
「ん〜…」
腕を組んで考える私をコイルはニコニコと眺めながら数分待った後に口を開いた。
「君はそのペンで書き間違いをしてしまった。しかもそれは大事な書類で、君の使っているペンは書き直しの効かないものだった」
「なるほど!」
「これらのミスを防ぐ為には一体なにが必要だと思う?」
「あー…そのペンの使い方というか…機能?を知っておけば、少なくとも重要書類に消えないペンで一発描きはしない…かな?」
(私はしてたけどね)
心の中で自分が口から出した回答とは正反対の真実を呟きながら首を傾げてコイルを見ると、コイルは軽く頷いた。
「そうだね。魔法も同じだよ、使い方と効果、性質を理解しないと特に危険だからね」
「な、なるほど…!」
(この人、教えるの上手い人だ!)
目から鱗!という気持ちをまさに体験した私は一気にコイルの話に意識が集中した。
その後もコイルは魔法史を物語風に順に語りだし、特に重要な歴史上の人物は手元にある私のノートに書留てくれた。
元々ヲタクである私はまるで友人からアニメのあらすじを聞いているようなテンションでコイルに質問したり、気になった出来事の詳細を図書室で調べた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます