『弱者の特権』
弱者に何の特権があるのか。はっきり言って何もない。自らを奮起させる夢も、冬の寒さを振り払う希望の灯火も、強者に奪われてしまう。いつの間にか淘汰され、いつの間にか骸になり、やがて空を舞う塵芥となる。それこそが、弱者。それこそが、持たざるものとしての末路。
では、弱者の特権とは何か?
正しくは、弱者の皮を着た慮外者の特権と言い換えるべきだろう。彼らは、常に川辺に潜む。そして、川を渡る者たちの動向をいまかいまかと待っている。
なんのために?
誰かが溺れるのを願っているのだ。人間はあらゆることで溺れてしまう。足元を見ずに川底にある石につまずき、他者を押しのけては、川の流れに足を取られる。
そうして、溺れたものを慮外者たちは取り囲んで溺死させるのだ。それこそが、弱者の皮をかぶった雑食獣である。一般的には『アンチ』と呼ばれる人種だ。しかし、彼らもまた川底へと導かれていく。声なき声の贄となるのだ。
弱者も持たざるものも、慮外者さえも、地道に一歩ずつ川を歩いていけば、溺れることもなくやがて花咲く対岸へと渡れるのである。
大切なのは、何者にもならないことだ。人徳者とは、強者から離れ、弱者に甘んじない。何よりも慮外者になることを恐れる。これらを肝に銘じることは、自らを助けることにつながるのである。
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