作者様は、人魚でも猫でもありませんでした!

花森様の他作品『海の毒薬』のレビューで、人魚のディテールが細かすぎるため「作者人魚説」を提唱したのですが。
今作を読んで、作者が猫である可能性も出てきてしまいました。
なぜなら、子猫の生活のディテールも細かすぎるためです…!!

と、思っていたら「人間です」というお返事をいただいたので、私の説は2つとも間違っていました(失礼いたしました)。

と、いうことは。
むしろ、そっちのほうがすごいです。
猫ならば猫の半生を書けるのは、自然なことだと考えられます。
しかし、作者が人間ということは、今作を「全て想像で書いた」ということですよね…!?

ペットショップのねこたちは真夜中に集会を開くこと。
ねこには掟があること。
哀しいサイベリアン先輩。

このような猫の世界が、知っているかのように自然にえがかれていて、読んでいる私の中に、常識を受け容れるようにスッと入ってきます。
飼い猫たちが「大きいねこ」という言葉を使うことも好きです。
きっとそうだろう、と思います。

物語のクライマックスは、少し残酷なシーンなのですが、花森様の筆のなせるわざでしょうか、やわらかく美しく感じます。

私は、この小説を「自立」の物語だと思いました。
猫である主人公・ミイのことを、18歳か22歳くらいの人間の女の子、と重ねました。
思春期までを過ごした、温かな家。
安全だけれど、多少過保護で、外界から隔てられている。
そこを出て、ひとりで生きていく。
別れは、時に痛みを伴うけれど。
必要な痛みを受け容れて、自分の足で、外の世界の土を踏みしめる。
自分の意志で。
――そういう女の子の後ろ姿を見た気がします。

「ぐよぐよねこ」とは何なのか。
ぜひ見届けて、この作品を、自分の身中に溶かしてほしいです。
この世界を強く生きるために。