誰かに自分の気持ちを伝えることの難しさと、想いを感情として発露させるまでにかかる時間を、丁寧な描写と読み心地の良さを加速させる優れた文間を用いることで、ドラマチックに表現されており、ひとつずつの場面の中で登場人物たちが抱える思惑や心情が直に伝わってくる。
少し歪で不安定で、どこかを突けば壊れてしまうかのようにみえる彼らの関係性と、一様にはまとめることのできないそれぞれの不器用さは、鮮烈かつ等身大な人物像を象るための手助けになっているように思える。
これらの要素を強固な土台とし繰り広げられる人間模様には、読み手の心を引き付け世界観に閉じ込めるだけの確かな力があり、場面ごとに漂う空気感すら想像してしまえるほどの没入感と説得力はとても魅力的に映る。
恋愛や友情という言葉では表しきれない、かといってその両方で覆い尽くせないわけではない。きっとどこかには存在していて、当たり前のように育まれているはずの関係性。その絶妙な心の重なり具合を多角的に描くエピソードの数々。
不思議な出会いから始まり穏やかに進んでいく彼らの関係性を。
是非、見守ってみてはいかがでしょうか。
素晴らしい作品をありがとうございました。