#04-6 スッキリしない、な
☆
「へぇ。あたしが留守にしてる間に、そんな依頼、受けてたんだ」
依頼を終えたわたし達を修道院で出迎えてくれたのは、依頼でしばらく留守にしていたマリーでした。
「まぁ、ミレンの、尻拭い、だよね」
「その話は、もぅいいでしょう……っ。お国同士のやり取りなんて、わかるわけないじゃないですか」
アレックスがじとっとした目で睨んでくるので、わたしも
「それは、勉強してない、ミレンが、悪い」
「せ、正論で殴り掛かるの、やめてください……」
容赦のない
つい助けを求めて周囲に視線をやってしまって。
そこで、おや? と違和感を覚えます。
……マリー?
普段なら嬉々として、アレックスと一緒になってわたしをいじってきそうなマリーが、なんだかぼぅっとしていて。
なんとも複雑な……同情と
「マリー……?」
思わず声をかけてしまって。
けれどマリーは(まるで何事もないように自然な動作で)「ん?」と小首を傾げるだけ。
「ま、あたしは、そんな気してたけどね」
「え…………、じゃあなんで」
「いや、あたしあの時聞いたわよ、目的地は? って。そしたらあんた、問題ないって答えたから、あまり追求しなかったけどさ」
「そ、そうでしたっけ……?」
「心の中では、この
「い、言ってくださいよ、そういう心の声はッ」
そしたら、今までの(どこかアンニュイな)表情は急に
「な〜ぁにぃ? ミレンちゃんは、未だにマリーお母さんの支えがないと、一人で歩くことも出来ないのかしら?」
「な……ッ! ち、違いますよ!!」
「仕方ないわねぇ、ほらほらいらっしゃい、ぎゅってしてあげる」
「やめ……ッ、……むぎゅ……」
……ああやっぱり、いつものマリーでした。気の
なんとか脱出して、ぜぇはぁ言ってるわたしを、ケラケラ笑うマリー。
うん、心配しかけたわたしが馬鹿でした。
「……いつか、もぎますからね」
「あらやだ、こわい」
「馬鹿なことやってないで、きちんと情報共有しますよ!」
「……はいはい」
楽しそうに笑うマリー。それはいつも見慣れた姿のはず。なのに、何故でしょう。なにか、違うような気がして。
……気の
――。
――――。
「こ、殺さないで下さいぃぃっ! わ、私は、あいつらに言われるまま、手伝ってただけなんですぅぅぅ!!」
わたしの目の前で
即座に逃げようとしたので、速やかにわたしが
「よーし、じゃあ。知ってる、事、全部、話そう、か」
「は、はいぃぃぃ……っ」
ドスをきかせた声でアレックスが肩を叩くと、それはもうちっちゃくなって、ぶるぶる震えるちょび髭です。
いや、そんなに震えられるとこっちがすごい悪人みたいで、やりづらいんですけれど。……そういう処世術なのでしょうか、なんて考えながら尋問を開始した訳ですが。
まぁ結論を申しますと、この商人は黒幕でもなんでもなく。
巻き込まれたというか……
帝国内で『商品』を『調達』し、奴隷として密輸する。そこまでは聞いていた通り。
むしろ問題は別。
「……『調達』、していたのは、……全部、
「は、はいぃ! この間すべて相手先に卸したばかりで……! 次の指示を待ってたところなんです……!」
その『商品』が、
通常、奴隷に求められるのは、労働力です。
だとすれば普通は頑強な成人男性が主になります。いや、女主人の為に女奴隷を必要とする場合もあるでしょうが。いずれにせよ、わざわざ労働力に劣る子供の奴隷を求めるケースは、そんなに多くは有りません。
思い返せば、アニタの時もそうでした。
彼女が手引きしていたのは幼い少女ばかり。
従業員として誘い込む都合上、たまたまそうだったのかと思っていましたが……。こうなると敢えて、子供を欲する理由があったことになります。
そしてもう一つ。
「ここには、もう、『商品』はいない、と、言ったな? …………どこに、売った?」
「そ、それは……」
その奴隷は、帝国でもなく共和国でもなく。すべて
「……なんで、西王国、なんだ?」
「し、知りませんよぉ! 私はこの、
「……チッ。成程、ね」
そう、この『密輸』の主は、アレックスが向けた視線の先でのびている大男、マウリッツ。
この目の前にいる商人の男……いえ、商人
成程。先程感じた違和感の正体がわかりました。
『アンタぁ下がってな。流れ弾に当たらねぇようにな!』
『わ、わかりました! た、頼みますよぉ!!』
マウリッツが用心棒であるのなら、商人……つまり雇い主の方が立場が上であるにもかかわらず。明らかに、マウリッツの方が、上から命令していたように見えたのは、つまり本当に立場が逆だったからなのですね。
「そ、そうなんです! だから私はそいつに無理やり言う事聞かされてただけで……ッ! 私自身はなにも………ぶべらッ!!」
ぷしー、と音を立てるように、鼻から真っ赤な血を吹き出させて、男は倒れていきます。
その向かい側には、アレックスの拳。
「……なにも……、なワケ、あるか。理由はどうあれ、手を下した、時点で。お前も同類、だ」
そこには、怒りとも悲しみともつかない、
「とりあえず縛っときましょうか」
「そうだね。しばらく、すれば、
事件は解決に向かっている。はずなのに。
ふわふわとした不安感がいつまでも
そもそも、囚われた子供たちがここにいない事は、事前に把握出来ていたことです(だからこそあんなに派手な突入が出来たわけですが)。
だから、建物の警戒が
そう。
単なる、彼らの能力不足であるならば、良いのです。けれど。
彼らが、『赤い噂』を知らなかった事も含めて。
この事件は、何一つ解決などしていない。
そう誰かに言われているような気がしてならないのです。
「はぁ……っ。スッキリ、しない、な……!」
ばさり、
「はしたないですよ、アレックス」
そう
気持ち的には、わたしも同じ。
「むー。……それも、これも。ミレンが、考え無しに、突撃、したのが、悪い!」
「い、今それを蒸し返します?!」
だからアレックスがそんな風に、わざとらしく吹っかけてきた喧嘩腰にも、わたしは乗っかって。
「もう、ミレンがらみの、依頼、は、受けないっ!」
「なんなんですか、もー!」
スッキリしない気持ちは、口喧嘩の火種に。
ローセリア兵が到着するまでの
わーわーと、わたしたちの言い争いは続いたのでした。
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