Episode.002 俺の国って変人ばかりが集うよな?
俺はこう見えても、剣の
「ラウール様、昨日は剣を握ってもいないはずですが?」
(いや昨日は、俺のエクスカリバーを……って!)
「だから、シャラクは勝手に人の心を読まないように!」
執事のシャラクがいると剣の鍛錬も真面目に出来そうにないので、残った政務の仕事を任せて
かつて、俺は唯一の
特に父王からは、将来を過大に
俺がまだ幼い頃から国の内外を問わずに、それこそ金に糸目も付けずに、高名な学者や魔導師、
(まぁ大半が、高額報酬目当ての詐欺師だったけどね)
その
要は
もっとも、本当に高名な学者が教えたところで、幼い子供のIQが高くなる訳が無いのだ。
アインシュタイン博士が、子供に
(アインシュタイン? はて、何のことやら)
しかし剣術だけは違った。
多くの剣客が招かれた。
大抵は何とか流の
だから俺は、未だに聞いたことがない、複数の流派の免許皆伝者なのだ。
俺は
しかし父の
ある自称、一流の老剣士はこう言った。
「儂に
そこで
また或る時は寝室で寝息が聞こえる間は待って、
すると一週間もすると
(まぁ高額の給金から治癒魔法で、いくらでも治せるんだけどね)
つまり幼い頃から、相手の隙を
(一撃で致命傷を負わせられないと、反撃の機会を許してしまうからね)
「剣の道に恥じない国の王に、俺はなる!」
俺は高らかに、
そして今日も重い一撃を繰り出すべく、
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
小なりとは云え、国家なのだ。
ちゃんと組織された兵士がいる。
皆は俺の姿を見るなり、動きを止めて統率の取れた所作で最敬礼をする。
俺は皆に普段通り、訓練に戻る様に命じると、今日の練習相手を目で探した。
部隊長たちも毎日のことなので、それと無く視線を外す。
その中で
(しまった! クッコロさんだ)
クッコロさん……じゃなくて、名前何だっけ?多分カレンとかいう元帝国騎士だ。
カレンとは名ばかりで、
見た目だけなら、普通に美人騎士と言ったところか。
燃えるようなロングの赤髪をポニテにまとめて、眺めているだけなら無害なのだが。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
彼女がこの国に訪れたのは、昨年のことだ。
城門の前で、何やら不審な騎士がいると、城内で噂になっていたのだ。
「頼もぅ――っ!」
早朝から辺りに響くような声を上げると、暫らく豪華な剣の柄を握りしめ、城門を睨み仁王立ちしている。
更に五分経つと再び。
「頼もぅ――っ!」
そんな事を俺が起き出すまで続けていたらしく、城内ではこの不審者に対する緊急会議が招集されていた。
俺が興味本位で、会議に顔を出したら
(もっとも間もなく午後に成ろうかって時間だったけどね。ゴッホン、風邪かな?)
とにかくあの声は妙に通るので、城内に居ても何か気になってしょうがない。
そこで誰か適当に一部隊を纏めて、鎮圧……じゃなくて事情を確認に派遣した。
数十分後。
「頼もぅーっ!」
再び深淵なる呼び声が、
仕方なく精鋭の近衛騎士団の団長パテックと共に、城門まで確認に出掛けた。
城門前には先程、事情を聴きに先行させていた兵士数十名が気絶し、或いは負傷して
「お前は何者で、何の用だ?」
俺は兵の心配というよりは、好奇心から尋ねてしまった。
女騎士は、俺を見遣るとフッと嘲るように見下して言った。
「お子ちゃまが出てくる
要は
直ぐにお引き取り願った。
「なんだ! やはりこの国の者達は、腰抜けばかりか?こんな子供の後ろに隠れているのが、近衛騎士なのか? くぁあはっはっはっはっはっはっはっは……ケホッ、ケホッ、ケホッ、ケホッ」
(喉がイカレたかな?)
ここに居る全員が、同じ事を思っていたに違いない。
即ち早く帰ってくれと。
しかしさすがに近衛騎士団長。
俺の斜め前まで進むと、大声で言い放った。
「ええい、
良い感じで言ってはいるが、近衛騎士団長パテックは
後日、
カレンとか言う女騎士は、不敵な笑みを
「じゃあ国王様と一戦交えて、もしもアタシが敗けたら一生臣下としての忠誠を誓おう。その代わりに、アタシが勝ったら遠慮なくこの国を頂くぞ!」
(勝っても敗けても、この国に
俺は一戦交えない方向で、思案を巡らせた。
すると城門の陰からチラ見している、家政婦の
俺はシャラクに近づくと、小声で訊ねた。
「お前の
シャラクは残念そうに首を振った。
「あの手の
(あの読心魔法は
「せめて相手の攻撃する場所とか、事前に分からないか?」
「そこが脳筋の恐ろしいところで、考えてる事と行動が一致せぬのですよ」
シャラクは残念な者を見る目で、女騎士を見詰めていた。
「おぉーそうであった! ラウール様が対戦なさるなら、初撃の一手くらいは読み取ることが出来るやも知れませぬぞ。相手が子供……ウォッホン。若き王ともなれば、通常の思考通りに剣を振るかと存じまする」
そうして女騎士と
そこで両者訓練用の
し・か・し・だ。
「この
着付けた途端、筋肉をパンプアップして見せると、
(きっと生身の方が
そこで先程、城門前に倒されていた、兵士数十名の事を思い出していた。
よく
数の暴力は、
しかしあの場には、軽く十倍以上の兵士たちが倒されていたのだ。
「亡き父様、母様。この国を護り切れずに申し訳ありません。その上、俺……今日が命日になるかも知れません」
俺は
(後はシャラクの読心魔法が、どこまで当たるかだな)
シャラクは、体格差から一撃目はわざと大きく振り被って、相手の動きを封じ込めるように、利き手の肩口を狙ってくるとの事であった。
その対処法を聞いたが、無いそうである。
まず相手の初撃を躱してもその太刀筋は徐々に勢いを増すだろうし、二撃目以降は本能のままに
俺は試合場で相手に対峙すると、開始の合図とともに相手の懐に飛び込んだ。
大振りに振り被った隙は、ここしかないと思った。
相手は意表を突かれてか、後ろに仰け反ったまま倒れ込んでしまった。
俺は数ある免許皆伝の奥義の内、
俺は馬乗りになり、
しかし相手は、騎士とは言え女性だ。
顔や胸などを避けつつ、
一打一打が力不足でも、数打つことによりダメージを与え続ける。
そして反撃の隙を与えないことで、相手の心を折ると言う心理的奥義だ。
やがて、カランと乾いた音が鳴ったかと思うと、女騎士は
「くっ……ころ……」
「言わせねーよ!」
俺は近くに転がっていた元
(俺は悪徳貴族でもなければ、オークでもないんだ!)
しかし口を閉じられた女騎士は、
その閉じた瞳からは、
周囲からはツンドラ気候の様な、冷やかな視線が注がれていた。
その中には、教会から負傷者の治療に駆け付けていた婚約者と、妹の姿も目に入った。
俺は無言で立ち上がると、私室に向かったのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
長い回想であったが、カレンとか言う女騎士と目が合った時に、
正直、最悪のトラウマであった。
俺はクルリと、もと来た道を引き返した。
(俺の国って変人ばかりが集うよな?)
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