ファイナルバトルアクション玄武

 玄武水柱拳の使い手玄武とその友人白虎は青龍王国の各地を巡る修行の旅をしていた。


「なぁ白虎、そろそろ村にはつかないのか?お腹が空いたぞ。」

「もう少しだ玄武、この先に小さな村がある。」


 玄武と白虎は幼馴染の拳法家である。同じ師匠の元で拳法を習い、師匠の元を旅立った後は青龍王国中を修行して回っていた。


「それにしても白虎、この森は広いな、何というか、何もかも止まっているように感じる……白虎?」


 玄武が白虎を見ると、彼は何一つ動かない状態になっていた。いや、白虎だけではない。玄武以外の何もかもが止まっているのだ。


「な、なんだこれは……白虎、これは一体!!」


 その時である。玄武の足元に突如として時空の裂け目が出現した。


「な、なんだこれ……うわぁぁ!!」


 玄武は裂け目に飲み込まれていった。



「……んん、ここは?」


 玄武が目を覚ますとそこは真っ白な何もない空間が広がっていた。


「やぁ、お目覚めだね玄武くん」

「誰だ!!」


 玄武が声のする方を向くと、そこには白を基調とした衣服を身にまとい、仮面をつけた男がいた。


「私の名はカオス、時空の管理者だ」

「時空の管理者だって!?じゃあここは一体……」

「ここは時空の裂け目。玄武くん、君の世界は崩壊の危機に直面している」

「な、なんだって……それはどういうことだ!!」

「話は長い、まぁ座りたまえ?」


 すると、玄武の目の前に酒場が出現した。


「まぁ入りたまえ、君の世界ではこういう話は酒場でするものなのだろう」

「……何だそれは?」

「やはり記憶はないか……まぁいい、とにかく話をしよう」


 玄武はカオスに連れられ酒場に入った。


「まずは何から話すべきか……そうだな、まず君がいた世界は一度崩壊し、再生している」

「なんだって!?それは一体どういう……」

「まぁ落ち着きたまえ、順を追って説明する。」


 カオスは話を続けた。


「今の君はただの一介の格闘家だが、崩壊前の世界では青龍王国を救った英雄だった」

「俺が英雄だって……?」

「ああ、本来この世界は君が青龍王国を朱雀衆の手から救って終わり、そのはずだった、だが物語はその後も続いてしまったんだ」

「物語、あんた何を言ってる!?それに俺が英雄だって?」

「まぁ落ち着くんだ玄武くん、とにかく最後まで聞いて欲しい、いいかい、君のいる世界は言ってしまえば不確定で不安定な神によって作られた世界なんだ」

「神、だって?」

「ああ、そんな世界が長く存在を維持できるはずがない、結果的に君の世界は自己矛盾を起こし、最終的に君が世界をリセットすることによって崩壊を防いだんだ」

「俺が!?それが今起きてる現象とどう関係が!?」


 玄武の問いかけにカオスは答えた。


「今起きている現象はそのリセットの影響だ、結局のところリセットはその場しのぎにしかならなかったんだ、世界の記憶の辻褄合わせが君の世界に起きている」

「つまり……どういうことだ!?」

「今君の世界は崩壊し、再生を始めている、だがその再生はやはり不確定で不安定なんだ、そこで君は過去の戦いの再演をしなきゃならない、アレを見たまえ」


 カオスが指差した先を玄武は見る、そこには真っ白な巨塔が聳え立っていた。


「アレは一体何だ!?」

「玄武くん、君は今からかつて君が倒してきた強敵と再度戦わなければならない、最もかつての記憶を失った君に取っては知らない相手ばかりだろうがね」

「なんだと!?」


 玄武はカオスに掴みかかる。


「そんなこと、今更俺には関係ない!!早く俺を元の世界に戻せ!!」

「敵を間違えるな玄武くん、君が今倒すべき相手は私ではない、あの塔にいる敵を倒すことだ、それができれば君の世界は元に戻る、結局のところこれはそういう戦いだ」

「くっ……!!」


 玄武はカオスを掴む手を離し、椅子に座った。


「わかった……やってやるぜ!!」

「いい目になった……それでこそ青龍王国の英雄だ」


 カオスの言葉を聞いた玄武は塔へと歩いて行った。


「さぁ、行くんだ玄武くん……この物語を真に終わらせるために……」



 玄武は塔にたどり着いていた。


「この塔の中にいる奴らを倒せば俺の世界は元に戻る……」


 そういいながら玄武は塔の中に入っていった。なかには赤い服を身にまとった男が一人いた。


「久しぶりだな玄武、俺は朱雀衆の首領【朱雀】!!玄武よ!!俺は貴様に敗北したあの時から、ずっとずっと貴様にリベンジするためにこの塔で修行をしていたのだ!!俺は今一度お前に勝つためにここに来たのだ!!」

「朱雀だって!?誰だお前は!?」

「俺は朱雀、朱雀衆首領にして玄武を打倒するための戦士だ!!さあ玄武よ、今こそ俺との因縁に決着を付ける時だ!!」

「ちっ……よくわからねぇがやってやるぜ!!」


 玄武が構える、すると朱雀も構えた。


「いくぞ!!はぁぁぁぁ!!」

 朱雀の体が燃え盛った。


「うぉぉぉぉぉ!!」


 そしてそのまま玄武に突撃した。

「うわぁぁぁ!!」


 玄武は吹き飛ばされた。


「ふふふふふ、どうした玄武よ!!この程度の実力か!?」

「くそっ……うぉぉぉぉぉ!!」


 玄武は破れかぶれに朱雀に突っ込んでいった。しかし、朱雀は玄武の拳をまるで見切っているかのように華麗に避けた。


「甘いぞ玄武!!そんなやけくそな攻撃でこの俺を倒せると思うなぁ!!」


 朱雀は玄武の拳を掴むと、そのまま玄武の体をぶん投げた。


「ぐあぁっ!!」


 玄武は壁に叩きつけられた。


「うぐっ……」


 玄武の体から力が抜けていく。すると朱雀が叫んだ。


「玄武よ、今こそ俺の力を見せてやる!!うぉぉ!!」


 すると朱雀の体が激しく燃え上がった。そしてそのまま玄武に突っ込んでいった。


「くらえ!!火鳥風月・鳳凰の舞!!」

「うわぁぁ!!!」


 玄武の朱雀の攻撃を前にして玄武は倒れた。


「く……くそぉ!!」


玄武は自分の体を動かそうとするが、しかし玄武の体が動くことはなかった。すると朱雀は言った。


「ふん、他愛もない、やはりこの程度の男か」

「くっ……俺は……まだ……」


 玄武は必死に体を動かした。すると、玄武の体が光出した。


「な、なんだ!?」


 朱雀が驚くと、玄武の体の中から何かが出てきた。それは白虎だった。


「貴様ぁ!!よくも玄武を!!」


 白虎は朱雀に襲い掛かった。しかし、朱雀の体には傷一つつかなかった。


「くっ……この程度じゃダメか……」


 すると玄武が白虎に言った。


「いや……これでいいんだ、白虎」

「玄武?」

「奴は俺たちより遥かに格上で、その上俺のことを何故だか敵対視している……しかし俺と白虎なら、二人で力を合わせれば勝機はあるはずだ」


 玄武がそう言うと白虎は頷いた。


「ああ、そうだな……行くぜ!!」


 二人は同時に朱雀に攻撃した。


「くらえ!!獅子王・白虎の舞!!」

「うおぉぉぉ!!」


玄武は朱雀に全力の拳を叩き込んだ。しかし、それでも朱雀には傷一つ付かなかった。


「無駄だ!!この俺にそんな攻撃は通用せん!!」


朱雀が玄武に攻撃を仕掛けようとしたその時、玄武の体から眩い光が溢れた。


「な、なんだこれは!?」


驚く朱雀と白虎に向かって玄武は言った。


「この光は……俺の世界を救う光だ!!白虎!!」

「ああ、いくぜ玄武!!」


二人は手を繋ぎ、朱雀に向かって突撃した。


「くらえぇぇ!!これが俺たちの全力だぁぁぁ!!」

「うおぉぉぉ!!」


 二人の拳が朱雀の体に直撃した。


「ぐわぁぁぁ!!ば、馬鹿な……この俺が……」


 朱雀は倒れた。

「や……やった、のか……?」


 玄武がそう言うと白虎は玄武の方を向いた。


「ああ、お前の勝ちだ玄武」

「やったぜ!!」

「くっくく……また負けるか……この私が……朱雀衆首領であるこの私が……青龍王国を支配することもできずに……ただの一介の格闘家に……」


 朱雀が悔しそうな声を上げる。すると、突然玄武の体から光が消えた。そして玄武は気を失った。


「玄武!!」


 白虎が慌てる。すると朱雀は笑い出した。

「ははは……あっはっは!!この塔にいるのはこの私だけではない!!かつてお前たちが倒してきた数々の強敵たちがお前たちにリベンジを果たそうと戦いを仕掛けてくるのだ!!白虎!!玄武とともに行け!!私はここでお前らが敗北するところを見届けてやる!!因縁というものはそう簡単に解きほぐせるものではないのだぁ!!」

「なんだと!?貴様、玄武に何をした!!」

「俺は何もしておらん!!この塔のシステムがお前たちを戦わせようとしているのだ!!さぁ行け!!白虎よ!!そして玄武よ!!貴様らはここで負け……そして戦い続けるのだ!!貴様たちの因縁にケリが付くまでな!!」

「玄武、しっかりしろ……」

白虎は気を失った玄武を抱きかかえて塔の上階へと向かっていった。



 白虎は塔の次の階へとたどり着いていた。その階層は周りの黄色の龍を象った様々な装飾と、壁に描かれた壁画が特徴的であった。


「玄武……大丈夫か?」


 白虎は気を失っている玄武に問いかけた。しかし玄武はまだ目を覚ませずにいた。


「玄武……はっ!!殺気!!」


 白虎は玄武を連れて避けた。するとそこに謎の仮面をつけた男がいた。


「勘のいいですね、この私の不意打ちを避けるとは……」

「貴様は誰だ!!」


 白虎がそう言うと男は仮面を外して笑った。


「私の名は黄龍……闇のバトルアクションです」

「闇のバトルアクションだって!!それは一体……」


 白虎の問いに黄龍は笑った。

「くふふ、貴方には知る必要はありません」


 黄龍がそう言った瞬間だった。白虎の背後から巨大な竜が現れた。


「なっ……うわぁ!!」


 その竜の攻撃をくらって白虎は吹き飛ばされた。

「くっ……これは一体!?」


 白虎が立ち上がると、竜の体が黄龍に吸い込まれていくのが見えた。すると、竜の体から黄龍が出てきて、彼は再び笑った。


「さぁ、戦いましょう……所詮あなたは私に一度殺された身……この私に勝てるはずがないのです」

「やってみなければ……わからないだろう!!」


 白虎は黄龍に突っ込んでいった。そしてそのまま蹴りをくらわせた。


「ぐぉっ!!」


 しかし、それでもなお黄龍は笑っていた。


「ふふ、無駄ですよ……今の私は無敵です!!」


 黄龍が白虎に殴りかかってきた。しかしその瞬間、白虎の姿が消えた。


「なにっ!?消えました!?」

「白虎新橋拳奥義!!白虎連撃!!」


 白虎の無数の拳が黄龍にヒットする。すると黄龍は倒れた。


「ま、まさか……この私が……」

「さぁ、観念しろ!!」


 白虎が黄龍に掴みかかると、突然白虎の体に異変が起きた。


「な……これは……」


 すると白虎の体は動かなくなり、そのまま倒れてしまった。


「この私に勝てると思いました……闇のバトルアクションである私に、ただの一介の拳法家であるあなたが?」

「くっ……貴様……」

「黄龍は闇のバトルアクションの中で唯一自我を保っている存在……たとえ死のうが私は無敵なのですよ」

「くっあと少しだったのに……」

「いいでしょう……あの時と同じように奥義で葬ってあげましょう……黄龍陽陰拳奥義【黄龍流波動砲】」

「うっ……うおおおおおおおおおおおおおお!!」


白虎の体に波動砲が直撃する、その瞬間。玄武の目が開いた。


「なにっ!?」

「くらえ!!玄武水柱拳奥義!!玄武大瀑布!!」


玄武の体から水の柱が放たれ、波動砲を打ち消した。

「な……なんですかこの力は!?」


 黄龍は驚いた。そしてそのまま玄武が黄龍に突っ込んでいった。


「うおぉぉぉ!!」


すると玄武の体が光りだした。


「これは……」


その時、玄武の頭に声が響いた。


(我が名は鳳凰……玄武よ……私も力を貸そう)

 

 すると、黄龍の体が激しく燃え出した。


「な、なんだこれは!?わ、私の体が……」

「なっ……なんだかわからんが今だ!!玄武水柱拳奥義!!玄武大瀑布!!」

「ああああああああああ!!この私が……こんなことでええええええええええ!!」


 黄龍は玄武の攻撃によって倒れた。

「……勝ったのか……?白虎!!」


 玄武は白虎の元に駆け付けた。


「大丈夫か!?白虎!!」

「ああ、俺は大丈夫だ……だがお前こそ……」

 

 白虎は倒れた黄龍を見た。


「奴は倒した、さぁ俺たちも上を目指そう」


 玄武と白虎が上に向かおうとすると、黄龍が二人を呼び止めた。


「ま、待ちなさい!!……いいでしょう、貴方がたをこの先に行かせてあげます」

「ふん、負け惜しみか?」


 白虎は鼻で笑う。すると黄龍は言った。

「私は青龍王国という国を憎んでいました……私の弟を見殺しにし、自らを正義だとのたまう青龍王国という国を……だから私は闇のバトルアクションの力を欲し、そして実際にそうなった……しかしあなた方はまだ希望に溢れている……そんなあなた方を闇のバトルアクションの力で殺すのは惜しい……私は青龍王国に絶望を与えるためならどんなことだってしてきたが、貴方は違います」


 黄龍の言葉に玄武と白虎は黙った。すると黄龍は立ち上がった。


「しかし、私はもうおしまいです……よって私はあなた方を上階へと通す!!これは私の最後の意地だ!!」


 黄龍の体が燃え上がる、すると塔全体が揺れ始めた。


「うわっなんだ!?」


 玄武と白虎は天井を見た。すると、そこに大きな穴が空いた。


「さぁ……行くのです……この先には未だ憎しみに囚われているものがいます……今のあなた方ならもしかしたら……その憎しみを断ち斬れるやもしれません」

「黄龍……」


 玄武がそう呟いた。すると黄龍は白虎の方を向いた。


「朱雀の言っていたことは本当だったようですね……貴方は青龍王国を救う勇者なのですね、玄武」

「俺が?何を言うんだ、俺は英雄でもなければ勇者でもない!!」

「いえ、貴方こそが真なる英雄にして勇者です……まぁそう思うのは私だけではありませんが……」


 黄龍がそう言うと玄武と白虎の前に人影が現れた。それは、玄武に倒されたはずの朱雀だった。


「久しぶりだな……玄武!!」

「な、なんでお前が……お前は俺が倒したはず……」

「玄武よ、言ったはずだ、俺はお前たちのことを見ているとな」

「な、なに?」

すると黄龍が笑った。


「くふふ、朱雀は先ほどああは言ってましたが、あなた方のことを憎からず思っているのですよ?」

「なんだと……!?」


 玄武と白虎が驚いていると、朱雀が言った。


「貴様ほどの強い男……俺は貴様と最初に朱雀衆のアジトで戦かった時、久しぶりに思い出したのだ、格闘家としての俺の本能がな……そして俺は貴様に負け、鳳凰の聖域での再戦でまた負けた時!!この黄龍の部下となり三度戦った時!!俺は確信したのだ!!貴様こそ俺の好敵手だと!!」


 朱雀は玄武に再び襲い掛かった。しかし、その攻撃は玄武によって止められた。


「な、なにぃ!?」

「確かにお前は強い……だがもういいだろう、俺たちは次に行く、だからお前も自分のあるべき場所に戻れ……鳳凰の聖域に」

「ふん……俺の居場所は朱雀衆だ……あんなところじゃ……俺の疼きは収まらない」


朱雀がそう言い残し、どこかへと去っていった。そして黄龍もまた、朱雀を追って消えていった。


「玄武、俺たちは俺たちで上を目指そう」


 白虎の言葉に玄武は頷いた。



 二人は黄龍によって開けられた穴から上の階へとたどり着いた。その階はこれまでとは違い、床が全て金属でできており、まるで巨大な工場か軍事施設を思わせる場所であった。


「なんだここは?まるでわけがわからないぞ」


 玄武がそう言うと白虎は辺りを見渡した。すると、そこに大量のロボットたちが現れた。


「「「「ギャニイ!!ワレワレハメカ・ファントム!!ワレワレノ朱雀幻影拳ヲウケテミルガイイ!!」」」」


 メカ・ファントムたちはそう叫ぶと、一斉に攻撃を繰り出してきた。


「くっ!!白虎、ここは俺に任せてくれ!!」


 玄武が前に出ようとすると、白虎は彼を制した。


「いや、ここは俺にやらせてくれ!!玄武は次に行くんだ!!」


 白虎はそういうと、メカ・ファントムたちの前に立ち塞がった。

「白虎……わかった!!ここはお前に任せた!!」


 玄武はそのまま上の階へと駆けていった。


「さぁ来い!!俺が相手だ!!」


 白虎がそう叫ぶと、メカ・ファントムたちは一斉に彼に襲い掛かった。



 玄武が次の階層に上るとそこには巨大ロボが鎮座していた。


「なんだこれは!!……いや、考えるのは後だ!!」


 玄武がロボに走っていく。しかし突然ロボが起動し、攻撃を仕掛けてきた。


「うおおぉぉ!!来るなら来やがれぇ!!」


 玄武はロボに向かって走っていった。そしてそのままの勢いで殴りかかった。しかし、その瞬間ロボットからレーザーが放たれた。


「うぉぉ!!」


 玄武はその攻撃を避けた。しかし、避けた瞬間にロボットの腕が動き、玄武の体を殴り付けた。


「ぐわぁぁ!!」


 玄武は吹き飛ばされる。しかし、彼は立ち上がった。


「くっ!!なんてパワーだ……」


 するとロボットは再びレーザーを放った。玄武はそれを避ける。


「くそぉ!!どうすれば……」


そんな時、玄武の頭の中に声が響いた。


(玄武くん……私だ……時空の管理者カオスだ……玄武くん、君はこういう時座禅をして窮地を脱したらしいじゃないか、それをするんだ)

「なっ……座禅……しかしこの状況では……」


 玄武が迷っていると、ロボットが再びレーザーを放とうとした。


(急げ!!)

「くそっ!!」


 玄武は座禅の態勢を取った。すると、玄武の体が光りだした。


「これは……」


 するとロボットがレーザーを放とうとしたその瞬間だった。突然ロボットの動きが止まった。


「なんだ?どうしたんだ?」

(今だ!!)

「よし!!」


玄武はロボットに向かって再び走っていった。そしてそのままの勢いでロボットを殴り付けた。すると、ロボットはバラバラに吹き飛んでいった。

「はぁ……はぁ……やったぞ……」

「バトルロボを倒したか……流石はかつての英雄といったところか」

「誰だ!!なっ……」


 玄武が見た人物、それは白虎に瓜二つの容姿をしていた。しかしその目は白虎と違って憎しみに燃えていた。そして、その体には闇のバトルアクションの証である黒いオーラを纏っていた。


「お前は……白虎?」

「違うな……私は白虎ではない……私は百冬、白虎の兄だ」

「白虎の兄……だと?」


 玄武は驚いた。それは見た百冬は狂ったように笑いながら玄武を睨んでいた。


「そうだ、俺は百冬!!貴様が救うことが出来なかった白虎の兄だ!!」

「白虎を救うことが出来なかった?何を言っている?」

「貴様はあの時黄龍から白虎を救うことが出来ず見殺しにした!!あまつさえそれを世界をリセットすることによってなかったことにした!!この私を巻き込んでな!!」

「だから何を言ってるんだあんたは!?」

「私は貴様が憎い!!白虎を見殺しにした貴様がな!!」


 百冬は玄武に襲い掛かった。


「く……仕方ない、やるしかないか……」


 玄武は構えた。玄武水柱拳の構えの一つ、水亀の構えだ。


「はぁぁ!!」


 玄武が百冬に向かって攻撃を仕掛ける、しかし彼はそれを軽く避けた。そしてそのまま拳を振るった。


「くっ……なら!!」


 玄武は百冬から距離を取った。そして水柱拳を連続で繰り出した。


「くらえ!!玄武水柱拳奥義!!」


 玄武の連続攻撃が百冬に襲い掛かる、しかしそれを全て百冬は受け止めた。


「なにっ!?」

「ふん、この程度か?ならばこちらだ!!」


 百冬が玄武に攻撃を仕掛けた。


「くっ……なんてパワーだ……」

「どうした?もう終わりか?」

百冬は玄武を挑発する。しかし、玄武も負けじと攻撃を繰り出した。そしてそのまま二人は戦い続けた。


「玄武水柱拳奥義!!玄武大瀑布!!」

「百冬新橋拳奥義!!百冬流波濤撃!!」


 二人の攻撃はぶつかり合った。しかし、その衝撃で二人は吹き飛ばされた。


「くっ……やるな……」

「お前こそ……だが次の一撃で終わりにしてやる!!」


百冬は攻撃態勢を取った。そして玄武もまたその攻撃を受け止める体勢を取る。


「行くぞぉぉぉぉ!!白冬流波動砲!!」

「ぬおおおおおおおおお!!!玄武水柱拳奥義!!玄武大瀑布!!」

二人の攻撃がぶつかり合う。その瞬間、二人の姿は光に包まれていった。そしてそのまま二人は気絶したのだった。


 百冬が目を覚ますとそこにいたのは玄武と、そして白虎であった。


「メカ・ファントムの群れを倒して玄武に追いついたと思ったら、なんでこんなところに兄さんが……」

「白虎……白虎なのか……」

「ああ、そうだよ兄さん……もう大丈夫だ」

「そうか……よかった……」


 百冬はほっとしたような表情で涙を流した。すると玄武が目を覚まし、百冬と白虎見て驚いた。

「本当に白虎の兄だったんだな」

「玄武……私がお前を憎んでいるのには変わりはない……だが今はそれよりもしなくてはならないことがある……白虎、一緒に話さないか?」

「いいけど……兄さん何を?」


 百冬は立ち上がって言った。


「懐かしいな……白虎、私たちの思い出だ……」

「思い出……?」

 百冬は話し始めた。そしてそれを玄武と白虎が聞いていた。



 それは今から随分と前の話だ……私たちは幼い頃に父親をなくした……そして母親も……私たちは親戚の家をたらいまわしにされた。しかし、どの家も私たちを受け入れてくれなかった……そんなある日、私たちはユニコーン公国を離れ青龍王国に行く計画を立てた。そして私たちは親戚の家を飛び出した……その時だった。私たちの前にユニコーン公国を守る兵士が現れた……私は白虎だけでも逃がそうとした。それは成功したが私は捕まってしまった。それから色々あったが、次に白虎の名を聞いたのは青龍王国を救った英雄の親友が死んだという情報だった。つまりそれは白虎のことで……私はまだ見ぬ青龍王国の英雄への憎しみをたぎらせていた。そして私はホワイト・ウィンターズという組織を結成し、玄武に復讐を誓ったのだ……。



「ふふ、白虎、そして玄武よ、これが私の過去の話だ、どうだ?愉快だろう?」

「兄さん……」

「最も……これはリセットされる前の世界の話だ、君たち二人は私が知っている白虎と玄武ではない……だがどうしても君たちに聞いて欲しかったのだ……」

「玄武……ここから先は一人で行ってくれ、俺はしばらく兄さんといるよ」

「……わかった、また後で会おう」


 玄武はそう言って上の階へと登っていく。そして白虎と百冬は二人で語り合った……。



玄武が上の階層にたどり着く、するとそこには麒麟の幻影が現れた。


「玄武……この上の階がこの塔の最上階です、そこであなたは最強の男と対峙することになる……その覚悟がありますか?」

「ああ、もちろんだ」

「そうですか……ならば上に行きなさい、そしてもっとも強大な敵に打ち勝つのです……」


 そう言って麒麟は消えていった。玄武はそのまま上の階へと登っていった。



 玄武が最上階にたどり着くとそこには一人の男がいた。それは玄武自身と全く同じ姿をしていた。しかし玄武よりもさらに鍛え抜かれた肉体をしていた。


「なっ!!これは!!俺!!」

「俺はただの玄武ではない……バトルアクション玄武!!俺の名はバトルアクション玄武だ!!」


 玄武に瓜二つの男……バトルアクション玄武は玄武に向かっていった。


「うおぉぉ!!」


 バトルアクション玄武の拳が玄武に迫る、しかしそれを玄武は避けた。


「やるな……」

「俺と全く同じ姿……あんたは一体何なんだ!!」

「俺はお前だ、リセットされる前のな!!」

「なんだと!?」


 バトルアクション玄武は拳を繰り出す、それを玄武が受け止める。するとバトルアクション玄武は言った。


「なぜお前はここにいる!!」

「どういうことだ?」

「答えろ!!何故お前はここで戦っているんだ!!」

「それは……俺は世界を救うためにここにいる!!」

「なら何故世界を救おうとする!!俺は白虎を救えなかったのだぞ!!それなのに何故だ!!」


 バトルアクション玄武は怒りに任せて拳を振るった。しかしそれを玄武は受け止める。


「聞いた話によるとあんたは青龍王国を救った英雄らしい……だが今のあんたはただ怒りに身を任せて戦っているだけだ!!本当に救うべき人を見失い……自分の憎しみだけをぶつけている!!」

「うるさい!!」


 バトルアクション玄武は飛び上がってそのまま蹴りを繰り出した。しかし、それを玄武は受け止めた。


「そんなあんたが……本当の意味で世界を救えるはずがない!!」

 

 玄武はそのまま拳を繰り出した。バトルアクション玄武はそれを受け止めようとするが、力の差で押し切られてしまう。


「ぐはぁ!!馬鹿な……こんなはずは……俺は方がお前より何倍も……何十倍も強いはずだ!!それなのにどうして!!バトルアクションなのに!!」

「確かにあんたは俺よりも強い……だが俺はあんたなんかに負けない!!バトルアクションの力なんてなくったってなぁ!!人は自分の力で強くなれるんだ!!」

「くっ……くそぉ!!何故だ!なぜお前はそんなにも強いんだ!!」

「俺は……俺自身を信じる!!だから勝てるんだ!!あんたなんかにな!!」


 バトルアクション玄武は拳を振るった。しかしそれを玄武は受け止める。


「うおぉぉ!!ならばこれはどうだ!!玄武流波動砲!!」


 バトルアクション玄武は拳に全パワーを集中し、そのまま玄武に向かって放った。しかし、その拳は玄武の体に傷をつけることはなかった。


「なにっ!?」


 バトルアクション玄武が驚いた瞬間だった。彼は玄武に押し倒された。


「なっ……離せ!!」


バトルアクション玄武が暴れる、しかし玄武は離さない。


「離さねえ!!あんたは俺だ!!だから俺があんたを救うんだ!!」

「くっ……なんだこのパワーは……」

「うおぉぉ!!」


 玄武の叫び声が響き渡る、その瞬間バトルアクション玄武に異変が起こった。彼の体から闇のオーラが溢れ出したのだった。


「なっ……俺は……いつの間に闇のバトルアクションになってしまっていたんだ……」

「闇だか光だかよくわかんねぇけどよぉ……あんたはもう戦わなくていいんだ、俺があんたを救ってやる!!」

「やめろ……やめてくれ……俺は……」


 バトルアクション玄武は抵抗するがその抵抗も虚しく彼は光に包まれていった。


「ああ……俺は……俺はただ……白虎を救いたかっただけなんだ……」

「もういい……もういいんだ……あんたはもう戦わなくていいんだ……だからゆっくり休め……」

「ああ……そうさせてもらうよ……」


 バトルアクション玄武は光に包まれて消えていった。そしてそれと同時に玄武も意識を失った。



 玄武が目を覚ますとそこには白虎がいた。


「玄武……よかった……」

「白虎……俺は一体……」

「試練を乗り越えましたね、玄武さんに……白虎さんも」


 そこに現れたのは時空の管理者カオスだった。カオスは二人を見て言った。


「これでもうこの……バトルアクション世界というべきでしょうか?この世界でやるべき出来事はもうありません……」

「どうなるんだ?俺たちは?」

「元の世界に戻っていただきます……あなた方はこの戦いを胸に、新たな旅路を歩むのです……」

「そうか……」


 玄武は立ち上がり、そして言った。


「なら行こう……次の世界へ」


 白虎もそれに続いて立ち上がった。そして2人は塔の外へと出ていった。それを見てカオスは呟いた。


「試練を乗り越えた者よ……あなた方の進む未来に光あれ……」


 カオスがそう言うと、時空が歪み始めた。そして次の瞬間には二人は元の世界へと戻っていた。



 2人が目を覚ますと、そこは元いた森であった。


「戻ってきたのか?俺たち」

「ああ……どうやらそうみたいだ」


 玄武と白虎は立ち上がり、辺りを見回した。


「さて……どうする?」


 白虎が玄武に聞いた。すると、玄武は言った。


「俺はまた旅に出る……この世界をもっと見たくなったんだ」

「そうか、なら俺もついていこう」

「いいのか?」

「ああ……それにお前といると退屈しないからな……」


 白虎は笑った。玄武も釣られて笑う。そして2人は歩き出した。新たなる旅路へと……。



 それからさらにしばらくたって……。


「きゃあああああああああ!!助けてぇぇぇぇぇ!!」

「ゲヘヘ!!助けなんて呼んでも誰もこないぜ!!ここは俺の縄張りだからな!!」


 一人の女が野盗に襲われていた。彼女は必死に抵抗するが、野盗は彼女を押さえつける。しかし!!


「玄武水柱拳奥義!!玄武大瀑布!!」

「ぎゃあああ!!なんだこの水はぁぁ!!」


 水が激しく渦巻き野盗を吹き飛ばし、そして流される。


「大丈夫か?」

「あなたは……」


 彼女は玄武に救われた。そして彼は言った。


「俺の名は……玄武……玄武水柱拳の使い手!!玄武だ!!」


―ファイナルバトルアクション玄武 完―

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